ぶどう 皮ごと食べる
季節の食材

管理栄養士監修:ぶどうは皮ごと食べられる?メリットや栄養を解説

皮を取って食べるのが一般的なぶどうですが、じつはぶどうの皮には豊富な栄養素が含まれています。ただ、皮ごと食べられることは知っていても、「健康に影響はないのか?」「皮ごと食べるときは何に注意したらいい?」と不安を持たれる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ぶどうを皮ごと食べるメリットや皮ごと食べてもおいしい品種、皮ごと食べるときの注意点について紹介します。皮ごと食べられるぶどうについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

監修者

保科 琴美(ほしな ことみ)
東京電力ホールディングス株式会社
管理栄養士

管理栄養士として医療の現場で栄養指導の経験と実績が豊富。日本糖尿病療養指導士。定期的にヨガ講師としての活動も行っている。

保科 琴美

ぶどうは皮ごと食べられる?【食べてOK】

国産のぶどうに使われている農薬は、日本の厳しい安全基準をクリアしたものが使用されているため、ぶどうを皮ごと食べても健康に問題はなく、安心して食べられます。

また、一般的には輸入ぶどうは国産ぶどうよりも農薬使用率が低いと言えます。これは、海外ではぶどうを皮ごと食べるのが当たり前の習慣となっていて、農薬の使用を抑えているからです。

他にも、農薬と誤解されやすいのが、ぶどうの表面に付着している白い粉です。この白い粉は「ブルーム」と呼ばれる天然の成分で、農薬ではありません。ぶどうの実を乾燥や病気から守る働きがあるため、むしろブルームが付いているぶどうの方が、みずみずしく新鮮だと言えます。

ぶどうを皮ごと食べると豊富な栄養を摂れる

ぶどうは皮ごと食べると、皮をむいて食べるよりも栄養素を多く摂取できます。次の表に示したように生のぶどう100gあたり(可食部)の栄養成分を皮つきと皮なしで比較すると、皮に栄養素が多く含まれているのがわかります。

栄養成分 皮つき 皮なし
エネルギー 69kcal 58kcal
ポリフェノール 200mg
食物繊維 0.9g 0.5g
カリウム 220mg 130mg
β-カロテン 39µg 21µg
葉酸 19µg 4µg

出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年「第2章(データ)」より抜粋[1]

皮つきと皮なしで、含有量が大きく変わるのが「ポリフェノール」です。ポリフェノールは、ぶどうの実にはほとんど含まれていませんが、皮には多く含まれているため、ポリフェノールを摂取するには皮ごと食べるのがおすすめです。

ぶどうの皮に多くに含まれる栄養素には、次のような効果が期待できます。

続いて、それぞれの栄養素について詳しく解説していきます。

ポリフェノール:生活習慣病の予防

ポリフェノールには、色素をつくるアントシアニンや、苦みの元であるタンニンなどの成分があります。

ポリフェノールには、身体に有害な活性酸素を無害化する作用があり、摂取することで肌の弾力を改善したり老化を防止できたりするほか、生活習慣病の予防効果に期待できます。

ポリフェノールには水に溶けやすい性質があり、短時間で身体に作用します。ただし、すぐに排せつされてしまい、効果は数時間程度と長続きしない傾向にあります。

美容面でも取り入れたい栄養素のひとつですが、継続的に効果を求めるためには、こまめに摂取するのがおすすめです。

食物繊維:便通の改善や満腹感

食物繊維は、善玉菌を増やす効果があります。腸内に善玉菌が増えることによって、便秘を予防・改善し、大腸ガンの予防効果も見込めます。

また、食物繊維を摂ると満腹感が得られやすいのも特徴のひとつです。満腹感があると食べすぎの防止につながるため、ダイエットにも適しています。

さらには、血糖値の急上昇を抑えてコレステロール値を下げる働きもあり、健康を保つためには欠かせない栄養素といえるでしょう。

食べ方を変えるだけで皮なしのぶどうよりも多くの食物繊維を手軽に摂取できるため、健康を維持するためには、皮ごと食べるのがおすすめです。

カリウム:むくみ防止

カリウムは、余分なナトリウムを排出する働きがあり、むくみの予防や解消が期待できます。

ナトリウムは、ミネラルの一種で身体の健康を維持するために必要な栄養素ですが、過剰に摂取すると高血圧や糖尿病を引き起こす原因にもなります。

カリウムを摂取して余分なナトリウムが排出されることで、高血圧の予防や改善も期待できます。

どの品種が皮ごと食べられるの?

