引越し・マイホーム

後悔しない引っ越し! 散らからない間取りと仕組みを知ろう

新しい季節は、新生活に向けて引っ越しの季節でもあります。キレイな内装を気に入って契約をしたそのお部屋は、実は散らかりやすかったり、片づけがしにくかったりする間取りかもしれません。ですが、入居してから「こんなはずではなかった」と思っても、またすぐに引っ越すということは難しいですよね。
そこで今回は、一級建築士の鈴木信弘氏の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)をもとに、片づけやすい間取りと仕組みを知って失敗しないお部屋選びについて学んでいきましょう!

片付かないのはあなたのせいではないかも?

建物を設計する人は収納や片づけに力を入れて図面を描いているとは限りません。「いい家」をつくるために、収納や片づけといった日常生活の部分ではなく、見た目のよさやコストといったそれ以外の部分に力が注がれてしまうことはよくある話なのです。

だからといって、「収納がたっぷりあるから大丈夫」というわけでもありません。必要な場所に必要な収納がつくられていないと散らかってしまうのです。例えば、車で出かけた際、広い駐車場があれば助かりますが、目的地から遠ければそのありがたさも半減してしまいますよね。収納もそれと同じで、キッチン用品ならキッチン、洋服なら寝室のクローゼットなど、必要な場所に必要なものがあると、日々の暮らしはもっと快適になるのです。

このことから、収納に配慮された物件を選ぶことが、散らからないお部屋への第一歩と言えるのですが、どのように物件を選べばよいか分からないですよね。次項から、物件を探すときのポイントを紹介していきます。

間取りの秘訣

物件を探すときにまず見るのは「間取り」ではないでしょうか。間取りをみるコツを知っておけば、物が散らからないか部屋なのかチェックすることができます。間取りは全体を見ることも大切ですが、場所ごとにも機能と特徴があります。場所にあった収納を備えているかも考えていきましょう。

物が行き交う玄関

お客様をお出迎えする玄関はスッキリとキレイにしたいと思いますよね。あなたも他人の家を訪問したとき、玄関の印象がその人の第一印象になったという経験があるのではないでしょうか。玄関は靴以外にもなにかとモノを置きたくなる場所で、どうしても散らばった印象が発生しやすい空間でもあります。

筆者は、玄関を「港」に例えており、その共通点は「人や物がかならず通過する場所」という点です。港には船から降ろされた荷物を一時保管する倉庫があるのですが、これが港から離れた場所にあったらどうでしょう。家も同じで、玄関の間取りを見たときに下駄箱だけでなく、傘やコート、宅配便など、玄関に置いておきたいちょっとしたものを収納できる空間があるかチェックしてみましょう。

また、玄関はあなたの第一印象が決まる場所でもあります。玄関ドアの正面に壁がある形だと、壁に絵や写真などが掛けられて華やかな雰囲気になるでしょう。ですが、アパートやマンションでは少ない間取りなので、その際は下駄箱の上に植物や絵を飾ってみると雰囲気がよくなりますよ。

実は落とし穴!ステキな大きな窓

光がたくさん入る大きな窓はステキですが収納という面からすると不安があります。テレビ台、ソファ、キャビネットなどを置きたいと思っても、窓が大きい分、壁の面積が小さくなるので、モノの寄りかかれる場所が減り、ちょっとした棚を置こうにも最適な場所が見つからないのです。

窓の面積が減ると開放感という点では見劣りしますが、使い勝手はよくなります。古今東西、名作と呼ばれる住宅の多くは壁の量がしっかり確保されています。家具を置くためには、壁の長さが1,350mm以上、できれば1,800mm以上あると使い勝手がよいので、間取り図や実際に内覧した際に確認してみるとよいでしょう。
また、窓の位置もポイントになってきます。例えば、窓が壁の中央などにあり、床に接していないならば窓の下を活用することができます。

