
給湯器の設定温度は+10℃が推奨?本当に適切な温度やガス代との関係性も解説
「給湯器の設定温度が40℃以下だと、故障の原因になる」という噂を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。給湯器の温度は水栓によって、調整することが推奨されています。
今回は、給湯器で推奨される設定温度や、給湯器の設定温度に関わる水栓の種類と仕組みを解説します。給湯器の設定温度を調整する以外のやり方でガス代を節約する方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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- くらひろ編集部
- 東京電力エナジーパートナー株式会社
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目次
給湯器の設定温度は50℃前後が推奨
給湯器の設定温度は、水栓の種類により異なります。お湯と水を混合して一つの吐水口から出す仕組みの「2ハンドル混合栓」「シングルレバー混合栓」「サーモスタット混合栓」で推奨される設定温度は、50~60℃です。これらは一般家庭で普及している蛇口です。
一方、設定した温度のお湯がそのまま出る仕組みの「単水栓」は、40℃前後が推奨されます。単水栓は学校や公園の水場などでよく見られます。
以下は、各水栓の種類や推奨温度と仕組み、主な設置場所をまとめたものです。
水栓の種類 | 推奨温度と仕組み | 主な設置場所 |
---|---|---|
▼単水栓 |
|
屋外・トイレ手洗い・洗濯機用 |
▼2ハンドル混合栓 |
|
昔のキッチン・洗面・浴室 |
▼シングルレバー混合栓 |
|
最近のキッチン・洗面 |
▼サーモスタット混合栓 |
|
最近の浴室シャワー |
- 単水栓
-
- 推奨温度:40℃前後
- 仕組み:蛇口をひねると給湯器で設定した温度のお湯が出る。水を出すときは給湯器をオフにする。
- 主な設置場所:屋外・トイレ手洗い・洗濯機用
- 2ハンドル混合栓
-
- 推奨温度:50〜60℃
- 仕組み:ハンドルは2つでお湯と水を混ぜて温度調整。
- 主な設置場所:昔のキッチン・洗面・浴室
- シングルレバー混合栓
-
- 推奨温度:50〜60℃
- 仕組み:レバーを左右に動かして手動で温度調整。
- 主な設置場所:最近のキッチン・洗面
- サーモスタット混合栓
-
- 推奨温度:50〜60℃
- 仕組み:給湯器の設定温度のお湯に水を自動で足して、手元のハンドルで設定した温度に調整。
- 主な設置場所:最近の浴室シャワー
近年、省エネ性能に優れた給湯器などさまざまな種類が登場していますが、給湯器の種類で推奨設定温度は変わりません。どのタイプの給湯器であっても、推奨される温度は使っている水栓の種類によって決まります。
例えば、水栓がサーモスタット混合栓であれば、通常のガス給湯器でもエコキュートなどの省エネ給湯器でも、推奨される設定温度は50~60℃です。
なお、「くらひろ by TEPCO」が独自に実施したアンケート調査によると、給湯器の設定温度は36~40℃までにしている方が最も多く、43℃までに設定している方が全体の80%以上を占めます。
- 調査主体:くらひろ by TEPCO(東京電力エナジーパートナー株式会社)
- 調査期間:2025年3月7日~3月9日
- 有効回答数:669(給湯器所持者のみ)
多くのご家庭で、給湯器を実際に使う温度に設定していることが分かります。しかし、一般家庭で普及しているシングルレバー混合栓・サーモスタット混合栓・2ハンドル混合栓をご使用の場合、推奨温度より低い設定といえます。
給湯器の設定温度を上げるとガス代が高くなる?
