管理栄養士監修:発酵食品を一覧で紹介!効果を高める食べ方も解説
発酵食品には腸内環境を整える働きがあり、健康維持に欠かせない食品です。テレビ番組やSNSで紹介されることも多いため、「発酵食品にはどんな種類があるの?」「体に良いって聞いたけど本当?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は、発酵食品の種類を一覧で紹介するともに、健康作用や効果的な食べ方をご紹介します。ヨーグルトや味噌、納豆などを日々の食事に取り入れ、健康的な体づくりを目指しましょう。
監修者
- 保科 琴美(ほしな ことみ)
- 東京電力ホールディングス株式会社
管理栄養士
管理栄養士として医療の現場で栄養指導の経験と実績が豊富。日本糖尿病療養指導士。定期的にヨガ講師としての活動も行っている。
発酵食品とは:微生物の作用でうま味・栄養価が高められた食品
発酵食品とは、微生物の働きによって食材のうま味や栄養価が高まった食品を指します。
微生物が持つ酵素によって、食品中のデンプンやタンパク質などの有機物が分解されることで、アミノ酸や糖分が生まれ、独特のうま味や香りが形成されます。また、栄養価も豊富になるので、健康食品としても注目されています。
発酵食品は、もともと保存食として作られたものが多く、長期保存できるのも特徴です。
発酵と腐敗の違い
発酵と腐敗は、どちらも微生物の働きによる化学変化です。ただし、発酵は人にとって有益な物質が生じる場合、腐敗は有害な物質が生じる場合を指して区別されます。
例えば、乳酸菌を加えた牛乳は発酵し、ヨーグルトになりますが、常温で放置された牛乳は腐敗して不快な味・匂いが発生します。
発酵を促す微生物3種「細菌」「酵母」「カビ」
発酵食品を製造する際には、発酵を促す微生物を利用します。その代表例が「細菌」「酵母」「カビ」です。
ここでは、それぞれの特徴や、作り出される発酵食品を解説します。
- 細菌
- 細菌にはさまざまな種類があり、それぞれ発酵時の作用が異なります。代表的なものとしては、糖を乳酸にする乳酸菌、納豆をつくる納豆菌、お酢をつくる酢酸菌などが挙げられます。
- 酵母
- 酵母は、糖を分解することでアルコールと二酸化炭素を生み出す微生物です。例えば、ワインやビールなどが酵母によって発酵が促される食品の代表例です。また、酵母が生み出す炭酸ガスを利用してパンの発酵を促す、イースト菌なども酵母の一種です。
- カビ
- 人に無害なカビには、デンプンを糖に、タンパク質をアミノ酸に、脂肪を脂肪酸に変える働きを持つものがあります。分解後は、アミラーゼやリパーゼといった分解酵素が生成されます。酒造りに使用される麹菌はカビの代表例です。
有害なカビには黒カビや赤カビなどが該当し、口にすると食中毒などを引き起こします。
発酵食品一覧
発酵食品は、微生物の働きによって食材の味や栄養価が向上した食品です。代表的な例として、大豆を発酵させて作られる醤油や納豆、乳を発酵させたチーズやヨーグルトがよく知られています。
ここからは、代表的な発酵食品の特徴をカテゴリ別でご紹介します。
調味料:味噌/醤油/みりん/塩麴/豆板醤/酢
- 味噌
- 原料は主に、大豆と麹、塩。さまざまな種類がある。季節などにより異なるが、10か月から1年ほど、常温で熟成させて作られる。
- 醤油
- 醤油乳酸菌や酵母などの働きで熟成される。麹菌の酵素が、大豆のタンパク質をうま味成分のアミノ酸に分解し作られる。
- みりん
- もち米と米麹、焼酎が原料。麹菌が持つアミラーゼという酵素がデンプンを糖化することで作られる。
- 塩麴
- 麹、塩、水を混ぜ合わせ、発酵・熟成させることで作られる。付け床としても広く用いられている。
- 豆板醤
- ソラマメ、唐辛子、麹、塩を原料とし、それぞれを発酵することで作られる。近いものとして、日本の味噌や韓国のコチュジャンがある。
- 酢
- 酒(アルコール)に酢酸菌を加えて発酵させることで作られる。日本酒から作る米酢が一般的だが、果物から作る果実酢やワインから作るワインビネガーなど、多様な種類が存在する。
