
管理栄養士監修:山菜の種類や野菜との違い、食べ方・レシピを紹介
この記事では、山菜の基礎知識から山菜の種類、野菜との違い、そして安全な採取方法まで詳しくご紹介していきます。
監修者
- 保科 琴美(ほしな ことみ)
- 東京電力ホールディングス株式会社
管理栄養士
管理栄養士として医療の現場で栄養指導の経験と実績が豊富。日本糖尿病療養指導士。定期的にヨガ講師としての活動も行っている。

山菜ってなに?野菜との違いは?
山菜と野菜は、どちらも私たちの食卓に彩りを添える大切な食材です。しかし、その性質や特徴には大きな違いがあります。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
山菜は自然の中に自生する植物
山菜とは、自然界に自生する食用可能な植物の総称です。山岳地帯だけでなく、里山や水辺など、実にさまざまな環境で見られます。日本全国で食用とされている山菜は300種類以上[1]あり、その豊富な種類は日本の食文化の奥深さを物語っています。
なお、食用植物と見た目が良く似た有毒植物が存在するため、山菜採りに出かける際は注意が必要です。食用植物と有毒植物の見分けがつきにくい主な山菜は下表のとおりです。
食用植物 | 要注意の有毒植物 |
---|---|
ニラ | スイセン |
モミジガサ、ニリンソウ | ヤマトリカブト |
ふきのとう | ハシリドコロ |
セリ | ドクゼリ |
ゴボウ | チョウセンアサガオ |
オオバギボウシ(うるい) | コバイケイソウ、バイケイソウ |
山菜の専門サイトや図鑑などで植物の特徴を確認することで、誤食するリスクを抑えられます。
野菜は田畑で栽培されている
野菜は人の手によって管理・栽培される作物です。長年の品種改良により、味わいが良く、収穫量も安定しています。そのため、多くの野菜は年間を通じて市場に出回っているのが特徴です。
一方、山菜は野生植物であるため、独特の風味やほろ苦さ、アクを持っています。また、自然の営みに従って生育するため、収穫できる量は限られており、出回る時期も季節性が強いのが特徴です。
春の山菜9選
春は、山菜が顔を覗かせる季節。自然の恵みを感じながら、旬の山菜を楽しむ絶好の時期です。豊かな風味と栄養価の高い山菜は主に以下の9種類です。
ここからそれぞれの山菜について詳しく紹介します。
ふきのとう
雪解けとともに顔を出す、春を告げる山菜の代表格。ほろ苦い風味が特徴で多くの山菜愛好家に人気の食材です。
収穫時期
ふきのとうは早春の寒さの中、最初に芽吹く山菜として知られています。収穫時期は平地では1月から3月、山間部では3月から5月と、地域によって異なります。
調理のポイント
ふきのとうの魅力は、その独特のほろ苦い風味にあります。調理の際は、アク抜きをせずその苦みを最大限に活かすことがポイントです。特に、天ぷらはそのまま揚げることで、ふきのとうの風味をより感じられます。
子どもと食べる場面など風味が気になる場合は、2%の塩水で3〜4分茹でた後、冷水にさらすとアクが抜けます。
おすすめの食べ方
- 天ぷら
- みそ汁の具材
- ふきのとう味噌(細かく刻んだふきのとうを味噌と和えた保存食)
つくし
つくしは、シダ植物の仲間である「スギナ」という植物の胞子茎を指す山菜です。
山の奥深くではなく、日当たりの良い土手や道端に群生しているため、比較的収穫しやすい山菜としても知られています。ただし、人目につきやすい場所に生えているだけに、衛生面には不安があることから、食用にする場合にはスーパーや八百屋さんで購入することをおすすめします。
つくしにはビタミンBを破壊する作用のある「チアミナーゼ」や、毒性のある「アルカロイド」などの成分が含まれています。そのため、子どもには食べさせないように気を付け、大人も大量摂取は避けましょう。とくに、妊娠中や授乳中の摂取は避けた方が良いとされています。
収穫時期
つくしの収穫時期は、2月から4月頃です。特に、3月後半から4月にかけては、柔らかく食用に最適な時期となります。
調理のポイント
調理の際は、茎の節にあるはかまを取り除き、ひと晩水に浸すのがポイントです。塩を加えた熱湯で茹でてから水にさらしましょう。
おすすめの食べ方
- 卵とじ
- 佃煮
- 天ぷら
ふき
ふきは、数少ない日本原産の山菜の一つで、驚くほど水分が多く、低カロリーであることが特徴です。栄養価も高く、食物繊維やカリウムなどを含んでいます。
収穫時期
