季節の行事

テト(ベトナムの旧正月)とは?2026年はいつ?休暇期間や過ごし方を解説

ベトナムの「テト」という言葉を聞いたことはありますか?「テトって旧正月のこと?」「2026年はいつなの?」「旅行やビジネスへの影響は?」などと疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、ベトナム最大の祝日である「テト」を日付や休暇期間といった基本情報から、伝統的な過ごし方や料理、飾りつけ、さらには実用的な挨拶やお年玉の文化、旅行・ビジネスの注意点まで、網羅的にご紹介します。テトへの理解を深め、ベトナムの人々との交流や旅行計画に役立てましょう。

ベトナムの旧正月「テト」とは?

テトとは、ベトナムにおける旧正月(旧暦の正月)のことです。ベトナム人にとっては最も重要で盛大な祝祭であり、家族が集う大切な季節の行事です。

テト(Tết)は、「Tết Nguyên Đán(テッグエンダン=節元旦)」という言葉の略で、「節」という漢字のベトナム語読みです。ベトナムでは、新暦の正月(1月1日)よりもはるかに重視され、国全体が祝賀ムードに包まれます。

この時期は、ベトナム文化の核心に触れることができる貴重な機会になります。テトは、ベトナムの文化や人々を理解する上で欠かせないキーワードなのです。

【2026年】ベトナムのテト休暇はいつからいつまで?

テトの日付は旧暦1月1日と定められているため、現在使用されている新暦では日付が毎年変わるのが特徴です。2026年のテト(元日)は、2月17日(火)です。

テトの日付が変わる理由は、日付が旧暦(太陰太陽暦)に基づいているためです。通常使用されている新暦とは異なり、旧暦は月の満ち欠けを基準にしているため、毎年日付が変動します。

また、ベトナムでは、テトの前後の期間が連休になります。例年秋から冬頃にベトナム政府が公的機関の連休期間を公表し、民間企業もこれを参考に連休期間を設定するケースが多いようです。ただし、公的機関よりも長めの連休を設定する企業も少なくないため、注意が必要です。

2026年のテト休暇は2月14日(土)~22日(日)の9連休です。以下の表に、近年のテトの日付と休暇期間をまとめました。

テトの日付 テト休暇の期間
2025年 1月29日(水) 1月25日(土)~2月2日(日)
2026年 2月17日(火) 2月14日(土)~2月22日(日)
2027年(※) 2月6日(土) 2月4日(木)頃~2月10日(水)頃

※2027年以降の公的機関におけるテトの休暇期間は、現段階では未定です。ここで掲載している休暇期間は、過去の傾向から予想される期間です。

テトの時期にベトナムへの訪問や連絡を計画する場合は、この旧暦に基づく日程と長期の連休に注意が必要です。

テトの文化と伝統的な過ごし方

テトの最も大切な過ごし方は、故郷に帰り、家族や親戚と新年を祝うことです。

多くのベトナム人にとって、テトは家族全員が集まれる貴重な時間とされています。日本の盆正月のように、都市部で働く人々も一斉に故郷へ帰省します。そのため、テト直前の空港や駅、長距離バスターミナルは、帰省ラッシュで大変混雑します。

テトは、家族との絆を再確認する、ベトナム文化の根幹をなす行事です。ここからは、テトの文化と伝統的な過ごし方について見ていきましょう。

テトを迎える準備:大掃除と花市場

テトを迎えるにあたり、ベトナムでは旧暦の年末から入念な準備が行われます。これは、新年を幸運と共に迎えるため、古い年の不運や汚れを払い清めるという意味があります。

まず、各家庭では「大掃除」が行われます。日本の年末と同じように家中の隅々まで掃除しますが、ベトナムでは家を修理したり、新しい家具や衣服を新調したりすることもあるようです。

また、テトに欠かせないのが「花」です。テトが近づくと、街のあちこちに臨時の花市場が立ち並び、多くの人々で賑わいます。縁起物として、北部ではピンクの桃(Đào)の花が好まれます。南部では黄色の梅(Mai)の花や、実がなった金柑(Quất)の木が人気です。これらの花や木は、繁栄や幸運、長寿の象徴とされています。

こうした準備期間の活気ある雰囲気も、テトの醍醐味の一つです。

ベトナム南部の花市場の様子

テト当日の過ごし方:家族と新年を祝う

テトの元日(旧暦1月1日)は、家族と厳かに、そして賑やかに新年を祝います。一年の始まりをどう過ごすかが、その年全体の運気を左右すると考えられています。

大晦日の夜(旧暦12月30日の夜)は、家族全員で年越しのご馳走を食べます。そして、新年を迎える瞬間に打ち上げられる花火を見て祝います。

元日の朝は、まず家の中にある先祖の祭壇に線香をあげ、新年の挨拶をします。その後、新しい服を着て、寺院へ初詣に出かける人も多いです。

また、「ソンニャー(Xông nhà)」という独特の習慣があります。これは、新年になって「最初に来訪する人」が、その家の1年間の幸運をもたらすと信じられている習慣です。そのため、縁起の良い人(成功している人や人柄の良い人)をあらかじめ招いておくこともあります。

