
【医師監修】カフェインレスコーヒーは妊娠中でも飲める?デカフェとの違いも
また、カフェインレスコーヒーやデカフェ、ノンカフェインなど、さまざまな商品があり、どういった違いがあるのかも気になるところです。そこで今回は、妊娠中にカフェインレスコーヒーを飲むことの影響や、デカフェ・ノンカフェインとの違い、カフェインが妊婦に及ぼす影響を解説していきます。
監修者
- 井上 信明(いのうえ のぶあき)
- 日本小児科学会専門医・同指導医/米国小児科専門医/米国小児救急専門医
日本の医学部を卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科および小児救急の研修を行う。
目次 [CLOSE]
カフェインレスコーヒーは妊娠中に飲んでも大丈夫?
妊娠中は、摂取する食べ物や飲み物の成分に配慮する必要があります。カフェインについても、摂取しても大丈夫なのか心配する方は多いでしょう。そこで、まずは妊娠中にカフェインレスコーヒーを飲んでも問題ないのか、解説していきます。
量に気を付ければ妊娠中でも基本問題なし
結論からいうと、カフェインレスコーヒーには少量のカフェインが含まれていますが、適量であれば妊娠中に飲んでも問題ありません。
カフェインレスコーヒーとは、カフェイン量を90%以上除去したコーヒーを指します。通常のコーヒーを飲むよりもカフェインの摂取を抑えることができるので、過剰に飲みすぎなければ妊娠中でも安心して飲むことができます。
カフェインレスコーヒーのカフェイン量について詳細は、後述の「▼カフェインレス:カフェイン量を90%以上除去した飲料」で説明します。
妊娠中のコーヒーは「2杯程度まで」が基準
英国食品基準庁(Food Standards Agency)によると、妊婦の1日あたりのカフェイン摂取量は約200mgまでが安全とされています[1]。これは、通常のコーヒーだとマグカップ2杯分程度の量です(※)。
前述のとおり、カフェインレスコーヒーはカフェイン量を90%以上除去したコーヒーなので、通常のコーヒーの約10倍量=マグカップ20杯程度でやっと上記の安全とされる上限量に達することになります。1日20杯飲むことは考えにくいため、基本的に妊娠中のカフェインレスコーヒー摂取による、安全量を超えたカフェインの摂取は起こりにくいといえます。ミルクや砂糖の量に気をつけながら、常識の範囲内で飲むと良いでしょう。
ただし、カフェインはコーヒーだけでなく、緑茶や紅茶にも含まれている点には注意が必要です。緑茶(煎茶)の場合は湯呑み6杯まで、紅茶の場合はティーカップ5杯までが妊娠中の1日あたりの適量です(※)。カフェインレスコーヒーでカフェインを抑えていたとしても、緑茶や紅茶などその他の飲料などで摂取していると、安全とされる量を超える可能性があります。
※:マグカップ1杯を150mL、湯呑み1杯を150mL、ティーカップ1杯を130mLで計算。
なお、妊娠中はカフェインをできるだけ避けることが望ましいとされています。カフェインは胎盤を通過しやすく、胎児の代謝機能も未熟であるため、生まれてくる赤ちゃんの低出生体重のリスクにつながるだけでなく、流産・早産のリスクにつながるおそれもあります。
妊娠中のカフェイン摂取のリスクについては、後述の「▼妊娠初期のカフェイン摂取はとくに注意」もご覧ください。
カフェインの過剰摂取による影響一覧
カフェインを過剰に摂取した場合、以下の作用や影響が考えられます[2]。
妊娠中のリスク
- 胎児の低体重
- 胎児の発育の阻害
妊娠中/通常時共通のリスク
- めまい
- 心拍数の増加
- 興奮
- 不安
- 震え
- 不眠症
- 下痢
- 吐き気
- 頭痛
- イライラ感
- 脱水症状
- 緊張感など
カフェインの大量摂取により、母体の健康に影響があるだけでなく、胎児が発育不全で低体重になるリスクがあります。母体と胎児を守るためにもカフェインを大量に摂取することのないよう気を付けましょう。
妊娠初期のカフェイン摂取はとくに注意
妊娠初期は、赤ちゃんの脳や心臓など大切な器官がつくられる重要な時期です。この時期にカフェインを摂りすぎると、流産や発育への影響が心配されるため、できるだけ摂取を控えることが望ましいとされています。
