食の知識

【全国マップ付】新そばの時期はいつ?夏・秋の旬とおうちでの美味しい食べ方

秋風が心地よい季節になると、ふと恋しくなる「新そば」。清々しい香りと豊かな風味は、まさに日本の秋の風物詩です。しかし、「新そばの旬はいつからいつまで?」「夏にも旬があるって本当?」など、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。

この記事では、夏そばと秋そばの違いといった基本情報から、日本全国の新そば時期が一目でわかるマップ、さらにはおうちで専門店の味を再現できる美味しい食べ方のコツまで詳しく解説します。今年はぜひ、最高のタイミングで美味しい新そばを味わってみてください。

目次 [CLOSE]

「新そば」とは:その年に収穫されたそばの実で作る旬のそば

「新そば」とは、その年に収穫され、製粉したてのそば粉で打ったそばのことを指します。時間が経った「古そば(ひねそば)」と区別するための呼び方です。

「新そば」と聞くと秋のイメージが強いかもしれませんが、実はそばには年に2回、旬の時期があります。梅雨~真夏の頃に収穫されるのが「夏そば」で、秋口~晩秋の頃に収穫されるのが「秋そば」です。夏そばは「夏新」、秋そばは「秋新」とも呼ばれており、夏そばは春に種まきをすることから「春そば」と呼ぶ地域もあります。

それぞれの季節で収穫されるそばの実は香りや味わいが異なり、その土地に根付いた食べ方で楽しまれています。

「新そば」の香りや風味が格別な理由

新そばが格別に美味しい理由は、そばの実に含まれる水分量にあります。収穫したてのそばの実は水分を豊富に含んでおり、この水分が豊かな香りと風味の源となります。また、ゆでたときのそばの香り(釜香)が強く、粘り気(こし)が楽しめる点も特長です。

とくに、そば殻を取り除いて作られる「藪そば(挽きぐるみそば)」の場合には、そばがほんのりと緑がかった色になることも特徴です。これは、そばの実に含まれる葉緑素(クロロフィル)によるもので、収穫されてから時間が経つにつれて色が落ち着いていくため、新そばの時期にしか楽しむことができません。

このように、収穫したての短い期間しか味わえない特別な風味が、多くの人々を惹きつける新そば最大の魅力と言えるでしょう。

ざるそばの写真

「夏そば」と「秋そば」の特徴と違い

年に2回訪れる新そばの旬、「夏そば」と「秋そば」。栽培時期や気候が異なるため、その特徴にも違いが生まれます。どちらが良いというわけではなく、それぞれの個性がありますので、ぜひ好みに合わせて楽しんでみてください。

特徴を下の表にまとめましたので、違いを見比べてみましょう。

夏そば(夏新) 秋そば(秋新)
収穫時期 7月~8月頃 8月~12月頃
見た目 薄く緑がかった色 茶褐色から黒に近い色
香り 爽やかで清々しい香り 豊かで芳醇な香り
味わい あっさりとして爽やかな味わい 風味が強く濃厚な味わい
おすすめの食べ方
  • ざるそば
  • 冷やかけそば
  • ざるそば
  • かけそば
  • 釜揚げそば

夏そばは、春に種をまき夏に収穫するため、成長期間が短いのが特徴です。そのため、皮が柔らかく、さっぱりとした味わいになります。夏そばは、夏の暑い時期に清涼感のあるのど越しを楽しむのにぴったりです。

一方、秋そばは夏に種をまき、秋に収穫されます。昼夜の寒暖差が大きい環境でじっくりと育つため、栄養と風味をたっぷりと蓄えます。秋そばは、そば本来の濃厚な香りと甘みを存分に味わえるのが魅力です。

【全国新そばマップ】各地域の新そばの旬の時期は?

栽培される地域や品種によって異なりますが、秋の新そばは、北海道の8月中旬頃から九州の12月頃まで、北から順に旬を迎えます。また、夏そばが楽しめる地域では、7月~8月頃が夏そばの旬の時期です。

以下に、主なそばの産地の新そばの時期をマップにしてまとめました。お住まいの地域はもちろん、旅行先の旬の時期を確かめる際にもぜひお役立てください。

全国新そばマップ

ここからは日本各地の新そばの時期を「秋そば」を中心に詳しく解説していきます。「夏そば」が楽しめる地域については、夏の新そばの時期もご紹介しますので、ぜひチェックしてみてください。

