
管理栄養士監修:きのこの栄養素とその効果は?無駄なく摂るコツも
この記事では、きのこの種類別に特徴や栄養素、成分を紹介します。きのこを使ったおすすめレシピもご紹介しますので最後までご覧ください。
監修者
- 保科 琴美(ほしな ことみ)
- 東京電力ホールディングス株式会社
管理栄養士
管理栄養士として医療の現場で栄養指導の経験と実績が豊富。日本糖尿病療養指導士。定期的にヨガ講師としての活動も行っている。

目次 [CLOSE]
きのこには栄養素が豊富に含まれている
きのこ類は低カロリーなうえ、栄養素が豊富な食材です。例えば、しいたけは100gあたり約22kcal、しめじも約22kcalと低カロリーですが、腸内環境改善に役立つ食物繊維や、免疫細胞を活性化させるβ-グルカンなどを豊富に含んでいます。
また、きのこには噛み応えがある種類が多く満腹感を得やすいため、ダイエット効果も期待できます。
【種類別】きのこの特徴や栄養素・成分
きのこは種類によって含まれる成分や食感、おすすめの調理法が異なります。ここでは、主なきのこの栄養素と特徴を見ていきましょう。
きのこの種類 | カロリー(100g中) | 特徴的な栄養素・成分 | おすすめの調理法 |
---|---|---|---|
▼ぶなしめじ | 22kcal |
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▼まいたけ | 27kcal |
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▼しいたけ | 22kcal |
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▼えのきたけ | 34kcal |
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▼きくらげ | 14kcal |
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▼エリンギ | 32kcal |
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▼マッシュルーム | 20kcal |
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※文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」[1]を参考に作成。カロリーは生のきのこをゆでた場合の数値。
ぶなしめじ
ぶなしめじは淡褐色の小さな傘が集まった形状で、うまみが強く、癖がない味わいが特徴です。加熱しても形や食感が崩れにくいため、鍋や煮物に最適です。
ぶなしめじは、カリウムが豊富で血圧を下げる効果があり、むくみ解消に役立ちます。また、ビタミンB2も豊富に含まれ、エネルギー代謝の促進や美肌効果が期待できます。100gあたり約22kcal(ゆでた場合)と低カロリーでありながら満足感があり、ダイエット中の方にもおすすめです。
まいたけ
まいたけは、人が踊る姿が名前の由来で、100gあたり約27kcal(ゆでた場合)と低カロリーです。天ぷらにすると香りが引き立ち、外はサクッと中はジューシーな食感が楽しめます。
栄養面では、「MDフラクション」や「MXフラクション」といった特殊なβ-グルカンを含みます。「MDフラクション」はがん治療に効果的であり、「MXフラクション」は免疫細胞を活性化し、血糖値の安定化に役立ちます。
また、ビタミンDが豊富で、カルシウムの吸収を助け骨の健康維持に貢献します。
しいたけ
しいたけは日本を代表するきのこで、乾燥させるとうまみが増すという特徴があります。干したしいたけは、冷水でゆっくり戻してうまみを引き出し、煮物や炊き込みご飯にするのがおすすめです。
また、しいたけには、紫外線を当てるとビタミンDが増加するという特徴もあります。生のしいたけでも同様なので、時間があるときは日光に当ててから調理してみてください。
えのきたけ
えのきたけは細長い茎と小さな傘が特徴的なきのこで、味は淡泊ながらうまみが強く、さまざまな食材と相性が良いです。さっと加熱するとシャキシャキになり、しっかり火を通すと、とろみが出て優しい食感になります。炒め物は短時間で、鍋など煮込む際には長めに加熱すると良いでしょう。
栄養もほかのきのこと同様に豊富に含まれています。なかでも、ビタミンB1やギャバ(γ-アミノ酪酸)が豊富で、疲労回復やストレス軽減効果があります。
きくらげ
きくらげは耳に似た形をしたキクラゲ科のきのこで、漢字では「木耳」と書きます。コリコリとした食感が特徴で、噛み応えがあり満腹感を得やすいため、ダイエット中の方にも最適です。