妊娠中期以降もリスクがなくなるわけではありません。中期以降は母体でのカフェインの分解が遅くなり、不眠や鉄分の吸収を妨げるリスクが高まります。利尿作用によって体の水分バランスも崩れやすいため、前述の1日200mg以内を目安に、量をしっかり管理することが大切です。
「カフェインレス」と「デカフェ」「ノンカフェイン」の違い
カフェインレスと似た商品に「デカフェ」「ノンカフェイン」があります。それぞれ言葉は聞いたことがあっても、違いが分からないという方もいるでしょう。
カフェインレスとデカフェはどちらもカフェインを抑えた飲料で、ノンカフェインはカフェインが含まれていない飲料、という違いがあります。
ここからはそれぞれの違いを詳しく説明します。
カフェインレス:カフェイン量を90%以上除去した飲料
カフェインレスとは、「本来含まれているカフェイン量から90%以上のカフェインを取り除いた飲料」を指します。
コーヒーにおける「カフェインレス」の表記は、全日本コーヒー公正取引協議会が定めた規約[3]に基づいています。コーヒー飲料の場合は、カフェイン量を90%以上除去しないと、商品に「カフェインレス」の表記を入れることができません。
ちなみに、カフェインレスコーヒーを作る場合、焙煎前の生豆の状態でカフェインを取り除く手法が用いられます。
デカフェ:カフェインを取り除いた飲料全般
デカフェとは、「カフェインを取り除いた飲料全般」を指します。カフェインを取り除く量には規定がなく、カフェイン量を少しでも減らしていれば「デカフェ」と表記できます。カフェイン量が少ないコーヒーを飲みたい場合、明確に90%以上除去されている「カフェインレスコーヒー」がおすすめです。
なお、デカフェの語源はフランス語の「décaféiner」で、「dé」(取り除く)+「caféine」(カフェイン)と考えられています。
ノンカフェイン:カフェインゼロの飲料
ノンカフェインとは、「カフェインを完全に含まない飲料」を指します。
コーヒー豆に含まれているカフェインをゼロにするのは困難なため、基本的にコーヒー豆をベースにしたものはノンカフェインと呼ばれません。
例えば、たんぽぽから作られる「たんぽぽコーヒー」はコーヒーに似た味ですが、コーヒー豆から作られたものではなくカフェインを含まないため、ノンカフェインです。また、ルイボスティーやハーブティー、麦茶もノンカフェインの飲み物です。
妊娠中など、カフェインの摂取を避けたいときは、ノンカフェイン飲料を選ぶと良いでしょう。
カフェインレスコーヒーがおすすめの人とは?
カフェインが持つ成分は、体にさまざまな影響を与えます。どんな人も、飲みすぎることで体調を悪くする可能性があり、適度な摂取が望ましいとされています。
なかでも、以下に当てはまる人は、カフェインレスコーヒーを飲むことをおすすめします。
妊娠中の方
妊娠中の方は、胎児に悪影響を与えてしまう可能性が指摘されている[1]ため、1日のカフェイン摂取量を、通常のコーヒー2杯分までに抑えることが推奨されます。
カフェインレスコーヒーは、カフェイン量が通常のコーヒーよりも大幅に少なく、過剰量でなければ妊婦の方でも飲むことができます。味も通常のコーヒーに近いため、コーヒー好きの方でも満足できるでしょう。
カフェイン量をゼロに抑えたいという方は「ノンカフェイン」を選びましょう。たんぽぽコーヒーやルイボスティー、ハーブティー、麦茶などのノンカフェイン飲料であれば安心して飲めます。
夜にコーヒーが飲みたい方
夜まで仕事や作業をしていると、コーヒーを飲んで一息つきたくなったことはありませんか?しかし、カフェインは脳を興奮させる作用があり、眠れなくなることがあります[4]。
そんなとき、カフェインレスコーヒーであれば、寝る前に飲んでも睡眠への影響を少なく抑えられるため、夜でも飲みやすいです。
カフェインが得意ではない方
カフェインを摂取すると、心拍数の増加・興奮・不安・震え・不眠症・下痢・吐き気などの健康被害が生じる可能性があります[4]。過剰に摂取しなければほとんど起こらないことですが、体質的にカフェインが得意ではないという人は少量の摂取でも体調の悪さを感じることがあります。
一方、カフェインレスコーヒーであればカフェインがほとんど取り除かれているため、これらの健康被害が発生するリスクは抑えられます。カフェインが苦手な人でも安心して、コーヒーをおいしく楽しむことができるでしょう。
カフェインレスコーヒーの味は?
