エアコンとクーラーの違いとは？仕組みと機能を簡単に解説

エアコンとクーラーはどちらも部屋を涼しくする機能を持ちますが、それぞれ別の家電です。しかし、エアコンとクーラーの識別方法が分からず、「何が違うの？」「仕組みに違いはある？」といった疑問を抱く方も多いでしょう。

そこで、今回はエアコンとクーラーの違いやそれぞれのメリット・デメリット、冷房・暖房の仕組みについて解説します。

エアコンとクーラーの違いとは？

エアコンとクーラーの違いは、以下のとおりです。

• ▼エアコン：冷房・暖房・除湿ができる多機能な家電
• ▼クーラー：冷房機能のみを持つシンプルな家電

エアコンが冷房と暖房、除湿の機能を兼ね備えている家電なのに対し、クーラーは冷房機能のみが備えられています。以下からはそれぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。

エアコン：冷房・暖房・除湿ができる多機能な家電

エアコンは、「エアーコンディショナー：air conditioner」の略です。主に冷房・暖房・除湿の3つの機能があり、室内を涼しくするだけでなく、温度や湿度の調整が可能です。製品によっては空気清浄機能が搭載されたモデルもあり、幅広い機能をもった家電といえます。

エアコンが冷房と暖房の両方の働きが可能なのは、「ヒートポンプ」という仕組みで動くためです。ヒートポンプは、冷媒ガス（熱を運搬するガス）を膨張させたり、圧縮させたりすることで熱を吸収・生成します。この仕組みで作り出された冷気・暖気がエアコンの室内機から放出されることで、室内の温度が変化します。

ヒートポンプの仕組みは、後述の「▼エアコンの冷房と暖房の仕組み」で詳しく解説します。

クーラー：冷房機能のみを持つシンプルな家電

クーラーは英語で「cooler」と表記し、日本では冷房機能だけを備えた家電を指す言葉です。エアコンが誕生する前の1952年から本格的な製造が始まり、「ルームクーラー」という名称で普及していきました。

1960年から冷暖房両用のエアコンが販売されると、エアコンを使用する家庭が増えていき、1965年には「ルームクーラー」の名称も「ルームエアコン」へ変更され、1970年代になって現在のエアコンが普及しました。

世の中の需要がエアコンへとシフトしていくと同時に、クーラーの生産も減少し、現在ではほとんど作られていません。今でもエアコンを「クーラー」と呼ぶ人がいるのは、クーラーが主流であった時代の名残といえます。

エアコンのメリット・デメリット

エアコンはさまざまな能力を兼ね備えている一方で、デメリットもあります。ここでは、エアコンのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

メリット：室温を一定に保ちやすく、稼働音が静か

現在では、「インバーター」という技術を搭載したエアコンが主流です。インバーターを内蔵したエアコンは、コンプレッサーの回転数を調整することができ、室温を一定に保ちやすい点が特徴です。結果的に、消費電力を抑えやすくコストダウンにもつながります。

そのほか、稼働音が静かであることもエアコンが普及した理由の一つです。クーラーは、ファンを作動させて空気を冷却するため稼働音が大きくなるのに対し、エアコンはコンプレッサーの回転数を調整する静音設計がされているため運転時も静かです。

デメリット：エアコン内部は掃除しづらい

エアコンは、多くの機能を備えていることから複雑な設計であることが多いです。それにより、ホコリや油汚れなどが付着しても、エアコンの内部掃除が難しく、運転効率が低下したりカビが増殖したりすることが考えられます。

多くのエアコンメーカーでは、1年に1回の内部掃除を推奨しています。しかし、「くらひろ by TEPCO」が独自に実施したアンケート調査では、自宅のエアコン内部の掃除頻度が「2年に1回程度（5.2％）」「それ（2年に1回）以下の程度（13.9％）」「一度も掃除をしたことがない（39.4％）」と、1年に1回以下と回答した人が全体の58.5％を占めました。

先述したとおり、エアコン内部は複雑で自分では内部掃除がしづらく、エアコンメーカーは、自分で掃除をしないように推奨しています。これは、掃除の仕方を誤ると発火や破損の危険性があるためです。

そのため、エアコン内部の掃除は専門業者への依頼がおすすめです。

クーラーのメリット・デメリット

クーラーは冷房機能しか備わっていないため、エアコンよりも劣ると思われることがありますが、使用ケースによってはエアコンよりもメリットが多いことも考えられます。ここでは、クーラーのメリット・デメリットを解説します。

メリット：価格が安く、コンパクト

クーラーはエアコンとは違い、冷房機能のみの家電のため、エアコンよりも価格が安く、コンパクトであることが特徴です。そのため、冷房機能しか求めていない人や、部屋を圧迫したくない人には安価で購入できるクーラーがぴったりというケースも考えられます。

また、室外機もエアコンに比べて小さいため、室外機を置くスペースが限られている場合でも設置できます。

デメリット：機能が限定的

クーラーは先述したとおり、冷房機能しか備わっていないほとんどのため、1つの家電で多くの機能を求めている人には向かない家電といえます。

しかし、他に暖房機能が付いている家電や、除湿機などを所有しており、冷房機能のみあれば良いという場合にはクーラーという選択肢も考えられます。

エアコンの冷房・暖房の仕組み

ここからは、冷風と温風の両方を送ることができる、ヒートポンプ式のエアコンの仕組みについて解説していきます。

冷房：液体を蒸発させて熱を奪う

冷房は、室内機で部屋の空気中にある熱を取り込んで室外機へ運び、屋外へ放出することで部屋を涼しくします。

冷房に使用される主な部品とその役割は以下のとおりです。

熱交換器	高温から低温へ移る熱の性質を利用して、熱を移動させる部品
ファン	空気を取り込んだり送り出したりするために、風を起こす部品
冷媒ガス	室外機と室内機をつなぐパイプを循環して熱を運ぶガス

部屋の空気が室内機の熱交換器に取り込まれると、空気中の熱が冷媒ガスに移動し、空気は冷たくなります。冷えた空気がファンによって再び部屋に放出されることで、エアコンは部屋を冷やします。

その後、熱を持った冷媒ガスは室外機に移動し、熱交換器で冷却されます。このとき、熱は室外機から屋外に放出され、冷却された冷媒ガスは再びパイプを伝って室内機に戻ります。冷房は、この一連の流れによって機能しています。

暖房：外気から熱をもらい暖める

暖房は圧力を加えることで冷媒ガスを高温にして、部屋を暖める仕組みです。

暖房では、部屋の空気を室内機の熱交換器が取り込み、圧縮されて高温になった冷媒ガスの熱を伝えることで温めます。温められた空気をファンが部屋に放出することで、部屋を暖かくすることができます。

一方、熱を奪われて冷えた冷媒ガスは、室外機で減圧されてさらに低温になることで、室外機の熱交換器で外気の熱を取り込みます。これを圧縮することで冷媒ガスは再び高温になり、パイプを伝って室内機に戻ります。

エアコンは、冷媒ガスを冷房とは逆の方法で利用することで暖房として機能し、部屋を暖めています。

まとめ

エアコンとクーラーの違いは、エアコンは冷房と暖房、除湿などの機能を備えていることに対し、クーラーは冷房機能のみを持つ家電という点です。

クーラーは、エアコンが誕生する前に広く普及していました。その背景から、現在でもエアコンをクーラーと呼ぶ人もいますが、現在使用されている冷房はエアコンが主流です。