通常、給湯器の設定温度を上げるとガス代は高くなります。しかし、設定温度を上げることでガス代が高くなるのは、単水栓です。最近の主流である混合水栓は、設定温度を上げることで必ずしもガス代が高くなるとは限りません。
- 単水栓(お湯のみを出す水栓)
設定温度を上げるとガス代が高くなり、下げると安くなります。 - 混合水栓(水とお湯を混ぜて温度調整する水栓)
設定温度を上げてもお湯の使用量が減るため、ガス代への影響は少ないです。
混合水栓は、お湯に水を混ぜて吐水するため、お湯の使用量が減りガス代の節約になる、と考えられそうですが、お湯のみを使用する単水栓と比較してもガス代にそれほど大きな差はありません。
たとえば、40℃のシャワーを10L浴びる場合のガス代はどれも変わらず約5.05円となっています(詳細な条件は「▼計算に使用した式と諸条件」に示しています)。
例:40℃のシャワーを10L浴びる場合
- 【単水栓】設定温度40℃:ガス代5.05円
-
- 40℃に設定した単水栓は、40℃のお湯を10L吐水する。
- 給湯器で40℃のお湯を作るため、蛇口まで届く間に温度は下がる。
- 【混合栓】設定温度40℃:ガス代5.05円
-
- 40℃に設定した2ハンドル混合栓やシングルレバー混合栓は、40℃のお湯を10L吐水する。
- 給湯器で40℃のお湯を作るため、蛇口まで届く間に温度は下がる。
- サーモスタット混合栓では必ず水が混ざるため、さらに温度が下がる。
- 【混合栓】設定温度50℃:ガス代5.05円
-
- 50℃のお湯約6.97Lに、17℃の水3.03Lを混ぜて、40℃のお湯を吐水する。
- 混合水栓ではキッチンや風呂場の水栓で40℃のお湯を作るため、ほぼ40℃のお湯が出てくる。
- 【混合栓】設定温度60℃:ガス代5.05円
-
- 60℃のお湯約5.35Lに、17℃の水を約4.65L混ぜて、40℃のお湯を吐水する。
- 混合水栓ではキッチンや風呂場の水栓で40℃のお湯を作るため、ほぼ40℃のお湯が出てくる。
計算に使用した式と諸条件
- 計算に使用した式
-
- 公式1:ガス代=お湯の質量×上昇温度÷(発熱量×熱効率)×ガス料金単価
- 公式2(熱量保存の法則):出てくるお湯の温度=(水量×水の温度+湯量×湯の温度)÷(水量+湯量)
- 計算で想定した条件
-
- 最終的なお湯の総量:10L
- 水道の水温:17℃[1]
- 最終的なお湯の温度:40℃
- 発熱量:都市ガス:10,750kcal/m3(45MJ/m3[2]より換算)
- 熱効率:給湯機能:80%(一般的な機種の数値として家庭)
- ガス料金単価:189円/m3(都市ガス※1)
- 設定温度40℃:必要なお湯の質量10L、上昇温度40-17=23℃
- 設定温度50℃:必要なお湯の質量6.97L、上昇温度50-17=33℃
- 設定温度60℃:必要なお湯の質量5.35L、上昇温度60-17=43℃
※1:1か月に25m3使用する家庭での1m3当たりの単価(2025年9月検針の東京地区一般契約料金での価格、基本料金・消費税込み)[3]
なお、この比較はあくまでも計算上の結果です。実際の使用シーンでは、希望の温度になるまで水を流し続けることがあるため、調整に時間がかかるシングルレバー混合栓や2ハンドル混合栓は、水道代が上がる傾向があります。
また、給湯器の設定温度を実際に出したいお湯の温度と同じ、またはそれより低く設定すると、目標温度に達するまでに時間がかかったり、十分な温度に届かなかったりします。どの種類の水栓でも推奨温度で設定することで、快適にお湯を使えます。
設定温度が40℃以下でも壊れはしない
「設定温度を40℃以下に設定すると、サーモスタット混合栓が壊れやすくなる」という話を聞いたことがある方も多いと思いますが、この話は根拠が薄いです。
ただし、給湯器の設定温度とハンドル(リモコン)の設定温度の差が少ないと、わずかな水で温度調整することになり、一部のパーツへの負担が大きくなる、ともいわれています。
給湯器の設定温度に関わる水栓の種類と仕組み
給湯器の設定温度に関わる水栓には、以下の種類があります。
ここでは、水栓の種類と仕組みを解説します。
単水栓
蛇口をひねるとお湯・水が出る、シンプルな構造をしているのが単水栓です。給湯器で設定した温度のお湯がそのまま出る仕組みで、お湯に水を混ぜていないのが特徴です。
2ハンドル混合栓