酒:日本酒/ワイン/ビール/シャンパン/甘酒
- 日本酒
- 原料に米が使われ、麹によりデンプンが糖化される。主に麹菌・酵母菌・乳酸菌を使用して作られている。
- ワイン
- ブドウの果汁が原料であり、ワイン酵母を加えて作られる。ブドウの実から皮まで使うので、ポリフェノールが豊富に含まれる。
- ビール
- 麦が原料として使われる。麦芽のデンプンを糖化し、ビール酵母を加えると、酵母菌の働きにより発酵する。
- シャンパン
- アルコール発酵時に発生した炭酸ガスが溶け込むことで、炭酸が含まれるシャンパンになる。
- 甘酒
- 原料は炊いた米と米麹。これらに含まれるデンプンが、麹菌の酵素のひとつであるアミラーゼに糖化され作られる。
豆類:納豆/豆腐
- 納豆
- 通常、大豆と納豆菌から作られる。納豆菌は大豆を包む稲わらに生息する。納豆菌ではなく、麹菌と乳酸菌を使うケースもある。
- 豆腐
- 豆腐は発酵食品の原料にもなり得る。具体的には、「豆腐よう」「腐乳」など。
肉類:生ハム/ドライソーセージ/サラミ
- 生ハム
- 塩水や塩で豚肉を塩漬けした後、乾燥させて作る。その際、発酵作用により熟成される。加熱調理は必要なく、簡単に加工できる。
- ドライソーセージ
- 豚肉に、アルコールと塩を混ぜて作る。乳酸菌の発酵作用に腐敗菌の増殖を抑える効果があり、長期保存しやすい。
- サラミ
- 豚肉、塩、アルコールを混ぜて腸詰にしたものを60日以上かけて発酵させた保存食。最近では牛肉を使用したサラミもある。
魚介類:鰹節/くさや/アンチョビ/塩辛
- 鰹節(枯節・本枯節)
- 鰹節は「荒節」「枯節」「本枯節」に分類されるが、このなかで、完成した荒節にカビ付けをして熟成させる枯節・本枯節は発酵食品に含まれる。
- くさや
- 伊豆諸島の代表的な郷土料理。開いた魚を「くさや液」と呼ばれる漬け汁に漬け、8~20時間発酵させて作る。
- アンチョビ
- イワシを塩漬けにして発酵させて作る。イワシの内臓に含まれる菌には、発酵を促す役割がある。
- 塩辛
- 生の魚介類の身や内臓に高濃度の塩を加え、発酵・熟成させて作る。発酵の過程でアミノ酸が生成され、独特な香りとうま味が生まれる。
乳製品:チーズ/ヨーグルト
- チーズ
- 乳に乳酸菌や酸、酵素などを混ぜ合わせ、発酵させて作る。加熱処理や熟成度合で種類が変わる。
- ヨーグルト
- 乳に乳酸菌や酵母菌を混ぜ、発酵させて作る。
パン類:パン
- パン
- 小麦粉にイースト菌、酵母菌を混ぜ合わせ発酵を行う。発酵時に発生した炭酸ガスによって生地が膨らんだ後に焼き上げる。
野菜・果物:ぬか漬け/キムチ/いぶりがっこ/ピクルス
- ぬか漬け
- 米ぬかと塩に野菜を漬けて発酵させて作る。乳酸菌や酵母が野菜に付着することで、風味が生まれる。
- キムチ
- 主に塩で漬け込んだ白菜を唐辛子や「アミ(アミエビ)の塩辛」などと混ぜて発酵して作る韓国の漬物。日本では、塩麹が使用されることもある。
- いぶりがっこ
- 秋田県の内陸南部地方で作られる大根の漬物。米ぬかや塩、ザラメなどを使い、2か月以上発酵・熟成させる。
- ピクルス
- 野菜と酢を原料として作る西洋風の漬物。塩水に野菜を浸けて発酵させて作る。
お茶:烏龍茶/紅茶
- 烏龍茶
- 茶葉を長時間かけて発酵させて作る。紅茶と違い、途中で発酵を止める「半発酵茶」として知られる。
- 紅茶
- 茶葉を酸化させて作る発酵茶。烏龍茶とは異なり、最後まで発酵を行う。
デザート:くずもち/ナタデココ/チョコレート
- くずもち
- 小麦粉と乳酸菌を混ぜて発酵させて作る。長時間にわたり発酵させたくずもちは、数日水洗いして仕上げをする。
- ナタデココ
- ココナッツの果汁を原料に、酢酸菌を混ぜて発酵させたものがナタデココ。洋菓子や和菓子などに使用されている。
- チョコレート
- チョコレートの原料となるカカオパルプを発酵させて作る。
発酵食品の効能・効果
発酵食品を日常的に摂取することで、体調の改善や各種予防効果が期待できます。