【北海道・東北地方】の新そば時期:8月中旬~11月頃

冷涼な気候を活かしたそば栽培が盛んな北海道・東北地方。日本有数のそば処として知られ、質の高いそばが生産されています。

北海道(幌加内町・深川市・新得町など):8月中旬~10月上旬頃

北海道の主なそばの産地と新そばの時期

  • 幌加内町:8月下旬~9月上旬
  • 深川市:8月中旬~9月中旬
  • 音威子府村:8月中旬~9月中旬
  • 新得町:8月下旬~10月上旬

作付面積・生産量ともに日本一を誇る幌加内町や同2位の深川市、「新得そば」で知られる新得町などが有名です。北海道では、広大な大地と昼夜の寒暖差が風味豊かなそばを育みます。そばの収穫量は全国1位を誇り[1]、各地方で個性的なブランドそばが根付いています。

山形県(尾花沢市・大石田町など):10月下旬~11月頃

山形県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 夏そば(西蔵王地区):7月下旬~8月頃
  • 秋そば(尾花沢市・大石田町など)10月下旬~11月頃

山形県のそばは「でわかおり」「最上早生」などのオリジナル品種が人気で、新そばの時期には各地でそば祭りが開催されます。板にそばを盛り付けた「板そば」が有名で、主流は秋そばですが、西蔵王地区には夏に収穫された夏そば(夏新)が楽しめるお店もあります。

福島県(会津・白河市など):10月下旬~11月頃

福島県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 秋そば(会津・白河市など):10月下旬~11月頃

会津地方で食べられている「高遠そば」や、江戸時代にそば作りが推奨されたことに由来する白河市の「白河そば」などが有名です。会津の大内宿では、一本のネギを箸代わりにして食べる「ねぎそば」が知られているなど、地域独自の食文化も魅力です。

ねぎそばの写真

【関東・甲信越地方】の新そば時期:10月下旬~12月頃

首都圏からもアクセスしやすく、多くのそばの名産地がひしめくエリアです。個性豊かなブランドそばが数多く存在します。

茨城県(常陸太田市・筑西市・桜川市など):11月~12頃

茨城県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 秋そば(常陸太田市・筑西市・桜川市など):11月~12月頃

茨城県はそばの栽培が盛んで、長野県と並び、毎年全国2~3位の収穫量を誇ります[1]。「常陸秋そば」は常陸太田市の金砂郷地区にあった在来種から選りすぐって育てられたブランド品種で、全国のそば職人から高い評価を受ける逸品です。実が大きく、香りと甘みが格別です。

栃木県(日光市・鹿沼市など):10月下旬~11月上旬頃

栃木県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 夏そば(鹿沼市など):6月中旬~7月上旬頃
  • 秋そば(日光市・鹿沼市など):10月下旬~11月上旬頃

日光連山から流れる清らかな水で打つそばは、のど越しの良さが特徴。日光市、鹿沼市などの山間部でそば栽培が盛んです。鹿沼市などでは夏そばも栽培されており、梅雨の頃に香り爽やかな新そばを楽しむことができます。

長野県(長野市戸隠・開田高原・安曇野など):10月下旬~11月下旬頃

長野県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 秋そば(長野市戸隠・開田高原・安曇野など):10月下旬~11月下旬頃

長野市戸隠地区の「戸隠そば」が全国的に有名です。日本三大そばの一つで、ざるに馬蹄形に盛り付ける「ぼっち盛り」という独特のスタイルで知られています。長野県は茨城県と並んで毎年全国2~3位の収穫量を誇り[1]、開田高原や安曇野などもそば処として知られています。

埼玉県(秩父市荒川など):11月上旬~12月上旬頃

埼玉県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 春そば・夏そば(秩父市荒川地区):6月~7月頃
  • 秋そば(秩父市など):11月上旬~12月上旬頃

秩父の山間部では古くからそば栽培が行われてきました。荒川の清流と寒暖差のある気候が、コシの強い美味しいそばを生み出します。なかでも、秩父市荒川地区ではそばの二期作が盛んで、“春蒔き夏収穫”の「春そば(夏そば)」と、“夏蒔き秋収穫”の「秋そば」が味わえます。

【関西・中国・九州地方】の新そば時期:10月上旬~12月頃

西日本にも、歴史あるそば処や近年注目される産地があります。それぞれの地域の気候風土に根ざした、特色ある新そばが楽しめます。

兵庫県(豊岡市出石町・豊岡市但東町など):11月上旬~12月中旬頃

兵庫県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 秋そば(豊岡市出石町・豊岡市但東町など):11月上旬~12月中旬頃

