医師監修:コーヒーに含まれるカフェイン量は?適切な摂取量と作用
コーヒーに含まれるカフェインには、集中力を高めたり眠気を覚ましたりする効果があるので、勉強中や仕事中に飲んでいる方も多いでしょう。
健康的な成人に推奨される1日あたりのカフェイン摂取量は「約400mg」と言われていますが、「コーヒーを何杯飲んだら過剰摂取になるの?」と疑問に思っている方も多いと思います。
そこで今回は、コーヒーに含まれるカフェイン量や、カフェインが身体に与える良い効果と悪い影響について詳しくお伝えします。最後まで読むことで、1日あたりのコーヒーの適量がわかり、適切な量のカフェインを摂取できるようになります。
監修者
- 井上 信明(いのうえ のぶあき)
- 日本小児科学会専門医・同指導医/米国小児科専門医/米国小児救急専門医
日本の医学部を卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科および小児救急の研修を行う。
コーヒーのカフェイン量は?
カフェインは過剰摂取してしまうと身体に悪影響を与えるため、1日の適切な摂取量を知っておくことが大切です。
ここからは、コーヒー1杯に含まれるカフェイン量や、1日に飲んでも悪影響のないコーヒーの量について解説します。
コーヒーカップ1杯(150mL)には90mgのカフェイン
内閣府食品安全委員会が発行しているファクトシート[1]をもとに算出すると、コーヒーカップ1杯(150mL)には90mgのカフェインが含まれていることがわかります(粉末コーヒーの場合)。
一般的な市販の缶コーヒーは容量が190mLであるため、1缶には114mgのカフェインが含まれている計算になります。
ただし、カフェインの量はコーヒーの淹れ方や濃度によっても異なります。たとえば、インスタントコーヒーは粉で淹れるコーヒーよりもカフェイン量がわずかに少なく、ドリップコーヒーやエスプレッソのような濃いコーヒーの場合は、含まれるカフェインの量が多くなります。
同じように、大容量のペットボトルコーヒーでも、濃度が薄ければカフェイン量は少なくなります。正確なカフェイン量を知るには、コーヒーを買う際に栄養成分表示を確認しましょう。
コーヒーは1日4~5杯以下が目安
米国食品医薬品局(FDA)やカナダ保健省(HC)、欧州食品安全機関(EFSA)では、健康な成人における1日あたりのカフェイン摂取量を400mgまでとしています[2][3]。これは、コーヒーの量にするとおよそ660mLです。コーヒーカップ1杯が約150mLなので、4.4杯分にあたります。
一方、妊婦の場合は胎児への影響を懸念し、より少ない量が推奨されています。農林水産省では、参考として次のように国際機関や各国政府の基準を示し、妊婦にカフェインを摂取しすぎないよう呼びかけています。
その他の飲料に含まれるカフェイン量と比較
「カフェインの摂り過ぎを避けるには、コーヒーを飲まなければいい」とお考えの方も多いでしょう。しかし、紅茶や煎茶など、茶葉から抽出される飲料にも、ある程度のカフェインが含まれています。また、栄養ドリンク(エナジードリンク)には、より多くのカフェインが含まれている場合があります。
代表的な飲料とカフェイン量は、以下の表のとおりです。
飲料名 | カフェイン量 (100mLあたり) |
---|---|
コーヒー | 60mg |
インスタントコーヒー | 57mg |
玉露 | 160mg |
紅茶 | 30mg |
せん茶 | 20mg |
ウーロン茶 | 20mg |
栄養ドリンク(※) | 32~300mg |
内閣府 食品安全委員会「ファクトシート 食品中のカフェイン」[1]より作成。
※製品ごとにカフェイン濃度・内容量が異なります。
玉露を除き、お茶のカフェイン量はコーヒーに比べると少ない傾向にあります。ただし、せん茶やウーロン茶などは、一気にたくさん飲んでしまいやすい飲料です。量が増えればそれだけ摂取するカフェイン量も多くなるので注意が必要です。
適度なカフェインで得られる良い効果
カフェインは、適切な摂取量を守れば身体に多くのメリットがあります。カフェインを摂ると得られる効果について、それぞれ詳しくお伝えします。
眠気や倦怠感の解消
カフェインには脳の覚醒作用や興奮作用があり、適度に摂取すれば眠気や倦怠感の解消につながります。