給湯器で設定した温度のお湯がそのまま出る仕組みは、単水栓と変わりません。しかし、お湯と水の2つのハンドルがあり、それぞれを回して湯量や温度を調整できます。
シングルレバー混合栓
レバーを上下させて吐水や止水を行い、左右に動かす位置で水とお湯の割合を調整するのが、シングルレバー混合栓です。レバー(ハンドル)が一つで、キッチンのシンクや洗面所でよく見られるタイプの水栓です。
サーモスタット混合栓
サーモスタット混合栓は、給湯器の設定温度のお湯に水を足して、手元のハンドルで設定した温度に調整し吐水します。多くのお風呂場に設置されており、近年の主流といえます。
自動で温度を調節する機能が付いている場合、2ハンドル混合栓を使って手動で行っていた調整を自動でしてくれます。給湯器と手元のハンドル(リモコン)の設定温度が同じだった場合、吐水温度は設定温度より少しぬるくなる点には注意が必要です。
左右にハンドルがついていることが多く、片方で温度設定をして、反対側のハンドルでシャワー・止水・カラン(蛇口の吐水口)の切り替えを行うのが一般的です。
給湯器の設定温度以外のガス代節約術
設定温度の調整以外で給湯器のガス代を節約するには、以下の方法が考えられます。
ここでは、ガス代の節約術について紹介します。
お湯(ガス)の使用量を減らす
低温で良い場合は水を使う、使わないときは止める、といった基本的なことを行うことでガス代は節約できます。
以下は生活の中で取り入れられる具体例です。
- 使わないときはシャワーを止める
- 湯船に溜めるお湯の量を減らして半身浴をする
- 食器を洗う前の浸け置きはお湯ではなく水にする
なお、「くらひろ by TEPCO」が独自に実施したアンケート調査によると、料理や洗い物にかかる水道光熱費節約のために「食器類はお湯を使わず水で洗う(20.3%)」「食洗器を使用(14.5%)」といった工夫をしていると回答しました。
ただし、「工夫していることはない」と答えた方も46.3%いました。とくに工夫していることがないかたは、前述の具体例を取り入れてみてはいかがでしょうか。
- 調査主体:くらひろ by TEPCO(東京電力エナジーパートナー株式会社)
- 調査期間:2025年3月7日~3月9日
- 有効回答数:669
湯船はフタをして保温する
湯船のフタを使って保温することで、追い焚きや足し湯の回数や時間を減らせます。追い焚きや足し湯でかかるガス代や水道代は数十円程度ですが、積み重なると、思った以上に費用がかさむ可能性もあります。なるべく使わなくて良い状態にすることで、節約につながります。
なお、アンケート調査によると、お風呂・シャワーにかかる水道光熱費節約のためにしていることのうち、「浴槽に入っていない時はフタをする」の回答が28.4%と最も多く、次いで「シャワーだけで済ます」が28.3%となっています。
- 調査主体:くらひろ by TEPCO(東京電力エナジーパートナー株式会社)
- 調査期間:2025年3月7日~3月9日
- 有効回答数:669
省エネタイプの給湯器を使う
光熱費の節約が期待できる省エネタイプの給湯器は、お湯を作るエネルギー(方法)別に以下の3つに分けられます。どれも導入時には一定のコストがかかるものの、長期的にみると光熱費を抑えられる傾向にあります。
- ガス系:エコジョーズ(省エネ型ガス給湯器)
- 電気系:エコキュート(ヒートポンプ式)
- ハイブリッド:ガス+電気を併用
光熱費を抑えたいときは、電気やガスの料金プランを見直すことも検討してみてください。自分のライフスタイルに合ったプランを選ぶことで、無理することなく節約できます。
まとめ
給湯器の設定温度は40℃以下でも基本的に問題はなく、壊れるという話には根拠が乏しいです。ただし、現代の主流といえる、「シングルレバー混合栓」「サーモスタット混合栓」の設定温度は50~60℃が推奨されており、この温度にすることで湯温が安定し水量も比較的少なくなるでしょう。
「くらひろ by TEPCO」が独自に実施した、水道光熱費節約に関するアンケート調査の結果を見ると、まだまだ家計改善の余地は残っている様子。今回ご紹介した節約術や、ガス契約のプラン見直しなども実施してみてはいかがでしょうか。
- 東京都水道局:
水道水の水温 - 東京瓦斯株式会社:
都市ガスの種類・熱量・圧力・成分 - 東京瓦斯株式会社:
ガス料金早見表(2025年2月検針分)[PDF]
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