豊岡市に位置する出石町と但東町は、関西を代表するそば処として知られています。小さな皿に盛られたそばを何枚も食べる「出石皿そば」と、但東町赤花で守り継がれる在来種「赤花そば」が有名です。新そばの時期には、格別な香りと風味を堪能できます。

島根県(出雲市・松江市・大田市三瓶町など):10月上旬~11月中旬

島根県の主なそばの産地と新そばの時期

  • 秋そば(出雲市・松江市・大田市三瓶町など):10月上旬~11月中旬

出雲市や松江市を中心に食べられる「出雲そば」は日本三大そばの一つ。そばの実を殻ごと挽く「挽きぐるみ」のため、色が濃く香りが強いのが特徴で、「割子そば」という朱塗りの丸い器で提供されるスタイルが一般的です。他にも、三瓶山麓に伝わる在来種の「三瓶そば」なども知られています。

九州地方(豊後高田市・南阿蘇・大隅・対馬など):11月~12月頃

九州地方の主なそばの産地と新そばの時期

  • 大分県豊後高田市など:7月(春そば)、11月(秋そば)
  • 熊本県南阿蘇村など:11月中旬~12月中旬頃
  • 鹿児島県大隅地域など:7月(夏そば)、11月(秋そば)
  • 長崎県対馬市など:12月上旬~下旬頃

温暖なイメージの九州ですが、大分県の豊後高田市や熊本県の南阿蘇村など、山間部を中心にそば栽培が盛んに行われています。鹿児島県の大隅地域に伝わる「鹿屋在来」や、そばの原種に近いとされる長崎県対馬市の「対州そば」などの特徴的な在来種も多く、夏そば(春そば)と秋そばの2回の新そばが楽しめる地域もあります。

おうちで専門店の味を!新そばの美味しい食べ方

旬の新そばが手に入ったら、その魅力を最大限に引き出して味わいたいですよね。ここでは、選び方からゆで方、薬味の工夫まで、ご家庭で新そばを格段に美味しくするおすすめの食べ方をご紹介します。

【選び方】美味しい新そば(生麺・乾麺)を見分けるコツ

スーパーなどで新そばを選ぶ際、どれにしようか迷ってしまうことはありませんか?美味しい新そばを見分けるには、パッケージで確認したい2つの簡単なコツがあります。

そば粉の割合をチェックする

そばは、そば粉とつなぎの小麦粉の割合で「十割そば」や「二八そば」と呼ばれます。新そばの豊かな香りを楽しみたいなら「二八そば」以上、より本格的な風味を求めるなら「十割そば」がおすすめです。

十割そば
そば粉100%。そば本来の強い香りと風味、ザラっとした食感が特徴。切れやすいので優しく扱う必要があります。
二八そば
そば粉8割、小麦粉2割。のど越しが良くツルっとした食感。香りと食感のバランスが良く、最も一般的です。

産地や品種の表示を確認する

パッケージに「北海道産」や「常陸秋そば使用」のように、そばの実の産地や品種が明記されているものを選びましょう。産地がはっきりしているものは、品質に自信がある証拠です。とくに、「収穫年度」が表示され、「新そば」と明記されているものなら、旬の風味をより一層期待できます。

【ゆで方・締め方】新そばの香りを引き出す調理方法

新そばの繊細な香りを活かすも逃すも、ゆで方次第です。ここでは、ご家庭のコンロでも実践できる、ゆで方と締め方の手順をご紹介します。

  1. 大きめの鍋にたっぷりのお湯を沸かす
    そばをゆでる際、これが最も重要なポイントです。お湯が少ないと、そばを入れたときに温度が急激に下がり、麺の表面が溶けてべちゃっとしてしまいます。麺100gに対してお湯1リットル以上を目安に、できるだけ大きな鍋を使いましょう。
  2. 麺をほぐしながら入れ、優しくかき混ぜてからゆでる
    沸騰したお湯に、麺をパラパラとほぐしながら入れます。麺がくっつかないよう、菜箸で一度だけ優しくかき混ぜます。茹でている最中にかき混ぜすぎると、麺が切れたり傷ついたりするので注意してください。

