医師監修:部屋の乾燥対策9選!寝るときに手軽にできる対策も
この記事では、簡単にできる部屋の乾燥対策や、部屋が乾燥することのリスクについてご紹介します。
監修者
- 井上 信明(いのうえ のぶあき)
- 医師/公衆衛生学修士(MPH)
日本の医学部を卒業後、アメリカとオーストラリアで医師として7年半勤務。
目次 [CLOSE]
部屋が乾燥する原因は季節によって異なる!
部屋の乾燥の原因は、季節によって異なります。
そもそも、空気の乾燥は、空気の温度と空気中に含まれる水分量から影響を受けています。温かい空気は水分を多く含むことができ、冷たい空気は水分をあまり含むことができません。そのため、暑いと水分量の多いジメジメとした空気になりやすく、寒いと乾燥した空気になりやすくなります。
春から夏に部屋が乾燥する原因は、昼夜の寒暖差や冷房の長時間使用です。とくに、エアコンの冷房は部屋の空気を取り込んで冷やすため、乾燥の原因になりやすいです。エアコン内部で空気が急激に冷やされると、空気に含みきれなくなった水分は水滴となります。これがドレンホースを伝って室外に排水されるため、次第に部屋の空気に含まれる水分量は減り、空気は乾燥しやすくなります。
一方、秋から冬に部屋が乾燥する原因は、主に暖房の使用によるものです。冬は暖房を使う時間が増えるため、温められた空気は水分を多く含むことができるようになります。しかし、実際に空気中に含まれる水分量は変わりません。そのため、相対的に湿度が下がり、空気が乾燥しているように感じやすくなります。
簡単にできる部屋の乾燥対策9選!
室内の湿度はちょっとした工夫で適正に保つことができます。
ここからは、すぐに実践できる湿度対策の方法について紹介します。
室内でお湯を沸かす
やかんや鍋でお湯を沸かし、水蒸気を発生させると、部屋の空気中に含まれる水分量を増やせます。
ただし、お湯が冷めてしまうと水蒸気の発生量が少なくなり、効果が薄れるので、都度お湯を沸騰させる手間がかかります。お湯を沸かす際は、放置して空焚きしないように注意しましょう。
濡れたタオルを吊るす
水分を含んだタオルを部屋に干すだけでも、部屋の湿度を上げる効果が期待できます。その際、バスタオルなど、なるべく大きなタオルを使用すると、水分を多く含むことができるため効果的です。
また、洗濯物を部屋干しにすることでも加湿効果があります。サーキュレーターで空気を循環させると、より効率的に部屋全体を加湿できます。
水を入れたグラスを置く
それほど広くない部屋であれば、水を入れたグラスを置くだけでも湿度を上げることができます。勉強やメイクのときなど、コップに水を入れて机に置いてみましょう。
さらに、吸水性が高いコーヒーフィルターやキッチンペーパーを水に少しだけ浸るようにしてグラスに挿しておくと、水蒸気の拡散効果を高められます。
霧吹きで湿度を上げる
霧吹きをカーテンやラグが少し湿る程度に吹きかけると、繊維にしみ込んだ水分が少しずつ蒸発し、部屋全体の湿度を上げられます。
ただし、1回の効果はそこまで持続しないので、1日に数回行うようにしましょう。また、あまり頻繁に行うとカビが発生する原因になりますので、適度な頻度で行うことが大切です。
入浴後の浴室のドアを開ける
浴室にお湯をためた状態でドアを開けておくと、部屋全体に蒸気が行きわたります。旅行先で加湿器がない場合にも有効な手段です。
ただし、水蒸気が非常に多く発生するため、浴室や居室のカビ発生の原因になることもあります。浴室のドアは開けっ放しにせず、部屋の湿度が上がったら閉めることをおすすめします。
なお、小さいお子さんのいるご家庭では、子どもだけで浴室に入れる状態にしていると、子どもが浴槽で溺れてしまうなど、大きな事故につながる危険性が高まります。お子さんのいるご家庭では、この方法は避けましょう。
