食の知識

管理栄養士監修:冷凍した野菜の栄養価はどうなる?適切な冷凍方法も

まとめ買いした野菜や、使いきれなかった野菜を冷凍保存したいと思っていても、冷凍したときの栄養価の変化が気になる方は多いのではないでしょうか。冷凍野菜は手軽に使えて便利なため、野菜本来の栄養素が保たれるなら活用したいですよね。

そこで今回は、野菜を冷凍することで栄養価は下がるのか、生野菜と冷凍野菜の栄養価を比較して解説します。栄養素を逃がしにくい冷凍方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

監修者

保科 琴美(ほしな ことみ)
東京電力ホールディングス株式会社
管理栄養士

管理栄養士として医療の現場で栄養指導の経験と実績が豊富。日本糖尿病療養指導士。定期的にヨガ講師としての活動も行っている。

保科 琴美

野菜を冷凍すると栄養価が下がるって本当?

多くの野菜は冷凍しても、栄養素が抜けることはほとんどありません。

しかし、冷凍に向かない食材を冷凍した場合や、適切な下処理ができていない場合は、栄養素が損なわれることがあります。同様に、冷凍に向いた野菜や、適した下処理を施した野菜は、生野菜より栄養価が高くなる場合があります。

ここでは、冷凍野菜の栄養価の変化に心配が少ない理由や、冷凍で栄養価が低下してしまうケース、栄養素が損なわれやすい野菜について解説します。

野菜のデータ

冷凍技術の向上で市販の冷凍野菜も心配なし

最近は冷凍技術が向上しているため、冷凍しても栄養素が損なわれにくくなっています。

とくに、市販の冷凍野菜は自宅で冷凍するのと比べて栄養価が高い傾向にあります。市販のものは、瞬間冷凍(急速冷凍)など、品質を落とさないための高い冷凍技術を用いるため、家庭で冷凍するよりも高品質を維持できるのです。

加えて、市販されている冷凍野菜は、旬の時期に収穫した野菜を使用していることが多く、野菜そのものの栄養価が豊富である場合が多いです。場合によっては、旬を過ぎた生野菜よりも、冷凍野菜のほうが高い栄養価を含んでいることもあります。

冷凍野菜に栄養価が低いという印象がある方は、昔の冷凍野菜のイメージが残ってしまっているのかもしれません。現在ほど技術が進んでいない旧来の冷凍技術では、栄養価やうま味が損なわれたり、味が落ちてしまったりした商品もありました。しかし、前述の通り、現在は技術が進歩して栄養価やおいしさをキープできている冷凍野菜がほとんどです。

冷凍に向いていない野菜は栄養素が抜けやすい

レタス・トマト・大根などの、水分が多い野菜や繊維質の多い野菜は栄養素が抜けやすく、冷凍に向いていません。冷凍に向いていない野菜も、冷凍自体は可能ですが、冷凍することで栄養素が抜けたり、味や食感が損なわれたりします。

野菜に水分が多いと、冷凍したときに大きな氷の結晶ができやすく、解凍したときに食感が損なわれたり、味が落ちたりします。繊維質の野菜は、冷凍と解凍によって野菜の中に空洞ができやすい性質があり、こちらも食感や味を損ねる要因になります。

ただし、市販の冷凍野菜であれば高い冷凍技術で加工されているため、冷凍に向いていない野菜でも品質が維持され、おいしく食べることができます。また、家庭でも、調理方法を工夫することで栄養素の流出を抑えられます。

なお、冷凍によって栄養価が高まる冷凍向きの野菜もあります。具体的には、にんじん、かぼちゃ、きのこ類など、水分量が少なく繊維質ではない野菜や、壊れづらい栄養素が含まれている野菜です。

生野菜と冷凍野菜の栄養価を比較

ここでは、生野菜と冷凍野菜の栄養価を比較します。以下の表に、ほうれん草、かぼちゃ、にんじん、えだまめ、グリンピース、スイートコーンの栄養価[1]をまとめました。

ほうれん草

可食部100g当たり 生(ゆで) 冷凍
エネルギー(kcal) 23 22
水分(g) 91.5 92.2
たんぱく質(g) 2.6 2.9
脂質(g) 0.5 0.3
炭水化物(g) 4.0 3.4

かぼちゃ

可食部100g当たり 生(ゆで) 冷凍
エネルギー(kcal) 75 75
水分(g) 75.1 78.1
たんぱく質(g) 1.6 2.2
脂質(g) 0.3 0.3
炭水化物(g) 21.3 18.5

