医師監修:寝るときは暖房をつけるべき?快適な睡眠環境の作り方を紹介
寒い季節になると、寝るときに暖房をつける方も多いでしょう。しかし、エアコンなどの暖房をつけると部屋の湿度が下がるため、肌や喉が乾燥したり睡眠の質が低下したりするのではないかと不安になりますよね。
そこで今回は、暖房をつけて寝るときのポイントや注意点について詳しく解説します。
監修者
- 井上 信明(いのうえ のぶあき)
- 医師/公衆衛生学修士(MPH)
日本の医学部を卒業後、アメリカとオーストラリアで医師として7年半勤務。
目次 [CLOSE]
寝るときは暖房をつけて室温を20℃前後に保とう!
冬は空気が乾燥し、さらに暖房をつけることによって部屋の湿度が下がります。そのため、寝るときに暖房をつけても大丈夫なのか心配になる方もいるでしょう。
結論として、暖房をつけたまま寝ても問題はありません。ただし、暖房を一晩中つけっぱなしにすると、室温が上がりすぎたり、湿度の低下により喉や肌の乾燥の原因となったりするため、できるだけ避けてください。
寝るときに暖房をつける場合は、室温が20℃前後になるようにしましょう。着ている服や布団の厚みに合わせて、エアコンの設定温度は18〜22℃の間で調整するのがおすすめです。
なお、湿度が40%を下回ると、冬に流行するウイルスの増殖力や感染力が活発になるため、加湿器を併用するのがおすすめです。湿度を40〜60%に設定すると、ウイルスの増殖を抑えられます。
暖房をつけて寝るときのポイント
睡眠時に暖房をつけっぱなしにするのは、過度な室温上昇と湿度低下につながるため、あまりおすすめできません。
ここでは、就寝時に暖房をどのように扱うべきか、設定温度や時間、タイマーの使い方などについて詳しく解説します。
暖房をつける目安は室温20℃以下
暖房をつけるタイミングは、室温が20℃を下回ったときを目安にしましょう。室温が20℃を下回ると寒さを感じやすく、眠りにくくなるためです。
環境省も、省エネのために、冬の室温を20℃にすることを推奨[1]しています。室温が20℃に達していても寒いときは、エアコンの設定温度はそのままで、毛布や布団を複数枚使用するなど工夫しましょう。
床に布団を敷いて寝ている場合は、敷布団の上に毛布を1枚重ねると、床から伝わる冷気が遮断できるので、さらに暖かさを感じられます。
就寝の30分前から部屋を暖めておく
就寝する30分〜1時間前を目安に、エアコンのスイッチをオンにして部屋を暖めておきましょう。暖房をつけてから、部屋が十分に暖まるまでには時間がかかります。
部屋が冷えていると体がリラックスできず、目が冴えてしまったり、深い眠りにつきにくくなったりする可能性があります。部屋が十分に暖まるには時間がかかるため、寝る時間よりも早めに暖房をつけておくのがおすすめです。
なお、リラックスした状態で布団に入るには、入浴時間の調整も有効です。厚生労働省は、寝付きを良くするために、就寝の2~3時間前に入浴を済ませておくことを推奨しています[2]。
オフタイマーは2~3時間後がおすすめ
冬の就寝時は、暖房のオフタイマーを2〜3時間で設定するのがおすすめです。暖房を一晩中つけっぱなしにすると、部屋の室温が上がりすぎたり、湿度が下がりすぎたりするため、オフタイマーを使って自動で暖房が切れるように設定しましょう。
暖房が停止した後に肌寒さを感じて目が覚めてしまうのを防ぐには、保温性の高い寝具やパジャマを用意しておくと良いでしょう。フリース素材のパジャマや羽毛布団などを活用すれば、暖かさを保つのに役立ちます。
起床の1時間前にオンする
起きてすぐ布団から出られるようにするには、起床の1時間前にエアコンの電源がオンになるように設定しておくのがおすすめです。
人は朝になると体温が上昇して目覚めますが、室温が低いと体温が上がりにくく、すっきりと目覚められません。起きる前にあらかじめ快適な室温にしておけば、目が覚めやすくなります。
また、暖房を起床時間に合わせてオンにし、あらかじめ室温を上げておくようにすれば、「寒くて布団から出られない」という悩みも解消されるでしょう。
加湿器を併用する
暖房を使うと室温は快適になりますが、湿度が低下して空気が乾燥してしまいます。加湿器を使用して、湿度を40~60%に保ちましょう。
湿度が過度に下がると喉を痛めたり、ウイルスが増殖したりする原因にもつながるため、質の高い睡眠環境には、室内温度の管理とともに、加湿も必要不可欠です。
加湿器の適応面積はさまざまで、部屋全体を加湿できる製品もあれば、本体を設置した周辺に限られているものもあります。加湿量も製品によって異なるので、部屋の広さや環境にマッチした加湿器を選ぶことが大切です。
寝るときに暖房をつける場合の注意点
真冬など、暖房を切ると寒すぎて目が覚めてしまう場合は、つけっぱなしでも問題ありません。ただし、いくつか注意点があるため、対策をしておきましょう。
それぞれの注意点について詳しく解説します。
部屋が乾燥してしまう
