妊娠・出産・新生児

【医師監修】妊婦さんが注意すべき飲み物・おすすめの飲み物一覧!

妊娠中は、妊娠前よりも毎日の飲み物に気を遣うようになっていると思います。「妊娠中に飲んではいけないものは何?」「体に良い飲み物は?」と、飲むたびに不安になっている方も多いですよね。

この記事では、妊娠中に避けるべき飲み物と、マタニティライフを快適にしてくれるおすすめの飲み物をまとめました。妊娠中は、お腹の赤ちゃんに栄養を届けるためにも、いつも以上に水分補給が大切です。あなたと赤ちゃんの健やかな毎日のために、ぜひ参考にしてください。

監修者

井上 信明(いのうえ のぶあき)
日本小児科学会専門医・同指導医/米国小児科専門医/米国小児救急専門医

日本の医学部を卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科および小児救急の研修を行う。

妊婦には1日1.5~2Lの飲み物が必要

妊娠中は、赤ちゃんのためにもお母さんのためにも、水分をしっかり摂ることが大切です。1日に必要となる水分量の目安は、食事で摂る水分を除いて約1.5〜2Lといわれています。あくまで目安なので、汗をかきやすい暑い季節や、つわりで嘔吐してしまうとき、運動で体を動かしたときなどは、より多くの水分が必要になります。

水分は一度にたくさん摂るのではなく、コップ一杯の水をこまめに少しずつ飲むようにすると、体への負担も少なく、効率良く水分を補給できます。

ここでは、妊婦さんが水分を摂るべき理由を詳しく解説します。

血液量の増加・循環の維持

妊娠すると、お腹の赤ちゃんに栄養や酸素を届けるため、とくに妊娠後期には母体の血液量が約40%も増加します。血液の約9割は水分でできているため、増加した血液量を維持するには十分な水分補給が不可欠です。

水分が不足すると、血液がドロドロと粘稠(ねんちゅう)になってしまい、血流が悪化するリスクがあります。血流が悪くなると、赤ちゃんに十分な栄養や酸素が届きにくくなるだけでなく、お母さん自身も頭痛などの体の不調を感じやすくなってしまいます。

羊水の生成・維持

羊水は、外部の衝撃から赤ちゃんを守ったり、体温を一定に保ったりするクッションのような役割を果たしています。この羊水は、主に母体の血液中の水分からつくられています。

十分に水分を摂取することで、羊水の量を適切に保ち、赤ちゃんが快適に過ごせる環境を維持することができます。

便秘の予防

妊娠中は、ホルモンバランスの変化や大きくなった子宮で腸が圧迫されることにより、腸の動きが鈍くなり便秘になりやすくなります。便秘に悩まされる妊婦さんはとても多いです。

水分をしっかり摂らないことで、便が硬くなり、便秘につながりやすくなります。意識して水分を摂取しましょう。

尿路感染症の予防

妊娠すると、ホルモンの影響により排尿するための管の動きが落ちたり、大きくなった子宮が尿の通り道を圧迫したりするため、尿が流れにくくなることがあります。そのため、細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症にかかりやすくなります。

こまめに水分を補給して尿量を増やすことで、尿路の細菌を洗い流す効果が期待でき、感染症のリスクを減らすことができます。

脱水症状・熱中症の予防

妊娠中は、女性ホルモンの影響を受けて基礎体温が高くなり、汗をかきやすくなります。とくに、暑い季節や、つわりで嘔吐が続く場合は、脱水症状や熱中症のリスクが高まります。こまめな水分補給を意識して、体調不良を防ぎましょう。

脱水症状・熱中症の予防

妊娠中にリスクのある飲み物

妊娠中は、お腹の赤ちゃんのために避けた方が良い飲み物があります。うっかり口にしてしまわないよう、注意しましょう。妊娠中にリスクがある飲み物は、以下のとおりです。

アルコール飲料:ビール・ワインなど

お母さんがアルコールを摂取すると胎盤を通じて、お腹の赤ちゃんに直接届いてしまいます。赤ちゃんの未熟な肝臓ではアルコールを分解できないため、胎児性アルコール・スペクトラム障害(Fetal Alcohol Spectrum Disorders:FASD)を引き起こす可能性があります。FASDは、赤ちゃんの成長や発達に様々な影響を及ぼす可能性のある先天的な疾患群です。

妊娠が発覚したら、ビールやワイン、カクテルなどアルコールを含む飲料は飲まないようにしましょう。ノンアルコール飲料にも、微量のアルコールを含むものがあるため、成分表示をしっかり確認してください。

また、甘酒はノンアルコールのイメージがあるかもしれませんが、酒粕から作られている甘酒はアルコールを含むため、妊娠中に飲むのは避けてください。一方で、米麹から作られている甘酒にはアルコールが含まれませんが、糖分が多いため一度に大量に飲むのは控えましょう。