加湿効果のあるアロマディフューザーを使用する
最近は、加湿効果のあるアロマディフューザーも販売されています。アロマでリラックス効果を高めながら、加湿もできるので一石二鳥です。
ただし、一般的なアロマディフューザーには加湿効果がないものも多くあります。加湿目的の場合には、加湿機能付きのアロマディフューザーを購入するようにしましょう。
床を水拭きする
床を水拭きすることで、水分を含んだ床の表面から水蒸気が発生し、部屋の湿度を上げることができます。部屋を掃除しながら加湿もできるので、一石二鳥です。
ただし、フローリングの素材によっては、水拭きができない場合もあります。事前に水拭きできる素材か確認をしましょう。
また、水分が多いと床材の傷みが早くなってしまう可能性もありますので、雑巾を固く絞ってから床拭きをするようにしましょう。
観葉植物を飾る
植物は、葉から空気中へ水蒸気を拡散する、蒸散をしています。このような葉からの水分蒸発は、部屋の加湿効果につながります。
また、植物が行う光合成には、新鮮な酸素を発生させる働きもあるため、観葉植物は加湿器と空気清浄機の機能を兼ね備えているといえます。
エアコンではなく石油・ガスストーブを使う
石油・ガスストーブは、燃焼する際に二酸化炭素と水を発生させるため、エアコンに比べて部屋が乾燥しにくくなります。
ただし、定期的に換気をしないと、一酸化炭素中毒を引き起こす可能性があります。また、適切に使用しないと火災の原因となる可能性があるため、取り扱いには十分注意しましょう。
寝るときの部屋の乾燥対策
寝るときに部屋の乾燥対策を怠ると、喉が乾燥したり、ウイルスが増殖したりする可能性があります。とくに、夜間にエアコンや暖房を使用している冬の季節は、乾燥対策が必要不可欠です。
ここでは、寝るときに手軽にできる乾燥対策を紹介します。
マスクをする
マスクは、寝ている間に喉の乾燥を防ぐ優れたアイテムです。自分の呼吸で生じた湿気がマスク内にこもり、その湿った空気を吸うことで、鼻や喉の乾燥を防ぎます。
乾燥対策には、布製や綿製、シルクタイプのマスクがおすすめです。これらの素材は肌に優しく、通気性も良いので、就寝中の不快感を軽減できます。
飲み物を飲む
寝る前に水や白湯を飲むことも、乾燥対策として有効です。体は、寝ている間に発汗して水分を失いますが、事前に水分を補給しておくことで、体内の水分バランスを保つことができます。
とくに、白湯は体を内側から温められるため、冬場の冷え対策と乾燥対策にぴったりです。寝る直前に一杯の白湯を飲む習慣をつけることで、体調管理にも役立つでしょう。
鼻呼吸をする
寝ている間の喉の乾燥を防ぐには、睡眠中も鼻で呼吸し続けることが重要です。口呼吸は、鼻呼吸よりも喉が乾燥しやすくなります。
もし、朝起きた時にいつも喉が乾燥しているようであれば、口呼吸になっている可能性があります。そのような場合は、鼻呼吸を促す専用グッズを試してみるのも良いでしょう。
ただし、慢性鼻炎や顎の形が睡眠時の口呼吸の原因となっていることもあります。なかなか改善しないときには、耳鼻咽喉科など専門医を受診して相談することもご検討ください。
部屋の乾燥対策をする際の注意点
部屋の乾燥対策を行う際には、適切な湿度を保つだけでなく、過度な加湿によるトラブルを防ぐことも重要です。
以下では、加湿時に注意すべきポイントを紹介します。
加湿と換気をセットで行う
加湿を行う際には、定期的に換気を行い、湿気がこもらないようにすることが大切です。室内の湿度が上がりすぎると、結露が発生し、建物の劣化やカビが発生する原因ともなります。
なお、窓や壁の結露は室内外の温度差が大きくなることでも生じやすくなります。定期的な換気をすることで、室内外の温度差拡大や室内の湿度上昇も抑えられますので、ぜひ意識して換気を心がけましょう。