カフェインは、人の体内でリラックスさせたり、眠気を感じさせたりする作用を持つ「アデノシン」と呼ばれる物質と似た化学構造をしています。そのため、本来アデノシンが結合すべき受容体にカフェインが結合してしまうことで、リラックス効果を阻害されやすくなります。その結果、神経が興奮して眠気を感じにくくなるのです[3]。
また、カフェインには集中力を高めて疲労を感じにくくする効果もあります。仕事や勉強など、何かに集中したいときに有効といえるでしょう。
消化の促進
食後のコーヒーには、消化を促進する効果も期待できます。これは、カフェインが胃酸の分泌を促すためとされています。
ただし、食前・空腹時のコーヒーの摂取は、胃酸の過剰分泌につながり、胃へダメージを与える可能性があるので注意しましょう。
利尿作用によるむくみの改善
カフェインには腎臓が持つ水分の再吸収機能を抑制する作用があり、摂取することで体内の水分が尿として排出されやすくなります。余分な水分が抜けるので、むくみ改善に効果があるといわれています。
ただし、カフェインの取り過ぎは、脱水症状を引き起こす可能性があるため、飲みすぎないよう注意しましょう。
カフェインの過剰摂取が招く悪い影響
健康的な成人の場合、1日あたり400mgまでが、カフェインを摂取しても問題ない量の目安です[2][3]。この量を超えてカフェインを摂取した場合、身体に悪い影響を及ぼす可能性があります。
カフェインの過剰摂取が招く悪い影響について、それぞれ詳しくお伝えします。
中枢神経を乱し不眠の原因になる
眠気覚ましとしても知られるカフェイン。これは、脳を刺激する「覚醒作用」や「興奮作用」の働きによるものです。カフェインの摂取量が増えると、中枢神経に過剰な刺激が加わってしまいます。その結果、不眠症につながる恐れがあります[3]。
さらに、就寝前や夜遅い時間に多くのカフェインを摂ると、寝付けない原因となります。普段から眠りが浅かったり、寝付きが悪かったりする方は、とくに注意が必要です。
下痢や吐き気を引き起こす
カフェインの過剰摂取による消化器への影響は、下痢や吐き気などの症状を引き起こす恐れがあります[3]。
そのほか、コーヒーに含まれるクロロゲン酸やポリフェノールも消化器に影響を与えます。クロロゲン酸は胃酸の分泌を促進し、ポリフェノールは腸の粘膜を刺激するため、下痢や吐き気などの症状をきたす可能性があります。
カフェインは胃液の分泌を促す効果があるため、胃酸過多を防ぐためには摂取量だけでなく、食前や空腹時の摂取を避けるのがおすすめです。
興奮や不安などの精神症状を引き起こす
カフェインの過剰摂取によって中枢神経が刺激されると、興奮や不安、イライラ、緊張を引き起こすなど、精神症状にも影響を及ぼします。
口数が多くなる「多弁」もカフェインの過剰摂取による症状のひとつです。さらに症状が進むと、パニック発作や幻覚・幻聴を引き起こす可能性があります。
妊娠中や授乳中は赤ちゃんの健康に影響を与える
カフェインの過剰摂取は、赤ちゃんの健康にも影響します。妊娠中や授乳期間中の女性がカフェインを過剰摂取した場合、赤ちゃんの健康にも影響する可能性があるのです。
赤ちゃんは成人に比べて肝臓の代謝機能が低く、カフェインの分解に時間がかかります。流産や低体重など赤ちゃんの成長を阻害するリスクにつながる可能性もあるため、妊娠中や授乳中は、過剰なカフェインの摂取は避けましょう。
カフェインの効果が出る時間とコーヒーを飲むタイミング
仕事や勉強など作業をしているときに「集中したい」「あともう少しだけ頑張りたい」といった理由でコーヒーを飲む方は多いかと思います。しかし、どのタイミングでコーヒーを飲むのが効果的か、知らない方も多いでしょう。
ここからは、カフェインを摂取してから効果が出るまでの時間や、コーヒーを飲むベストタイミングについて詳しくお伝えします。
カフェインの覚醒作用は15~30分後
カフェインの覚醒作用は、摂取してから15〜30分後を目安に表れます。そのため、朝起きてすぐコーヒーを飲むと脳が覚醒し、二度寝を避けて頭がすっきりします。
しかし、個人差はありますが、体内のカフェイン濃度は約5時間を経過しないと半減しません。就寝時間を考えて、コーヒーは夕方から夜にかけて飲まないようにするのがおすすめです。
眠気を感じる前の時間帯に飲むのがおすすめ