このように、窓の面積を取るか、壁の面積を取るかで迷った時には、壁を選んでおくと家具の配置で悩むことが少なくなりますよ。

キッチンは「空き地」と「島」を意識する

使い勝手のよいキッチンにするには、食材の下ごしらえや、盛り付け済みのお皿などを置いておく「空き地」が必要です。この空き地は一か所だけではなく何か所かあると作業工程ごとに使えますし、移動距離が短くなるのでとっても便利ですよ。

また、キッチンは横一列のレイアウトである必要はありません。ですが、アパートやマンションではこのようなレイアウトは多いですよね。そこでキッチンのうしろにカラーボックスや長テーブルなどで「島」を作ってしまいましょう。ここに食材を並べたり、盛り付け作業ができるスペースを確保できれば、整理整頓しやすくなります。

そして、追いやられがちなゴミ箱は、あえて一等地に置いてあげましょう。ゴミ箱は、ゴミが出る作業をしている人の近く、なかでもキッチンの中心部に保管するのがベターです。幅800×奥行き500×高さ600mm程度のスペースがあれば、たいていのゴミ箱は収まりますので、間取りを見ながらシミュレーションしてみましょう。

洗濯物、吊るす空間はありますか?

洗濯物は洗う、干す、たたむ、しまうという工程があり、作業量が多い家事の一つです。間取りや動線を考えないと散らかる一因になってしまいます。特に問題となるのは取り込んだ後で、ベッドやソファの上にとりあえず山積み…という経験は誰しもあるのではないでしょうか。

洗濯物というのは、取り込んでもすぐに畳まれずに、一旦室内で吊るされていることが多いと言われています。そこで、寝室や脱衣所に洗濯物が吊るせる空間があるかチェックしましょう。600mmほど空間があれば取り込んだ洗濯物を一時置きできるので散らかるのを防ぐことができますし、寝室や脱衣所であれば人目に付きにくいので雑然とした印象にならずに済みます。また、近頃は花粉や排気ガスを嫌って洗濯物を外に干さない人も増えていますので、そのようなライフスタイルの方は特にチェックしてもらいたいポイントです。

在宅ワークに必要な空間


自宅で仕事をする機会が増えている今、いつ在宅ワークがスタートするか分かりません。では、ワークスペースとして設ける机は、どのくらいの幅を考えればよいのでしょうか。ノートパソコンだけなら奥行き450mm以上、プリンターや棚も置きたいなら900mmはあるとよいでしょう。横幅は最低900mm、引き出しも置くなら1,200mmあると窮屈にならずに済みます。
いざ在宅ワークが始まり、「机が置けない!」と焦らないよう、お部屋選びの段階からある程度考えておくと安心ですね。

ワークスペースの場所はキッチンのそばが使い勝手が良くオススメです。ダイニングテーブルから見えにくくする仕掛けを施しておけば、散らかっていても気になりません。ただし、壁を囲いすぎると「孤独感」が強まるので次第に使われない場所になってしまいます。また、ワークスペースは散らかっていても許される空間でもあるので、散らかる場所を1ヶ所にまとめる、という役割もあります。

収納スペースの見方

必要な空間に設置された収納であっても、そこにありさえすれば散らからないというわけではありません。収納がどのような形か、どの位置にあるかによって収納や生活のしやすさが変わってくるのです。ここでは意外な収納の盲点とコツをご紹介します。

押入れの注意点

押し入れは、特に奥行きに注意して見てみましょう。奥行きがある収納は、奥のほうが見えにくくデッドスペースになりがちなので、ふとん、暖房器具、衣装ケース、スーツケースなどの大型のものをいれると有効活用できます。奥行きがあまりない収納には本、文房具、アイロン台など細かいものを入れるとスッキリと収まりますよ。

このように用途で使い分けられる収納があるかは重要なポイントです。しかし、1つの部屋に奥行きがある収納とない収納の2種類があり、この位置が離れてしまっている場合は、部屋の使えるスペースが少なくなってしまうことがあるのでその点も注意して見てみましょう。

トイレは切り札になる

トイレという空間は収納が得意中の得意です。なにしろ、たいていのトイレには小さな窓が一つあるだけ、あとはほとんど壁面です。壁面が多いほど収納に有利なのです。
トイレの標準寸法は幅800×奥行き1,500mm程度ですが、それより広めの間取りであればかなりの収納スペースを確保することができます。また、そこまで広くなくても、前述の通りトイレはほぼ壁面なので、収納の工夫がしやすい場所でもあります。

自転車を置く場所はありますか?