冬の乾燥した空気は、暖房による影響でさらに乾燥が進み、室内の湿度が低下しやすくなります。暖房をつける際には、加湿機能付きのエアコンを利用するか、暖房と加湿器を併用するのがおすすめです。
湿度を40〜60%の間で設定し、暖房の風が直接あたらないよう風向を調整すると、乾燥を抑えられ、快適な睡眠環境が作れます。
部屋が暖まりすぎる
寝るときに暖房をつける場合は、18~22℃に設定しておきましょう。適切な設定温度にしておかないと、部屋が必要以上に暖かくなってしまったり、十分に暖まりきらなかったりする可能性があります。
とくに、乳幼児は体温調節機能が未発達で、まだ自分で体温をうまく調節することができません[3]。そのため、乳幼児がいる家庭では、部屋が暖まりすぎないように暖房の設定温度を適切に調整する必要があります。
電気代が高くなる
冬にエアコンの暖房を使用すると、夏の冷房よりも電気代は高くなる傾向にあります。
エアコンは、外気温と設定温度の差が大きいほど、必要な電力消費量が大きくなります。気温が下がる冬の夜はその差が特に大きく、暖房をつけっぱなしにすると、夏の夜に冷房をつけっぱなしにするよりも電気代は高くなりやすいでしょう。
火を使う暖房器具は火災の危険性がある
発火のおそれがある石油ストーブや、電気ストーブ、ファンヒーターなどの暖房器具は、寝るときに必ず消しましょう。寝ているときにこれらの暖房器具をつけたままだと、火災や事故につながる可能性があります。
また、室内で火を使う暖房器具を使い続けると、十分な換気ができない睡眠中は、毒性の高い一酸化炭素が発生する可能性もあります。安全のため、暖房器具のスイッチは消しておくのが安心です。
寒くて眠れない場合は、火を使わないエアコンの暖房やオイルヒーターを使用したり、寝具やパジャマを保温性の高いものに変えたりするなどの工夫をしましょう。
冬の睡眠でやってはいけないこと・NG行動
冬場の睡眠の質を向上させるためには、エアコンの設定温度や室内の湿度を意識することが大切です。
ここでは、冬の睡眠でやってはいけないNG行動について解説します。
直前の「食事」「飲酒」
就寝前に食事をとると、消化器管の動きが活発になるため、眠りにくくなってしまいます。食べたものの消化には、2〜3時間ほどかかるといわれているため、遅くとも就寝の3時間前には食事を済ませておきましょう。
どうしても食事の時間が遅くなってしまう場合は、胃腸の負担が少ない食べ物を選ぶか、摂取量を減らすなどの工夫をしてみてください。
就寝前の飲酒も控えるべき行動の一つです。アルコールは睡眠の導入を助ける効果がありますが、睡眠が浅くなったり、睡眠の質が低下したりすることもあるので注意が必要です。また、アルコールには利尿作用もあるため、夜中にトイレに起きる回数が増え、結果として睡眠の質が低下してしまう場合もあります。
個人差はありますが、350mL缶のビールに相当する14〜15gのアルコールを分解するには、おおよそ2〜3時間程度かかるといわれています。分解時間から逆算して就寝の3〜4時間前には、飲酒を終えるよう意識しましょう。
直前の「熱いお風呂」
寒い日は熱いお風呂に入って体を温めてから布団に入りたくなりますが、かえって眠りにくくなる場合があるため、避けた方が良いです。
人間は、体温が下がると眠気を感じやすくなるといわれています。寝る直前に熱いお風呂に入り体の芯まで温まってしまうと、体温が下がるまでに時間がかかり、結果的に寝付くまでに時間がかかる可能性があります。
睡眠前に入浴する際は、できるだけぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。
「厚着」「靴下着用」をしたままの就寝
極端に厚着のパジャマや、靴下を着用したままの状態は、快適な睡眠を遠ざけてしまうためNGです。厚着をすることで体温が上がりすぎてしまい、眠りにくくなります。
寝具の中で体を温めながらも、適度に熱が放散させることで、快適な睡眠が実現できます。厚着は熱の放散を妨げるので、快適な睡眠のためには避けた方が良いでしょう。
また、同様に、靴下を着用したままの就寝もNGです。足先から熱が放散することを妨げてしまい、暑苦しくなります。足先が冷えると眠れないという方は、前述した暖房の適正温度や湿度を意識して、快適な睡眠へと導く「環境づくり」にも目を向けてみてください。
まとめ
冬場は気温の低さや乾燥など、快適な睡眠を妨げる要因の多い季節です。暖房は部屋を暖めるのに効果的ですが、寝るときに暖房をつけっぱなしにするのは、過度な室温上昇や乾燥につながります。
適切な室温と湿度を意識しつつ、エアコンのタイマー機能や加湿器を活用することで快適な睡眠が実現できます。
- 環境省
エアコンの使い方について - 厚生労働省
快眠と生活習慣 - 東京都保健医療局
乳幼児や高齢者の居住環境
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