ここでは、発酵食品がもたらす効能・効果についてご紹介します。
腸内環境改善による免疫力向上や肌荒れ解消
味噌・納豆・ヨーグルト・キムチなどの多くの発酵食品には、乳酸菌などの善玉菌が豊富に含まれています。これらは腸内環境を整え、体内の免疫細胞を活性化させます。実際、人間の免疫細胞の約70%が腸に存在しており、腸内環境が整うことで免疫力が向上するとされています。
また、腸内環境が良好になることで便秘が解消され、肌荒れの改善にもつながります。さらに、大豆発酵食品に含まれるタンパク質やビタミンBには美肌効果が期待でき、健康でハリのある肌作りに役立ちます。
ストレス軽減や睡眠の質向上
発酵食品に含まれるGABA(ガンマアミノ酪酸)には抗ストレス作用、乳酸菌にはストレス緩和効果があるとされます。
これらには脳の興奮を鎮めて睡眠の質を高める効果があり、発酵食品を日常的に摂取することで、ストレスケアと良質な睡眠の確保を同時に行えます。
血流改善などの生活習慣病予防
発酵食品は血流を改善するとともに、生活習慣病を予防する栄養素が豊富に含まれています。例えば、ビタミンB群は代謝を促進して血液循環を改善、乳酸菌や大豆イソフラボンは悪玉コレステロールを減少させ、動脈硬化を予防する働きがあります。
また、酢酸菌には脂肪分解を促進する作用があり、中性脂肪の上昇を抑えるほか、内臓脂肪を減少させる効果もあるとされます。
発酵食品の効果を高める食べ方
発酵食品は、適切な食べ方や習慣を意識することで、その効果をさらに高められます。例えば、キムチと納豆を一緒に食べることで、乳酸菌や納豆菌を同時に摂取できます。高い整腸作用が見込まれるため、腸内環境の改善効果が高まるでしょう。
ここでは、発酵食品の効果を最大限に引き出すための食べ方をご紹介します。
発酵食品を組み合わせて食べる
発酵食品は、単品ではなくいくつかの種類を組み合わせて摂取すると、より効果が高まるとされています。とくに意識したいのが善玉菌を意識した食べ合わせです。
以下の組み合わせはいずれも、一緒に食べることでより効果を発揮すると言われています。
- 納豆×キムチ
- ヨーグルト×はちみつ
- 味噌×ゴボウ
- チーズ×オーツクラッカー
食物繊維と一緒に食べる
野菜に多く含まれる食物繊維は、発酵食品に豊富な善玉菌のエサです。善玉菌は腸内環境を整える働きがあり、食物繊維と一緒に摂ることで腸内環境を改善する働きがあります。
また、麹菌に含まれる糖には血糖値の急激な上昇を促す作用がありますが、食物繊維と一緒に食べることで急激な血糖値の上昇を抑えられます。
毎日継続して食べる
善玉菌は一時的にしか体内にとどまれません。摂取した善玉菌は腸内に蓄積されて増え続けるわけではないため、定期的に補充する必要があります。
腸活の観点から、発酵食品を毎日食べることで腸内環境を良好に保ちましょう。
できるだけ加熱を避ける
発酵食品に含まれる酵素や微生物は、加熱によってほとんどが死滅してしまいます。煮たり焼いたりすると貴重な善玉菌が失われるので、発酵食品はできるだけ加熱せず、そのまま食べるようにしましょう。
なお、必ずしも加熱がNGというわけではありません。例えば、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は、死滅しても「死菌」として腸まで届き、善玉菌のエサになり、善玉菌が増えるのを助けます。
加熱したからといって無意味になるわけではないので、調理方法にこだわらず、毎日継続して食べることが大切です。
まとめ
もともとは伝統的な保存食として食べられていた発酵食品ですが、現在ではその健康効果が注目されています。
食事に発酵食品を取り入れることは、腸内環境を整えるだけでなく、免疫力向上や美肌効果、ストレス軽減、さらには睡眠の質向上にもつながるなど、多くのメリットがあります。ぜひ毎日の食事に取り入れてみてください。
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