きくらげには食物繊維やビタミンDなどが豊富に含まれています。脂溶性ビタミンのビタミンDは、油と一緒に摂ることで吸収率がアップするため、中華料理と相性が良いです。
エリンギ
エリンギは太く肉厚な柄と小さな傘が特徴的なきのこで、石づきが小さく可食部が多いという特徴があります。肉厚で歯ごたえがあり、お肉のようにソテーやグリルにして食べるのがおすすめです。
エリンギには葉酸やカリウムが豊富に含まれますが、これらは水溶性です。とくに、葉酸は熱に弱いという性質もあるため、水分が出やすい調理法や、長時間の加熱は避けると良いでしょう。
マッシュルーム
マッシュルームは、白色の丸い傘と柄が特徴的な、西洋料理用のきのこです。カロリーが100gあたり20kcal(ゆでた場合)と非常に低く、生食もできるためサラダにも最適です。
風味に特徴があり、加熱するとうまみが増します。亜鉛が豊富で免疫機能強化や髪・爪の健康維持に役立ち、パントテン酸(ビタミンB5)も含むため、疲労回復や集中力維持に効果があります。
きのこ類に含まれる代表的な栄養素と効果
これまで紹介した以外にも、さまざまな種類のきのこが存在し、それぞれが豊富な栄養素を含んでいます。ここでは、きのこ類に含まれる主な栄養素を紹介します。
カリウム:血圧を正常に保つ
きのこ類に含まれるカリウムには、体内の過剰なナトリウム(塩分)を排出して血圧を正常に保つ働きがあります。また、体内の水分バランスを整える働きもあり、むくみ改善にも役立ちます。
とくに、マッシュルーム・ぶなしめじ・エリンギは、カリウムを豊富に含みます。カリウムは水溶性のミネラルのため、スープや鍋料理などの水分の多い調理法が適しており、煮汁ごと摂取すればより効率的に吸収できます。
リン:骨や歯を形成する
きのこ類に含まれるリンは、歯や骨の発達に必要な重要なミネラルです。カルシウムと結合して骨や歯の主要成分となるため、成長期の子どもや骨粗しょう症が気になる女性は積極的に取りたい栄養素の一つです。
また、リンはエネルギー代謝や神経伝達にも関与し、体内のエネルギー物質「ATP(アデノシン三リン酸)」の構成成分として、筋肉の限界や細胞活動を支えています。集中力や記憶力の維持にも効果があるとされています。
食物繊維:腸内健康の促進
きのこ類に豊富に含まれる食物繊維は、腸内細菌の働きを助け、消化を促進します。きのこには、不溶性と水溶性の両方の食物繊維が含まれており、便通改善や腸内フローラのバランス調整に効果的です。
また、きのこの食物繊維には血中コレステロール濃度を低下させる働きがあり、心臓疾患リスクの軽減も期待できます。
β-グルカン:免疫力を高める
きのこ類に含まれるβ-グルカンは、免疫細胞を活性化させる働きがあり、体の防御機能を高める効果が期待できます。
不溶性食物繊維の一種であるβ-グルカンには、血糖値の急上昇を抑えたり、血中のコレステロールを体外へ排出したりする役割もあります。
ビタミンD:カルシウムの吸収を助ける
きのこ類に含まれるビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を促進する働きがあります。これにより骨を丈夫にし、神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う機能をサポートします。
ビタミンDは、植物性食品ではあまり見られない栄養素のため、きのこ類は貴重な供給源です。とくに、えのきたけやしいたけは、乾燥させるとビタミンDがぐっと増加します。
ビタミンB群:エネルギー代謝の要
きのこ類にはさまざまなビタミンB群が含まれており、それぞれ重要な働きをします。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換し、アルコール代謝も促進するため、疲労回復や集中力の維持に役立つでしょう。
ビタミンB2は脂質をエネルギーに変え、皮膚や粘膜の健康を保つ効果があるため、肌トラブルや口内炎予防にも効果的です。葉酸やビタミンB1、ビタミンB2は赤血球の生成や体・脳の発育促進に関わります。とくに、葉酸は妊娠初期の女性に重要な栄養素です。
きのこの栄養を無駄なく摂るコツ
きのこには豊富な栄養素が含まれていますが、調理方法や保存方法によっては、これらの栄養素が失われてしまうことがあります。栄養素を無駄なく摂取するためには、以下のような適切な下処理や調理法を知っておくことが大切です。
煮汁を捨てない
栄養が溶け出した煮汁も捨てずに一緒に食べることで、きのこの栄養を無駄なく摂取できます。とくに、ビタミンB群やカリウムなど、きのこに含まれる栄養成分には水溶性の成分が多いです。そのため、煮物や鍋料理でキノコを調理すると、これらの栄養素が煮汁に溶け出してしまいます。