適正な湿度を保つ
室内の理想的な湿度は、40〜60%です[1]。湿度が40%を下回ると、喉を痛めたり、静電気が発生したりする原因になります。
反対に、湿度が60%を超えるとカビやダニが発生しやすくなり、アレルギーの原因となる可能性があります。
そのため、部屋の湿度は40~60%を保つようにしましょう。
部屋の乾燥によるリスク
部屋が乾燥しすぎると健康に影響を与える可能性があります。
ここからは、乾燥によって起こりうるリスクについて紹介します。
乾燥肌の進行
部屋が乾燥することで、肌の水分が奪われてしまいます。これにより、皮膚表面のバリアが奪われてしまい、手のカサつきをはじめ、かゆみや湿疹などの原因となってしまうのです。
肌の乾燥を防ぐためには、保湿クリームを使用して日頃からケアを行うことが大切です。とくに、熱いお湯につかると、乾燥が進みやすいことが知られています。入浴直後は肌が湿っていますので、お風呂からあがったらすぐにスキンケアを行いましょう。
スキンケア用品で保湿したあとは、部屋の湿度にも気を遣うとさらに効果的です。
ドライアイ
部屋の空気が乾燥すると、目が乾燥するドライアイの原因となります。
ドライアイをそのままにすると、視力の低下や角膜の損傷などを発症する可能性もあります。
目の乾燥を感じたら、人工涙液などの目薬をさして対策しましょう。コンタクトを着けている方は、コンタクトを外すことで目の乾燥を軽減できます。
脱水
乾燥によって、体内の水分が奪われることで、脱水をはじめ体の不調につながることもあります。
汗をかかない冬場は、水分補給をおろそかにしてしまいがちです。喉の渇きを感じていないときでも、普段からこまめな水分補給を心がけましょう。
また、人間は食事からも一定量の水分を摂取しています。食事は抜かずに、しっかり食べることが大切です。
火災の危険性
冬は暖房器具を使用する機会が多くなりますが、空気が乾燥するとものが燃えやすくなり、火の回りも早くなります。
電化製品のコンセントにほこりがたまっていると、何らかの原因で発生した火花がほこりに着火し、火事につながる可能性もあります。
そのため、乾燥対策と同時に、部屋の火災対策も行いましょう。
静電気の発生
通常、衣服同士がこすれることなどで生じ、体内にたまった静電気は、空気中の水分を通じて放電されます。空気中の水分が少なくなる冬場は、静電気が体内に蓄積されやすくなり、その状態で電気を通しやすいものに触れると一気に放電されます。
湿度が低くなるほど静電気は溜まりやすくなるため、部屋の湿度は低くなりすぎないように注意しましょう。
風邪・インフルエンザウイルスの蔓延
部屋が乾燥すると、空気中の水分が少なくなり、ウイルスが浮遊しやすくなります。
また、低温で乾燥した環境を好むウイルスは、環境内で長く生存し、かつ増殖しやすくなります。そのため、風邪やインフルエンザにかかりやすくなってしまうのです。
さらに、鼻や喉の粘膜は湿った状態にあることでウイルスを付着させ、ウイルスの侵入を防御していますが、空気の乾燥に伴って粘膜も乾燥すると、粘膜の防御力が弱まります。その結果、風邪やインフルエンザなどの感染症が起こりやすくなるのです。
寒い時期は体が冷えやすく、体温が下がると免疫力も低下しやすくなります。感染症予防のためにも、部屋の乾燥対策を講じながら、体を冷やさないようにすることが大切です。
まとめ
部屋の乾燥は、お湯を沸かしたり、室内で洗濯物を干したりすることで対策ができます。
部屋が乾燥すると、健康に影響を及ぼすだけではなく、火事になるリスクもあります。今回ご紹介した方法で、適切な湿度を保つようにしましょう。
- 東京都保健医療局:
健康・快適居住環境の指針
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