    麺をゆでる工程

  3. ゆで始めたら差し水はせず、火加減で調整
    吹きこぼれそうになっても、差し水(びっくり水)はしないでください。お湯の温度が下がり、うまくゆで上がりません。火力を少し弱めるなどして、お湯が静かに沸騰する状態を保ちましょう。ゆで時間はパッケージの表示時間を参考にしてください。
  4. ゆであがったら、冷たい氷水で一気に締める
    ゆで上がったそばは、ザルにあげて流水で素早くぬめりを取ります。その後、たっぷりの氷水に入れ、一気にキュッと締めましょう。この工程で麺に強いコシが生まれ、のど越しが格段に良くなります。

    麺をゆでる工程

【薬味・つゆ】定番から意外なものまで!新そばを楽しむアレンジ

新そばの繊細な風味を最大限に楽しむには、薬味とつゆの選び方も大切です。定番はもちろん、少し変わった組み合わせも試してみませんか?

おすすめの薬味

定番の薬味
ねぎ、本わさび、大根おろし、刻みのり、七味唐辛子、生姜
香りをプラスする薬味
すだち、ゆず、みょうが、大葉
食感をプラスする薬味
くるみ、白ごま、とろろ、オクラ
意外な組み合わせ
もみじおろし、辛味大根、岩塩(つゆなしで)

すだちやゆずといった柑橘類は、新そばの爽やかな香りを一層引き立ててくれます。また、つゆにこだわらず、上質な塩を少しだけつけて食べると、そば本来の甘みと風味をダイレクトに感じられておすすめです。

市販のつゆを美味しくする一工夫

市販のめんつゆを使う場合でも、少し手を加えるだけで専門店の味に近づきます。

例えば、めんつゆを小鍋にあけ、みりんを少し加えて火にかけ、アルコールを飛ばす「煮切り」をすると、味がまろやかになります。また、かつお節で取った出汁で割ると、格段に風味がアップします。

もっと知りたい方へ!新そばに関するよくある質問

ここまで新そばの時期や楽しみ方について解説してきましたが、さらに気になる細かい疑問もあるかもしれません。ここでは、新そばに関するよくある質問にお答えしていきます。

そば湯の栄養や美味しい飲み方は?

そばをゆでる際に使ったお湯は「そば湯」と呼ばれています。そば湯には、そばからお湯に溶け出した栄養素が豊富に含まれています。

とくに注目したいのが、ポリフェノールの一種であるルチンです。ルチンには、ビタミンCと一緒になって毛細血管を強くする働きがあるとされています[2]。せっかくの栄養を逃さず、ぜひ美味しくいただきましょう。

そば湯の一番ポピュラーな飲み方は、残ったそばつゆをそば湯で割る方法です。お好みの濃さに調整して、そばの余韻を楽しんでください。その他にも、塩や梅干しを少し加えてお吸い物のようにしたり、出汁を加えて和風スープとして楽しんだりするのもおすすめです。

生そばや乾麺の正しい保存方法は?

そばの種類によって適切な保存方法が異なります。風味を損なわないために、正しく保存しましょう。

生そば・ゆでそば
非常にデリケートで、常温での保存はできません。必ず冷蔵庫で保存し、パッケージに記載された消費期限内に食べきるようにしてください。とくに新そばは風味が命なので、購入後はできるだけ早く食べるのが一番です。
乾麺
湿気と直射日光、そして匂いの強いものの近くを避けて、常温で保存します。密閉できる容器や袋に入れておくと、品質が長持ちします。賞味期限は比較的長いですが、やはり新そばの風味を楽しむなら、早めに食べることをおすすめします。

まとめ

今回は、新そばの時期やその魅力を余すことなくご紹介しました。最後に、記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 新そばの時期は「夏」と「秋」の年に2回。
  • 夏そばの新そば時期は、7月~8月頃。各地で栽培されているものの、秋そばより生産量は少ない。
  • 秋そばの新そば時期は、北海道の8月中旬頃から九州の12月頃まで、北から順に旬を迎える。全国各地で栽培され、各地域で独自の食べ方が根付いている。
  • 夏そばはあっさりとして爽やかな味わい、秋そばは豊かな風味と濃厚な香りが楽しめる。

この記事を参考に、ぜひ今年は旬の香り高い新そばを心ゆくまで堪能してみてはいかがでしょうか。日本の豊かな四季が育んだ特別な味わいは、きっとあなたの暮らしに彩りを添えてくれるはずです。

記事編集

くらひろ編集部
東京電力エナジーパートナー株式会社

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