煮汁ごと食べたり、リゾットや茶碗蒸しなどにして煮汁を別の料理に活用したりするのがおすすめです。
天日干しにする
きのこを天日干しにすることで、ビタミンDの含有量が大幅に増加します。これは、きのこに含まれる「エルゴステロール」という物質が紫外線によってビタミンDに変換されるためです。
しいたけは、かさのひだを上にして日に当て、まいたけやしめじは小房に分けて干すと均一に乾燥します。2〜3時間日光に当てるだけでもビタミンD量は増加するので、調理前の一手間として取り入れると良いでしょう。
きのこをおいしく食べるためのポイント
きのこは、調理法や組み合わせる食材によって、その風味や食感が大きく変わります。ここでは、きのこをよりおいしく食べるためのポイントを見ていきます。
水で洗わない
きのこは水洗いすると風味や旨味が失われ、食感も損なわれます。汚れが気になる場合は、湿らせたキッチンペーパーでやさしくふき取ると、きのこの本来の風味と食感をキープしたまま、おいしく食べられます。
強火で炒める
きのこを炒める場合は、強火で手早く炒めると良いでしょう。水分が多いきのこは、弱火で長時間加熱するとくたくたになって食感が損なわれてしまいます。強火で短時間加熱することで、香りが引き立ち、シャキシャキ感も保てます。
新鮮なきのこを選ぶ
きのこをおいしく食べるには、新鮮な状態で購入することが重要です。選ぶ際は、かさが開いておらず、ヒダに張りのあるものを選びましょう。
しいたけやマッシュルームはかさの状態で鮮度を判断できます。また、軸が白くて硬く弾力があるものが新鮮なため、指で軽く押して、弾力を感じるものを選ぶのがおすすめです。
きのこのおすすめレシピ8選
きのこは、調理法や一緒に料理する食材次第で、よりおいしく味わえます。ここでは、きのこを使った簡単でおいしいレシピをご紹介します。
鶏肉ときのこの甘酢煮
鶏肉ときのこを甘酢で煮込むことで、きのこから溶け出した旨味成分と栄養素を余すところなく摂取できる一品です。煮汁にも水溶性ビタミンやミネラルが溶け出しているので、最後までおいしくいただけます。
ニラときのこのサンラータン
きのこの旨味がスープに溶け出し、栄養素もしっかり摂取できる満足感のある一杯です。食欲をかき立てるニラの香りの主成分は「アリシン」といい、糖質の代謝を促進する働きがあるため、疲労回復や体力増強に役立ちます。
鮭ときのこのホイル焼きハーブレモン風味
ホイル焼きでじっくり火を通すことで、きのこのうまみを閉じ込め、栄養素の流出を防ぎます。また、鮭には「アスタキサンチン」と呼ばれる抗酸化力のある栄養素が含まれています。アスタキサンチンが細胞の酸化を抑え、美肌やアンチエイジングの効果が期待できます。
豚もも肉エリンギ巻き
豚肉でエリンギを巻くことで、エリンギの食感を活かしながら肉のうまみも同時に楽しめる一品です。豚肉の脂と一緒に調理することでエリンギに含まれる脂溶性ビタミンDの吸収率が高まり、カリウムなどのミネラルも効率よく摂取できます。
ゆで卵の牛肉巻き照り焼き
柔らかい牛肉巻に、きのこの食感がアクセントになる一品です。卵は完全栄養食と呼ばれるほど栄養価が高いですが、食物繊維が含まれていません。食物繊維を豊富に含むきのこと一緒に料理することで、栄養バランスも整います。
揚げ豚の白菜あんかけ
あんかけのとろみで、しいたけなどのきのこから溶け出した栄養素を逃さず摂取できます。きのこのやわらかい食感や、白菜のシャキシャキ感、揚げ豚のカリッとした食感が楽しい一品です。
白身魚の野菜あんかけ
白身魚の淡白な味わいにきのこの風味や食感が調和し、低カロリーながら満足感を得られます。白身魚は脂質が少なく、高たんぱくなので、ダイエット中にもおすすめのメニューです。
根菜ラタトゥイユ
じっくり煮込むことのできるきのこの味が野菜に染み込み、水溶性ビタミンやミネラルを余すことなく食べられる栄養価の高い一品です。きのこと根菜の異なる食感が楽しいおかずで、冷蔵保存も可能なので作り置きにも便利な健康レシピです。
まとめ
きのこは低カロリーでありながら、ビタミンB群、ビタミンD、食物繊維、カリウム、リンなど豊富な栄養素を含む優れた食材です。β-グルカンなどの機能性成分も含まれており、免疫力向上や腸内環境改善、血圧調整などさまざまな健康効果が期待できます。
きのこの栄養を無駄なく摂るには、水洗いを避ける、煮汁を捨てない、強火で手早く調理するなどのポイントを押さえることが大切です。今回紹介したレシピを参考に、毎日の食事にきのこを取り入れて、健康的な食生活を始めてみてください。
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