カフェインを多く含む飲み物:コーヒー・栄養ドリンクなど

カフェインを過剰に摂取すると、流産につながるリスクや赤ちゃんが低体重になる可能性があるとされています。妊娠中のカフェイン摂取量の目安は、1日200mgまでです。これは、コーヒーであればマグカップ約2杯分に相当します。

カフェインは、コーヒーだけでなく、緑茶や紅茶、チョコレート、栄養ドリンクにも含まれています。とくに、栄養ドリンクはカフェインの含有量が多いものがあるので注意が必要です。

どうしてもコーヒーが飲みたいときは、飲み物中のカフェイン量を90%以上除去した「カフェインレスコーヒー」や、コーヒーと似た味わいでカフェインを含まない「たんぽぽコーヒー」などを選ぶのがおすすめです。ただし、カフェインレスコーヒーは少量のカフェインを含むので、飲みすぎには注意してください。

ハーブティー:カモミール・ラズベリーリーフなど

一部のハーブには子宮収縮作用があり、早産を引き起こす可能性があります。妊娠中は、ローズマリー、ジャスミン、カモミール、レモングラス、ペパーミント、ラズベリーリーフ、リコリスなどのハーブティーには注意が必要です。

ただし、ラズベリーリーフは、妊娠初期や中期にはNGですが、出産を控えた時期に飲むと陣痛の痛みを和らげる作用があるといわれています。切迫早産など安静が必要な状態ではない場合に限り、予定日の2か月前からであれば、医師や助産師の指導のもとで飲むのは問題ないとされています。

ハーブティーを飲む際は、妊娠中でも問題なく飲めるものか確認するようにしましょう。

ハーブティー

清涼飲料水:サイダー・コーラなど

サイダーやコーラなどの清涼飲料水には、大量の糖分が含まれています。毎日摂取するなど飲みすぎてしまうと、妊娠糖尿病や肥満のリスクが高まる可能性があります。
喉が渇いたときは、ミネラルウォーターや麦茶など、糖分を含まない飲み物を選ぶようにしましょう。

未殺菌の生搾りジュース・牛乳

未殺菌の生搾りジュースや牛乳には、サルモネラ菌やリステリア菌が含まれている可能性があり、食中毒を引き起こすリスクがあります。ジュースや牛乳を飲む際は、成分表示を見て「殺菌済み」であることが確認できるものを選ぶようにしてください。

妊娠中におすすめの飲み物【目的別】

妊娠中は、体調や目的に合わせて飲み物を選ぶことで、より快適なマタニティライフを過ごすことができます。ここでは、妊娠中におすすめの飲み物を目的別にご紹介します。

水分補給におすすめ:水・麦茶・ルイボスティー

水分補給の基本は水です。最もシンプルで安全な飲み物であり、余計な成分を気にすることなく水分を摂ることができます。体を冷やしたくない場合は、白湯として飲むのがおすすめです。

麦茶やルイボスティーは、カフェインを一切含まないため、カフェイン摂取による胎児への影響を心配する必要がありません。さらに、麦茶には、カリウムやカルシウムなどのミネラルも含まれており、水分補給と同時にミネラルも補給できるのが嬉しいポイントです。

ただし、ルイボスティーにはポリフェノールが多く含まれています。妊娠後期のポリフェノール過剰摂取が原因で、胎児動脈管早期収縮(PCDA:Premature Constriction of Ductus Arteriosus)を引き起こしたという報告[1]もあるため、飲みすぎないよう注意が必要です。

つわりのときにおすすめ:炭酸水・生姜湯

つわりで吐き気がつらいときは、炭酸水がおすすめです。炭酸の刺激が口の中をすっきりさせ、吐き気を和らげる効果が期待できます。冷たいものが苦手な場合は、常温の炭酸水や、絞ったレモンを少し入れて飲むと飲みやすくなります。

また、生姜には吐き気を抑える効果があるといわれています。市販の生姜湯や、すりおろした生姜にお湯を注いで飲むのも良いでしょう。

便秘のときにおすすめ:野菜ジュース・牛乳

妊娠中は便秘になりやすいので、食物繊維や水分を積極的に摂りましょう。野菜ジュースは、食物繊維と水分を同時に摂取できるため、便通をスムーズにする効果が期待できます。ただし、野菜ジュースの中には、糖分が多く含まれているものもあるため、砂糖不使用のものを選ぶことが重要です。

また、野菜ジュースだけでは十分な量の食物繊維が摂れないことも多いため、同時に食物繊維を多く含む食材を食べることも意識しましょう。

牛乳には乳糖が含まれており、腸のぜん動運動を促す効果があるといわれています。また、ヨーグルトドリンクや乳酸菌飲料も、腸内環境を整える善玉菌を摂取できるため、便秘改善に役立ちます。ただし、一度に大量の牛乳を飲むと腹痛や下痢の症状が起こる場合があるので、適度な量を心がけてください。