ぶどうを皮ごと食べられる品種は、以下の表のとおりです。

産地 皮ごと食べられる品種
国産
  • シャインマスカット
  • ナガノパープル
  • クイーンニーナ
  • 瀬戸ジャイアンツ
  • サニードルチェ
  • 紅バラード
  • 甲斐路
外国産
  • レッドグローブ
  • サマーブラック

表で紹介した品種は、皮が薄くて渋みが少なく、食感が良いなど、皮ごと食べるのに適しているため、普段皮ごと食べ慣れていない方にもおすすめです。近年では、シャインマスカットをはじめとして、種がなく皮ごと食べやすい品種の生産が増え、人気を集めています。

スーパーで多く販売されている「ピオーネ」「巨峰」「デラウェア」などは、皮をむいて食べるのが一般的な品種ですが、皮ごと食べても問題ありません。ただし、表に記載した品種と比べると、皮が厚く渋みを感じやすい傾向にあります。

皮ごと食べられるぶどう

ぶどうを皮ごと食べるときの注意点

ぶどうを皮ごと食べるときは、以下の点に注意しましょう。

ここではそれぞれの注意点について、詳しく紹介していきます。

よく洗って皮の汚れを落とす

ぶどうの皮には、汚れが付いていることがあるので、洗って皮の汚れを落としてから食べましょう。残留する農薬については、先述のとおり厳しい基準が設けられているため、皮ごと食べても人体に悪影響はありません。

流通過程などで付着したチリやホコリなどの汚れを落とす程度に洗いましょう。おすすめのぶどうの洗い方は、以下のとおりです。

【ぶどうの上手な洗い方】

  1. ボールに水をためる
  2. そっとぶどうを入れ、ゆすりながら洗う
  3. ざるにあげ、水気を切る
  4. キッチンペーパーなどで水をよく拭き取る

ぶどうは、流水で洗うと房から実が落ちてしまう可能性があるので、ボールの中でやさしく洗うのがコツです。

また、新鮮さを保つために、洗ってから保存するのではなく、食べる直前に洗うのがポイントです。保存前に洗ってしまうと、乾燥を防ぎ病気から守るブルーム(皮に付いている白い粉のような成分)まで洗い落とされた状態になってしまいます。

よく洗って皮の汚れを落とす

カロリーが高いため食べすぎない

ぶどうは、みかんやいちご、りんごなど他の果物よりも比較的カロリーが高いため、食べすぎには注意が必要です。特に皮つきのぶどうは、皮なしのぶどうよりカロリーが高くなります。

また、ぶどうは食物繊維も豊富なので、食べすぎると消化不良を起こすおそれもあります。

農林水産省の「食事バランスガイド」によると、1日あたりのぶどうの摂取量は、「半房」程度が目安とされています[2]。たくさんのぶどうが手に入ったときは、正しい方法で保存して、何日かに分けて楽しんでください。

以下の方法では、5〜7日程度の保存が可能です。

【ぶどうの冷蔵保存の仕方】

  1. 枝を数mm程度残して、房から一粒ずつハサミで切り離す
  2. 密閉容器にキッチンペーパーを敷く
  3. ぶどうを一粒ずつ並べる
  4. キッチンペーパーを上からかぶせる
  5. ふたをして野菜室で保存する

このように上手に保存することで長持ちさせ、一度に食べすぎないよう注意しましょう。

まとめ

ぶどうは皮ごと食べても、人体に悪影響はありません。皮に多く含まれているポリフェノールやカリウム、食物繊維などによって生活習慣病の予防や美容などの効果が期待できるため、むしろ皮ごと食べるのがおすすめです。

近年ではシャインマスカットをはじめ、皮つきで食べられる品種の生産も増えて気軽に味わえるようになりました。ただし、他の果物と比べるとカロリーが比較的高いため、1日半房程度を目安に食べるのがおすすめです。

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