住宅ローンを組む前に知っておきたい基礎知識
執筆者
- 前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
- ファイナンシャルプランナー(CFP®)/整理収納アドバイザー1級
2006年11月よりライターとしてメルマガ、WEBコラムの執筆を手がける。2012年3月に2級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)を取得、2020年2月にCFP®認定者となる。得意分野は家計見直しとライフプラン。節約、家計、終活、介護、不動産、ペット保険などに関する記事を複数の大手メディアで執筆。株式会社アイ・イーシー『図解でわかる100シリーズ 人生100年時代の働き方とお金の知識100』通信教育テキスト(共著)なども手がける。
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住宅ローンの基礎知識
マイホームを購入したい人のほとんどが利用する住宅ローンですが、何もわからないまま金融機関の説明を聞くと、意味が分からず不安になってしまうかもしれません。そこで、実際にローンを組む前に、住宅ローンの基礎知識をしっかり理解しておきましょう。
住宅ローンには2つの返済方法がある
住宅ローンには「元利均等返済」と「元金均等返済」という2つの返済方法があります。具体的にどのような特徴があるのか見てみましょう。
「元利均等返済」は、元金と利息を合わせた毎月の返済額が一定になる返済方法です。返済が始まった頃は返済額の中で利息の占める割合が多くなり、返済が進むにつれて徐々に元金の割合が増えていきます。返済額が一定なので、返済計画は立てやすくなるでしょう。ただ返済当初は利息を多く払うことになるので、元金の減りは遅くなります。現在の住宅ローンはこの方法が主流となっています。
「元金均等返済」は、返済当初から最後まで元金の金額が一定で、返済が進むにつれて利息は少なくなっていきます。そのため元金の減りが早く、元利均等返済に比べて支払利息は少なくなります。とはいえ、返済当初は返済額が最も多くなるので、家計の負担は重くなるかもしれません。
住宅ローンの金利タイプは3種類
住宅ローンには3種類の金利タイプがあります。
1つ目は「固定金利型」です。借入時の金利がローンを完済するまで変わりません。借入後に市場金利が上昇しても金利が変わらないのでおトクに感じるでしょう。しかし、借入後に市場金利が下がったときは、借入時の高い金利のまま返済が続きます。とはいえ、借入時に返済額が確定するので、返済計画が立てやすいのが特徴です。
2つ目は「固定金利選択型」です。これは、2年、3年、5年、7年、10年、15年、20年など、一定期間の金利が固定されるタイプです。固定金利期間を終了後、変動金利や固定金利など新たな金利タイプを選び、変更後の返済額はその時点の金利で再計算されます。固定金利期間の返済額は確定されますが、その後の返済額は市場金利の状況によっては増える場合もあります。
3つ目は「変動金利型」です。この場合、金利は半年ごとに見直され、毎月の返済額は5年ごとに見直されます。見直しにより金利の変動があっても、5年間は返済額が変わりません。また、見直し後の返済額は、それまでの返済額から1.25倍までしか上げられないというルールが設けられています。
住宅ローンを組む際、金利が低く設定されていれば、変動金利を選ぶことで総返済額を減らすことができます。しかし、金利の見直しによる返済額の増加で家計に負担をかけたくない場合や、教育費など他に大きな出費がある場合は、返済額が確定する固定金利型、あるいは固定金利期間を長く設定した固定金利選択型を選ぶと家計への負担を抑えつつ、返済計画も立てやすくなるでしょう。
団体信用生命保険の役割を知っておこう
住宅ローンの返済中、契約者に万が一のことがあると、収入が激減してローンの返済ができなくなり、マイホームを手放さなくてはいけなくなるかもしれません。そんなリスクに備えて加入するのが「団体信用生命保険」です。
団体信用生命保険に加入しておくと、ローン契約者に万が一のことがあり返済ができなくなったときに、保険会社から支払われる保険金によって残りのローンの返済が行なわれます。これにより、残された家族はマイホームを手放すことなく、住み続けることができるのです。
多くの金融機関では団体信用生命保険への加入が住宅ローン契約の必須条件になっています。通常、団体信用生命保険の保険料は金利に上乗せとなります。
住宅ローンに必要なお金とは?