ふきの収穫時期は主に3月から4月です。ハウス栽培されているものもあり、出回り時期は10月から5月と幅広くなっています。
調理のポイント
ふきを美味しく調理するコツは、塩を振ってまな板の上で転がす「板ずり」をしてから湯がくことです。この工程により、色味や香りが美しく引き立ちます。
おすすめの食べ方
- 煮物
- 佃煮
- 炊き込みごはん
たらの芽
たらの芽は、ウコギ科の落葉低木「タラノキ」の新芽を指します。食物繊維、ビタミンB群、ビタミンC、E、K、β-カロテン、カリウムなどを豊富に含む、栄養価の高い山菜です。
その食感の良さと栄養価の高さから「山菜の王様」とも呼ばれ、多くの山菜愛好家に注目されています。
収穫時期
たらの芽の収穫時期は通常3月から4月で、山間部では6月頃まで収穫できることもあります。ハウス栽培のものは2月から3月にかけて店頭に並びます。
調理のポイント
調理する際のポイントは、はかま(外側の堅い皮)を丁寧に取り除くことです。はかまを取り除くことで、より美味しく仕上がります。
おすすめの食べ方
- 天ぷら
- 和え物
- 炒め物
うど
うどは、ふきと同様、数少ない日本原産の山菜の一つです。平安時代の書物にも登場するほど、古くから日本人に親しまれてきた山菜です。「捨てるところなし」といわれるほど、可食部が多いことが特徴です。
収穫時期
うどの収穫時期は4月から5月初旬です。
調理のポイント
うどを美味しく調理するためには、根元の固い部分を切り落とすことが大切です。次に、皮の近くにあるアクを取り除くため、切り口の内側の円の部分まで厚めに皮をむきます。
皮をむいた後は、酢水にさらすことで余分なアクを取り除くことができ、美しい白色に仕上がります。
おすすめの食べ方
- 天ぷら
- 和えサラダ
- 炒め物
わらび
わらびは若芽を食用とする山菜で、全国に自生しています。地中深くに地下茎を伸ばし、その根に含まれるデンプンは「わらび粉」の原料としても知られています。万葉集にも登場するほど古くから日本人に親しまれてきた、歴史ある山菜です。
収穫時期
わらびの収穫時期は4月から5月です。
調理のポイント
わらびを美味しく調理するためには、徹底的なアク抜きが欠かせません。まず、重曹と熱湯を入れた鍋にわらびを入れ、火を止めてそのまま常温で一晩置きます。翌日にゆで汁を捨て、水洗いをしっかりと行うことで、アクや苦みを取り除けます。
おすすめの食べ方
- 天ぷら
- 酢のもの
- パスタ
ぜんまい
ぜんまいはわらびと同じくシダ科の植物で、先がくるっと丸まり、綿毛に覆われているのが特徴です。山奥から自然採取し、手作業で1本1本乾燥させたものは、高級料理の食材として珍重されています。
一方で、下処理して乾燥させたものや水煮にしたものも通年販売されており、比較的ポピュラーな食材でもあります。
収穫時期
ぜんまいの収穫時期は4月から5月頃です。
調理のポイント
ぜんまいはアクが非常に強い山菜であるため、丁寧な下処理が必要です。アクを十分に抜くことで、ぜんまいの苦みを和らげ、美味しく食べられるようになります。
具体的には徹底的な水煮です。何度か水を取り替えながら、しっかりとアクを抜きましょう。
おすすめの食べ方
- 煮物
- ナムル
- 炊き込みご飯
オオバギボウシ(うるい)
オオバギボウシ(通称:うるい)は、長ネギに似た外観が特徴的な山菜です。地域によっては「山かんぴょう」「ぎんぼ」「これい」などと呼ばれることもあります。葉が開く前のうるいは、有毒植物であるコバイケイソウやバイケイソウと似ているため、採取する際は十分な注意が必要です。
収穫時期
うるいの収穫時期は4月から6月上旬です。
調理のポイント
うるいは調理が非常に簡単な山菜です。特別な下処理の必要がなく、サラダなどで生のまま食べられます。その簡便さと新鮮な風味が、うるいの大きな魅力です。
おすすめの食べ方
- サラダ
- 鍋
- 浅漬け
こごみ
こごみは、わらびやぜんまいと同じシダ科の植物で、先っぽ(芽)が丸まっているのが特徴的です。正式名称は「クサソテツ」で、その若芽を「こごみ」と呼びます。他の山菜と比べてアクが少ないことが大きな特徴です。
収穫時期
こごみ(青こごみ)の収穫時期は4月から5月です。
調理のポイント
こごみは、他の山菜と比較して下処理の手間がほとんどかかりません。アクが少ないため、比較的簡単に調理できる山菜として知られています。
おすすめの食べ方
- 天ぷら
- 和え物
- お浸し
秋の山菜3選
秋は、夏の終わりから初冬にかけて、独特の風味と食感を持つ山菜が顔を出す季節です。ここではおすすめの秋の山菜を3種類紹介していきます。