また、少量の牛乳でもお腹がゴロゴロしてしまう方は無理に飲まないようにしましょう。

むくみが気になるときにおすすめ:コーン茶・小豆茶

むくみが気になるときは、体内の余分な塩分や水分の排出を促すカリウムを多く含む飲み物がおすすめです。コーン茶や小豆茶は、カリウムが比較的多く含まれており、むくみの解消に役立ちます。

ただし、これらの飲み物には利尿作用があるため、飲みすぎるとトイレが近くなったり、体に必要な水分まで排出されてしまったりすることがあります。適量を心がけて飲むようにしましょう。

栄養補給におすすめ:葉酸入り飲料・豆乳

葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすために、とくに妊娠初期に積極的に摂取が推奨される栄養素です。葉酸が強化された飲料や、葉酸を多く含む野菜で作ったスムージーは、手軽に葉酸を補給できます。

豆乳は、葉酸やカルシウム、タンパク質などを摂取できるため、栄養補給に適しています。きな粉を混ぜて飲むと、さらに葉酸や食物繊維を補うことができるのでおすすめです。

妊娠中の飲み物に関するよくある質問

初めての妊娠だと疑問が尽きないですよね。ここでは、妊娠している方が感じる疑問についてお答えします。

つわりで水を飲めないときはどうすれば良い?

つわりがひどくて水も受け付けないときは、無理に飲もうとせず、以下の口にしやすいものを試してみてください。

  • 無糖の炭酸水やレモン水:炭酸の刺激やレモンの香りが口の中をさっぱりさせ、吐き気を和らげる効果が期待できます。
  • 麦茶やルイボスティー:ノンカフェインでミネラルも補給できる麦茶は、常温の水よりも飲みやすいと感じる妊婦さんが多いです。
  • 氷やフローズンドリンク:氷をなめる、フローズンドリンクなどで少しずつ水分を補給する方法も有効です。

ノンアルコール飲料は飲んでも良い?

「アルコール分0.00%」と明記されているノンアルコール飲料であれば、安心して飲むことができます。ただし、日本の食品表示基準では、アルコール分が1%未満の飲料は「ノンアルコール」と表示できるため、ごく微量のアルコールが含まれている製品もあります。念のため、成分表示をしっかり確認しましょう。

また、カロリーオフや糖質ゼロと表示されていても、人工甘味料などが含まれている場合があるため、無添加や低糖質のものを選ぶのがおすすめです。

ノンアルコール飲料は飲んでも良い?

妊娠中でも飲んで良いハーブティー・スパイスティーは?

妊娠中に飲んで良い代表的なハーブティーとスパイスティーは以下のとおりです。

  • ルイボスティー:ノンカフェインでミネラルが豊富です。抗酸化作用やアレルギー症状の緩和にも良いとされ、妊婦さんにおすすめされることが多いです。ただし、ポリフェノールが含まれているので、飲みすぎには注意が必要です。
  • ジンジャーティー:生姜の成分が吐き気や冷えに効果的です。ただし、飲みすぎは胃を刺激することがあるため、適量を心がけてください。

市販のハーブティーやスパイスティーを飲む際は、「妊婦さん向け」と明記されているものを選ぶか、成分を必ず確認するようにしましょう。

妊娠後期に飲むと良い飲み物は?

妊娠後期は、むくみや便秘、貧血などのマイナートラブルが増えやすい時期です。目的に合わせて飲み物を選んでみましょう。

  • むくみ改善:コーン茶、小豆茶、麦茶など、体内の余分な塩分を排出するカリウムが豊富な飲み物がおすすめです。
  • 便秘改善:スムージーや野菜ジュース、乳酸菌飲料は、便通を促すのに効果的です。
  • 出産準備:医師や助産師の指導のもと、ラズベリーリーフティーを飲むことで、子宮の収縮を助け、出産や産後の回復をスムーズにする効果が期待できると言われています。
  • 貧血予防:妊娠後期は貧血になりやすい時期です。鉄分を多く含む青汁やプルーンジュースなどを活用して、こまめに鉄分を補給しましょう。

まとめ

妊娠中は、お母さんと赤ちゃんの健康のためにも、こまめな水分補給が重要です。1日1.5〜2Lを目安に、水やノンカフェインのお茶を体調に合わせて少しずつ飲むように心がけましょう。つわりのときや、便秘・むくみといったマイナートラブルがあるときは、それぞれの症状に合わせた飲み物を取り入れてみてください。

また、アルコールやカフェインを多く含むもの、一部のハーブティーなど、避けるべき飲み物を意識して避けることで、より安心してマタニティライフを過ごすことができます。

  1. 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:
    【第14回】妊娠とサプリメントの利用について

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