住宅ローンを検討するとき、注目する部分は物件価格でしょう。そのため、物件価格で住宅ローンを組めばよいと考えている人も少なくないのではないでしょうか。しかし、実際にはマイホームは物件価格だけでは購入できません。他にも必要な費用があります。また、購入前に準備しておきたいお金もあるのです。ここでは物件価格以外に必要な費用と、事前に準備しておきたいお金について解説します。
物件価格だけではマイホームは買えない
マイホームを購入する際、必要な費用は物件価格だけではありません。物件価格の3%~10%の諸費用が必要です。諸費用の目安は、新築物件は物件価格の3%~7%、中古物件は6%~10%となっています。ではここで、どのような諸費用が必要なのか主なものをご紹介しましょう。
まずは、マイホーム購入時に必要となる代表的な諸費用です。
- 登録免許税
- 取得した土地や建物を登記するときにかかる税金。
- 司法書士報酬
- 土地・建物の登記を司法書士に依頼した場合にかかる費用。
- 不動産取得税
- 土地や建物を取得したときにかかる税金。
- ローン手数料(融資手数料)
- ローン契約の事務手数料。
- ローン保証料
- 契約者の返済が滞ったとき、保証会社に返済を代行してもらうための契約に必要な手数料。ただし、保証会社に返済を代行してもらったとしても、ローン契約者は保証会社への返済が必要です。
- 印紙税
- 住宅ローン契約書や不動産売買契約書、建設工事請負契約書などを交わす際に必要な印紙代。
- 仲介手数料
- 不動産仲介会社を通してマイホームを取得する場合に必要な手数料。
- マイホーム購入後に必要となる費用
- マイホームを購入した後にも必要となる諸費用があります。例えば次のような費用です。
- 引越し費用、家具家電、カーテンなどを購入する費用
- 固定資産税、都市計画税
- 駐車場代
- マンションの場合は管理費、修繕積立金
- 火災保険料・地震保険料
- 設備などのリフォーム費用 など
住宅ローンを組む際は、物件価格だけでなく必要となる諸費用も確認しておきましょう。
ある程度の頭金を準備しよう
マイホームの購入を検討しているときに希望の物件がみつかると、すぐに購入したくなるかもしれません。その際、早く買いたいからと頭金を入れずに、物件価格の全額で住宅ローンを組む人もいます。でも、これで家計は大丈夫かどうか、返済していくことはできるのか、一度立ち止まって考えてみたほうがよいかもしれません。
住宅ローンの「頭金」には、ローンの負担を軽減し、総支払額を少なくするという重要な役割があります。ローンの借入額が多くなると、その分返済期間は長くなります。それに、ローン手数料などが「借入額×○%」という定率型になっている場合、諸費用の負担が増える点を忘れてはなりません。
頭金は家計の負担を減らしてくれるものなのです。負担を軽くするためにも、頭金を準備されることをおすすめします。また、金融機関によっては頭金を入れると金利が優遇されるところもあるので確認してみましょう。
住宅資金の他に残しておきたいお金は?
住宅ローンの頭金は家計の負担を軽減してくれる重要な役割があることはお伝えしました。しかし、預貯金を全部、頭金にしてしまうのはおすすめできません。住宅ローンの有無とは関係なく、いつまでも安定した家計を維持するために、ある程度の「緊急資金」を持っておくことが大事です。
緊急資金とは、一家の稼ぎ手に万が一のことが起きて収入が減ったときに、当面の生活費となる資金です。できれば生活費の6カ月分は持っておきたいところです。また、子どもの教育費が必要な場合も、教育資金は確保しておきたいです。
そんなことから、住宅ローンの利用を検討する際には、ライフイベント(進学や結婚、就職、出産など今後の生活で起こりうる出来事のこと)に必要なお金を確認したうえで、頭金として準備できる金額を検討されることをおすすめします。
重要なのは無理なく買える物件価格
ほとんどの金融機関では、住宅ローンの融資審査の中で、年収における年間のローン返済額の割合となる「返済負担率」を設定しています。その目安は年収の30~35%といわれていますが、金融機関によっては40%や45%といった高い割合で設定しているところもあります。
返済負担率に相当する金額は、いわば「借入可能額」です。しかし、ここで留意しておきたいのは、借入可能額でローンを組むと、場合によっては家計に負担をかけることになるかもしれないという点です。
住宅ローンを組むときは借入可能額ではなく、「無理なく払える返済額」を確認したうえで、家計に負担をかけない「無理なく買える物件価格」でマイホームを探すことが重要です。住宅ローンの返済が始まると、毎月滞りなく返済額を支払い続ける必要があります。このとき借入可能額でローンを組んでしまうと、ほかの出費が重なったときに家計がショートしてしまうかもしれません。でも、最初から無理なく払える返済額でローンを設定すれば、家計を圧迫することなく返済を続けることができます。
毎月無理なく払える返済額は、次のように求めることができます。
=(現在の家賃/月)+(住宅購入に向けて貯めてきた金額/月)-(マイホーム購入後の維持費/月)
マイホーム購入後の維持費には、駐車場代・管理費・修繕積立金などがあります。ほかにも、固定資産税・都市計画税・火災保険料・地震保険料なども発生します。税金と保険料は年払いであれば、月額に換算して確保しておくとよいでしょう。
上記で求めた「毎月無理なく払える返済額」から「無理なく買える物件価格」を試算してみましょう。
=(毎月無理なく払える返済額から試算した借入可能額)+(準備できる頭金)-(諸費用の額)
上記で借入可能額を計算する際、金融機関のサイトなどにある、毎月返済額から借入可能額を試算できる「住宅ローンシミュレーション」を利用するとよいでしょう。シミュレーションはサイト検索で見つかります。
また、住宅ローンを検討する際に見ておきたいのは「返済期間」です。よく利用される期間は30年や35年ですが、できれば定年退職までに返済が終わるよう期間を設定しましょう。年金生活になってから住宅ローンを返済すると、家計を圧迫する可能性があります。今の家計状況だけでなく、これから起こるライフイベントや定年後のことも考慮して住宅ローンを組むことが重要なポイントです。
まとめ
住宅ローンの返済方法や金利タイプ、加入が契約条件となることがある団体信用生命保険の役割についてお伝えしました。また、住宅購入では物件価格だけでなく諸費用も必要になること、そして、先々の生活やライフイベントを考えて、ある程度のお金を残したうえで頭金を準備することはおわかりいただけましたか?
住宅ローンは毎月滞りなく返済していかなければならないものです。そのためにも、家計状況やライフイベントを考慮しながら、無理のない範囲で住宅ローンを組むことをおすすめします。
執筆者:前佛 朋子(ファイナンシャルプランナー(CFP®)・整理収納アドバイザー1級)
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