カフェインレスコーヒーは、通常のコーヒーと比較してカフェインが90%以上取り除かれているため、「味が薄いのではないか?」というイメージを持つ人も少なくありません。
コーヒーが好きな人にとって、コーヒーのおいしさとは「苦み」や「深み」、焙煎の仕方で異なる「酸味」です。そのため、カフェインが取り除かれたことでそれらが無くなってしまうのか、というのは気になる点だと思います。
そんなコーヒー好きの人向けに、カフェインレスコーヒーの味の特徴や、おいしい飲み方についてご紹介していきます。
口当たりが軽くすっきりと飲みやすい傾向
カフェインレスコーヒーは苦みのもとであるカフェインが取り除かれているため、苦みは少ない傾向にあります。決して味が薄いというわけではありません。苦みが少ないことで口当たりが軽くなり、すっきりとした味わいを楽しむことができます。
カフェインの抽出方法や豆の種類によっても味が異なるため、さまざまなカフェインレスコーヒーを試して、お気に入りを見つけるのが良いでしょう。コーヒー豆本来のおいしさを感じるためには、シンプルにブラックで飲むのがおすすめです。
ミルクや砂糖の味を感じられる
先述のように苦みが少ない傾向にあるカフェインレスコーヒーは、通常のコーヒーと比べてミルクや砂糖の味を強く感じることがあります。普段よりミルクや砂糖の量を減らしても、しっかりした甘みを感じるため、コーヒーの苦みが苦手な人にもおすすめです。
カフェラテやカプチーノで飲む際には、カフェインレスコーヒーを使ったほうがおいしいと感じる人もいるようです。また、ミルクや砂糖と相性が良いため、コーヒーゼリーやコーヒープリンなどのお菓子作りにも活躍します。
いろいろなアレンジに挑戦し、カフェインレスコーヒーの楽しみ方を見つけてみましょう。
まとめ
カフェインレスコーヒーは、通常のコーヒーに比べてカフェイン量が90%以上除去されているため、適量であれば妊娠中でも安心して飲むことができます。ただし、カフェイン量が完全にゼロではないことや、緑茶や紅茶など他の飲料からのカフェイン摂取にも注意が必要です。
妊娠中のカフェイン摂取はリスクがあるため、気になる方はカフェイン量がゼロのノンカフェイン飲料(たんぽぽコーヒー、麦茶など)を選ぶと良いでしょう。
なお、カフェインレスコーヒーは苦みが少なく、口当たりが軽い特徴があり、ミルクや砂糖との相性が良いため、お菓子作りやアレンジにも適しています。妊娠中の方だけでなく、夜にコーヒーを楽しみたい方やカフェインが苦手な方にとっても、カフェインレスコーヒーはおすすめです。
- 英国食品基準庁(Food Standards Agency):
Pregnant women advised to limit caffeine consumption - 農林水産業:
カフェインの過剰摂取について - 全日本コーヒー公正取引協議会:
レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約 [PDF] - 厚生労働省:
食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
記事編集
- くらひろ by TEPCO
- 東京電力エナジーパートナー株式会社
くらひろ by TEPCOは東京電力エナジーパートナーが運営するメディアサイトです。毎日のくらしに役立つ知識から、次の一歩につながる情報まで、知りたいに答える多彩な記事を配信しています。

この記事の情報は公開日時点の情報です
KEYWORD
#人気のキーワード
RECOMMENDED
#この記事を読んだ人におすすめの記事