にんじん

可食部100g当たり 生(ゆで) 冷凍
エネルギー(kcal) 28 30
水分(g) 90.0 90.2
たんぱく質(g) 0.7 0.8
脂質(g) 0.1 0.2
炭水化物(g) 8.5 8.2

えだまめ

可食部100g当たり 生(ゆで) 冷凍
エネルギー(kcal) 118 143
水分(g) 72.1 67.1
たんぱく質(g) 11.5 13.0
脂質(g) 6.1 7.6
炭水化物(g) 8.9 10.6

グリンピース

可食部100g当たり 生(ゆで) 冷凍
エネルギー(kcal) 99 80
水分(g) 72.2 75.7
たんぱく質(g) 8.3 5.8
脂質(g) 0.2 0.7
炭水化物(g) 18.5 17.1

スイートコーン

可食部100g当たり 生(ゆで) 冷凍
エネルギー(kcal) 95 91
水分(g) 75.4 75.5
たんぱく質(g) 3.5 2.9
脂質(g) 1.7 1.3
炭水化物(g) 18.6 19.8

生(ゆで)の野菜と、冷凍の野菜とでは、エネルギー・水分・たんぱく質・脂質・炭水化物のそれぞれの量に大きな変化はありませんでした。上手に冷凍すれば、野菜本来の栄養素は損なわれないことがわかります。

冷凍によって栄養価が高まる野菜の例を紹介します。

にんじん
にんじんに多く含まれるβ-カロテンでは、生(ゆで)だと7,200μg(マイクログラム/可食部100g当たり)であるのに対し、冷凍すると9,100μgと、冷凍した方がアップするとの報告もあります[1]
きのこ類
きのこは冷凍することで、グアニル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸が生キノコの約3倍程度まで高まるほか、人が食べたときに感じるうまみもアップします。

野菜の栄養素を逃さない上手な冷凍方法

それぞれの野菜に合った下処理をすると、おいしさや栄養素をキープしやすくなります。例えば、にんじんなどの筋っぽい食感のある野菜は細かく千切りに、灰汁(あく)が気になるほうれん草はゆでて水にさらしてから冷凍するなどの方法があります。

続いて紹介する3つの冷凍のポイントを押さえると、栄養素を逃したり、品質を損ねたりしにくくなります。どの野菜にも当てはまるので、冷凍保存するときは意識してみてください。

水気をしっかり拭き取る

野菜を洗ったときに残った水気や、カットしたときに野菜から出た水気はしっかり拭き取りましょう。水分が残っていると、凍るまでに時間がかかったり霜がついたりして、味や食感が悪くなります。

さらに、水分が残っていると、雑菌が繁殖する可能性もあります。水分を拭きとるときは、布巾ではなくキッチンペーパーなど清潔なものを使用するようにしましょう。

なお、きのこ類は洗わずそのまま冷凍した方が、栄養素が損なわれません。たまねぎやとうもろこしなど、皮がついたまま冷凍できる野菜もあります。

小分けや平たくして冷却効率を上げる

小分けや平たくした状態で冷凍することで冷却効率が上がり、早く凍るので、栄養素が抜けにくくなります。反対に、大きい塊や、切った野菜を重ねて厚い状態のまま冷凍すると、完全に凍るまでに時間がかかります。

小分けにしておくと、料理の時に必要な分だけ使えるため、使わない分を一緒に解凍してしまうことを防ぐ効果もあります。再冷凍は品質が低下するおそれがあるので、極力避けましょう。

また、冷凍用保存用袋に入れるときは空気を抜きましょう。食材は、空気に触れていると酸化して、傷みやすくなります。冷凍用保存袋に入れるときは、なるべく隙間ができないようにし、空気を押し出して抜くように心がけましょう。

冷凍用保存袋に入った野菜

冷凍庫に入れてからなるべく早く凍らせる

ここまでにも触れましたが、冷凍するまでに時間がかかるほど、栄養素やおいしさが損なわれます。冷凍に時間がかかると、大きな氷結晶が発生しやすくなり、食品の組織や細胞を壊してしまうからです。そのため、なるべく早く凍らせる工夫が必要です。

早く凍らせるためには、冷凍する前に粗熱を取る、熱伝導の良いバットに食材を並べるなどの方法が有効です。

まとめ

野菜を冷凍しても、栄養価が落ちる心配はありません。とくに市販の冷凍野菜は、技術の向上により栄養素が損なわれにくく、豊富な栄養価を保っています。家庭で野菜を冷凍しても、栄養素が抜けることは少ないと考えられます。

それぞれの野菜に合った下処理をして、上手に冷凍することで、栄養素やおいしさがより損なわれにくくなります。ぜひ、本記事で紹介した冷凍のコツを活用してみてください。

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