自転車は重要な移動手段であり、置く場所を確保する必要がありますが、部屋の中のことを気にかけすぎて、外のことは意外と忘れてしまいがちです。
自転車は水に濡れると錆びたり腐食してしまいます。特に、スポーツタイプの自転車は室内保管が原則として作られているものが多いので、屋根があって十分なスペースがある駐輪場があるということもチェックしたいポイントです。

家具配置の工夫


いくら間取りに注意しても、家具の配置によっては利点を失ってしまうことがあります。また、入居して部屋にものを入れてみないと気づけないポイントもあるでしょう。ここではレイアウトの注意点について確認していきましょう。

テレビとソファの間を開ける

テレビとソファの間に「テーブル」を置くレイアウトにしたとします。テーブルの上にはテレビのリモコン、読みかけの新聞、チラシなどが散らばっていませんか。リビングのテーブルが散らかりやすい理由は、用途が決まっておらず、モノが集まりやすいからです。

対策として、ソファの横に小さなテーブルやローチェストを置いてみてはいかがでしょうか。テレビの前はゲームやフィットネスなどアクティブなことをしたくなる空間ですし、見た目も広くスッキリしますよ。

さらに空間を活用する工夫として、ソファを使わないという方法もあります。例えば3人掛けのソファを置くために必要なスペースは、足を伸ばすスペースなどを含めると3畳ほど。見た目よりも空間を必要とするのです。これから買うなら、1人掛けのソファを人数に応じて用意するほうが居心地よいでしょう。また、それぞれ配置できる空間があるかも事前に確認することが必要です。

ストレスの元になる「タオル」

入居前の内覧や写真では、物が置いてない空っぽの状態がほとんどです。その中でも、私達の生活には欠かせない「タオル」という存在ですが、入居前に「ここにタオルを引っ掛けて…」と考えている人は少ないでしょう。実際にタオルを掛けようとすると、「乾きやすい場所に掛けたい」と思うようになるはずです。

キッチンでは収納の持ち手に引っ掛けることが多いですがベストな場所とはいえません。引き出し式の収納だと、閉めるときにタオルを挟み込んでしまいがち。一方、開き戸タイプはタオルにはいいかもしれませんが、収納の面からみると片づけがしにくい構造です。小さなことですが、毎日使うタオルなのでなるべくストレスが少ないと良いですよね。

そこで、引っ掛けるための製品を後から取り付けられるような、土台となる壁があるかを確認しましょう。また、浴室でバスタオルなども干したい場合にも、キッチンと同様に、干すための壁が必要となります。

まとめ

光が差し込む、ショールームのようなすてきな部屋は憧れますよね。しかし、間取りをきちんと確認しないと、「イメージと違う!」ということがあるかもしれません。家具の配置、動線、住み方は、間取りによってある程度制限されてしまうのです。それが少しずつ影響して、モノが散らかる原因になっていることもあります。間取りから空間の広さや収納の配置を読み取り、ストレスのない新しい生活をスタートさせましょう。

書籍紹介:「片づけの解剖図鑑」( 鈴木信弘 著/エクスナレッジ)2013年12月出版

出版社書籍紹介:「片づけの解剖図鑑」( 鈴木信弘 著/エクスナレッジ)2013年12月出版
Amazon
楽天ブックス
紀伊國屋書店

Facebookでシェアする
LINEでシェアする