コーヒーを飲むタイミングとしては、眠気を感じる前に飲むのがおすすめです。前述のとおり、カフェインの覚醒作用は摂取して15〜30分後から表れます。
コーヒーを飲んだあと15〜30分を目安に昼寝すれば、すっきりとした目覚めで起きられます。昼食後にコーヒーを飲むことで、午後の眠たくなりやすい時間も乗り切れるでしょう。
ただし、就寝時に50mgのカフェインが体内に残っていると睡眠に影響が出るため、少なくとも就寝時刻の5時間前より後に100mg以上のカフェイン(コーヒー約1杯以上)を摂らないようにしておくのがおすすめです。
カフェインが気になる方はカフェインレスがおすすめ
カフェインの摂り過ぎが気になる方には、「カフェインレスコーヒー」がおすすめです。
カフェインレスとは、本来含まれているカフェインを取り除いた飲料のことを指します。コーヒーの場合、カフェイン量を90%以上除去しないと、商品に「カフェインレス」の表記をすることはできません[4] 。
また、カフェインレス以外にも「ノンカフェイン」「デカフェ」といった種類もあります。これらの違いはカフェインの含有量です。
ノンカフェインとは、文字どおりカフェインを一切含まない飲料を指します。コーヒーに含まれるカフェインをゼロにするのは困難なため、基本的にコーヒーを原料とする飲料はノンカフェインとは呼ばれません。
一方、デカフェとは「カフェインを取り除いた飲料全般」を指し、カフェインを取り除く量には規定がありません。カフェイン量を少しでも減らしていれば「デカフェ」と表記できることになります。
「カフェインの量が気になるけどコーヒーは飲みたい」といった方は、カフェインを90%以上除去したカフェインレスコーヒーを飲むとよいでしょう。
まとめ
コーヒーを飲む際は、1日あたりのカフェイン摂取量が400mg以下になるよう、4〜5杯を目安にしましょう。適切なカフェイン量を守れば、眠気を抑えたり集中できたりするなど多くのメリットがあります。
しかし、過剰摂取すると中枢神経や胃腸への刺激が強く、さまざまな悪影響を及ぼします。カフェインは摂取してから15〜30分後に効果が表れるため、寝起きや昼食後にコーヒーを飲むのがおすすめです。
カフェインの摂取量を守って、楽しいコーヒータイムを過ごしてください。
- 内閣府 食品安全委員会
ファクトシート 食品中のカフェイン - 厚生労働省
食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~ - 農林水産省
カフェインの過剰摂取について - 全日本コーヒー公正取引協議会
レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約
KEYWORD
#人気のキーワード
RECOMMENDED
#この記事を読んだ人におすすめの記事
-
お餅のおすすめの食べ方!王道・定番からアレンジレシピを紹介
-
管理栄養士監修:玄米と白米の違いは?栄養素や炊き方を解説
-
シュトーレンとは?日持ちする理由や食べ方・レシピを解説
-
冷凍できる野菜とは?野菜ごとの最適な冷凍保存方法や解凍のコツも
-
管理栄養士監修:冷凍した野菜の栄養価はどうなる?適切な冷凍方法も
-
豚肉の上手な冷凍保存方法は?解凍方法やおいしいレシピも紹介
-
管理栄養士監修:発酵食品を一覧で紹介!効果を高める食べ方も解説
-
管理栄養士監修:生姜の成分や効能は?健康効果やレシピも解説
-
管理栄養士監修:秋が旬の野菜一覧!栄養・保存方法・見分け方も解説
-
管理栄養士監修:ドラゴンフルーツの栄養素は?種類・食べ方も解説
-
ホームパーティーの定番料理20選!簡単・お手軽おすすめレシピ
-
料理家監修:さつまいもをより甘くする調理方法は?甘さが増す保存方法も紹介
-
管理栄養士監修:柿は皮ごと食べて大丈夫?栄養素や効能を解説
-
管理栄養士監修:夏が旬の野菜一覧!種類や栄養・効能も解説
-
管理栄養士監修:ぶどうは皮ごと食べられる?メリットや栄養を解説
-
おはぎとぼたもちの違いは?あんこ・食べる時期・由来を解説
-
すだちの正しい保存方法とは?冷蔵・冷凍の判断基準を解説
-
シャインマスカットの旬はいつ?選び方や保存方法・食べ方も解説
-
管理栄養士監修:夏が旬の果物12選!おすすめレシピも紹介
-
秋の果物一覧!旬の時期やおすすめの美味しい食べ方を解説