アケビ
アケビは日本各地の低山地に自生している植物で、紫色の皮に包まれた白くゼリー状の果肉が特徴的です。果実だけでなく、春に芽吹く新芽も食べられます。
収穫時期
アケビの収穫時期は8月下旬から11月中旬頃で、秋の味覚として親しまれています。
調理のポイント
アケビを調理する際は、いくつかの注意点があります。まず、黒い種は食べられないため、必ず取り除きます。また、皮もそのままでは食べられません。数時間水に浸けてアク抜きをした後、加熱調理すれば食べられるようになるため、皮まで食べる場合は覚えておきましょう。
おすすめの食べ方
アケビは、果肉と皮で異なる楽しみ方ができます。
- 果肉
-
- 生でそのまま食べる
- 種を取り除いた後、裏ごしして凍らせ、シャーベットにする
- 皮
-
- 天ぷら
- 炒め物
- 佃煮
銀杏
銀杏は、イチョウの木に実る果実のことで、さくらんぼよりもやや大きいサイズです。イチョウ自体は生きた化石と呼ばれるほど古い木で、独特の匂いが特徴的です。
なお、銀杏は「メチルピリドキシン」という物質を含んでいるため、食べ過ぎると中毒症状を引き起こす可能性があります。食べる際は適量を心がけ、子どもや妊娠中・授乳中の方は摂取を避けるようにしましょう。
収穫時期
銀杏の旬は9月から11月半ばです。
調理のポイント
銀杏を調理する簡単な方法は、塩と一緒に紙袋に入れ、電子レンジで1分程度加熱することです。また、加熱後は熱いうちに殻をむくのがコツです。
おすすめの食べ方
- 茶碗蒸し
- 炊き込みご飯
- 甘露煮
ムカゴ
ムカゴは、特定の植物ではなく、長芋や大和芋などヤマノイモ科に属する芋の、葉の付け根にできる球状の芽(肉芽)全般を指します。ほっくりとした食感と、山芋のような野性味あふれる風味が特徴的です。
収穫時期
ムカゴの収穫時期は9月下旬から11月上旬です。
調理のポイント
ムカゴは皮が薄いため、水洗いで丁寧に汚れを落とせば皮ごと食べられます。気になる場合は、ザルに水洗いしたムカゴを入れ、こすりつけるようにかき混ぜると余分な皮を取り除けます。ピーラーなどでしっかりむくと風味が落ちてしまうため、やさしく洗うのがコツです。
おすすめの食べ方
- 塩ゆで
- 炊き込みご飯
山菜をおいしく食べよう!おすすめレシピ
山菜は、自然の恵みが詰まった豊かな食材です。それぞれの山菜には独特の風味と食感があり、適切な調理法で楽しむことで、その魅力を最大限に引き出すことができます。
ここでは、山菜の魅力を存分に味わえる、簡単でおいしいレシピをご紹介します。
たらの芽の天ぷら
材料
- たらの芽 100g
- 天ぷら粉 100g
- 冷水 100mL
- 揚げ油
- 塩
手順
- たらの芽のはかま部分を取り除きます。
- ボウルに衣の材料を入れ混ぜ合わせ、1をくぐらせます。
- 2を揚げます。
- 器に盛り付け、塩を添えて完成です。
わらびのナムル
材料
- わらび(水煮) 100g
- ごま油 大さじ1
- にんにく(みじん切り) 1片
- 醤油 大さじ1
- 酒 小さじ1
- 白ごま 適量
手順
- わらびの水煮は洗って食べやすい長さに切ります。
- フライパンにごま油を温め、1を中火で軽く炒めます。
- 2に、にんにく、醤油、酒を加え、汁気が飛ぶまで炒め煮にします。
- 3の火を止めて、白ごまを和えて完成です。盛り付けて、お好みでごま油をかけてください。
うどのきんぴら
材料
- うど 100g
- ごま油 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- みりん 小さじ1
- 酒 小さじ1
手順
- うどは3cm幅に切り、皮が付いたまま細切りにして水にさらします。
- 熱したフライパンにごま油をひき、水気を切った1を入れ、火が通るまで炒めます。
- 2に火が通ったら、醤油、みりん、酒を加え、全体に味がなじむように炒めて、火から下ろします。
- 器に盛り付けて完成です。
まとめ
山菜は日本の豊かな自然が育んだ貴重な食材です。それぞれの山菜には独特の風味と栄養価があり、適切な調理法で楽しむことで、その魅力を存分に味わえます。本記事を参考に、季節ごとに変化する山菜の旬を楽しみ、日本の食文化の奥深さを感じてください。
- 独立行政法人 農畜産業振興機構:
月報野菜情報
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