テト当日は、家族や親戚と過ごし、新年の多幸を祈る大切な一日です。

テト飾りの意味:赤と黄色が溢れる理由

テトの時期、ベトナムの街中や家々は鮮やかな装飾で彩られます。これらの飾りには、新年への希望や願いが込められています。

特に目立つのは「赤色」と「黄色」です。赤色は幸運、情熱、活力を象徴します。黄色は繁栄、富、幸福を象徴する縁起の良い色とされています。赤い封筒(お年玉袋)や、黄色の梅の花などがその代表です。

家の中には「五果盆(マムグークア)」を飾ります。これは、5種類の果物を祭壇に美しく盛り付けて供える習慣です。色や名前の語呂合わせで、幸運や豊かさ、子孫繁栄などを願う意味が込められています。

他にも、縁起の良い言葉が書かれた赤い掛け軸なども飾られます。これらのテト飾りは、新年の幸運を呼び込むための大切な文化です。

テト飾り

テトに欠かせない伝統料理3選

テトには、新年の食卓を彩る特別な伝統料理が欠かせません。これらの料理には、家族の健康や繁栄への願いが込められています。

特に象徴的な料理を3つ紹介します。

バインチュン(Bánh chưng)

北部で一般的な、四角い形をした大きなおこわ(ちまき)です。もち米、緑豆、豚肉などを「ゾン」という葉で包み、長時間かけてゆで上げます。大地を象徴すると言われ、テトには絶対に欠かせない正月料理です。

南部では「バインテット(Bánh tét)」という円筒形のちまきが主流です。

バインチュン

ジョールア(Giò lụa)

ベトナム風のハム(ソーセージ)です。豚肉のすり身をバナナの葉で包んで蒸したもので、上品な味わいが特徴です。テトの食卓やお供え物として定番の一品です。

ジョールア

ムット(Mứt)

ドライフルーツや野菜の砂糖漬け(お菓子)です。ココナッツ、生姜、蓮の実、金柑など種類が非常に豊富です。テト期間中に訪れるお客様をもてなすお茶請けとして用意されます。

ムット

【すぐに使える】テトの挨拶とお年玉ガイド

テトには、ベトナム独自の伝統的な文化やマナーもあります。特に、挨拶の言葉や特徴的なお年玉の習慣を知っておくと、ベトナム人の知人や同僚、取引先との関係を深めるために役立つのではないでしょうか。

ここでは、ベトナム語でのテトの挨拶やお年玉の文化について、詳しく解説していきます。日本の文化との違いを知り、円滑なコミュニケーションに役立てましょう。

テトの挨拶「チュック ムン ナム モイ」の意味&その他のフレーズ

テトの期間中には、特別な挨拶の言葉が交わされます。定番のフレーズを覚えておくと、ベトナム人との距離がぐっと縮まります。

最も一般的で万能な挨拶は「Chúc mừng năm mới(チュック ムン ナム モイ)」です。これは日本語の「明けましておめでとうございます」にあたります。

さらに、相手の健康や成功を願うフレーズもよく使われます。

Sức khỏe dồi dào(スック クエ ゾイ ザオ)
健康でありますように
An khang thịnh vượng(アン カン ティン ヴオン)
平安と繁栄がありますように
Vạn sự như ý(ヴァン スー ニュー イー)
万事うまくいきますように

ビジネスシーンでは、より丁寧な表現も使われます。例えば、「Kính chúc quý công ty một năm mới an khang thịnh vượng.(キン チュッ クイ コンティ モッ ナム モイ アン カン ティン ヴオン)」は、「貴社の新年のご繁栄をお祈り申し上げます」という意味です。

ぜひ覚えて、新年の喜びを一緒に分かち合いましょう。

大人にも渡す?ベトナムのお年玉の相場と渡し方

ベトナムにも「お年玉」の文化があり、南部では「Lì xì(リーシー)」、北部では「Mừng tuổi(ムントゥオイ)」と呼ばれています。日本のお年玉と同じく、中国に由来する文化ですが、ベトナム独自の習慣もあります。

日本と大きく異なる点は、渡す対象です。ベトナムのお年玉は子供だけでなく、上司が部下に、あるいは目上の人が目下の人に渡すことがありますです。親戚や友人の子供はもちろん、日頃お世話になっているビルの警備員さんやサービススタッフに渡すこともあります。

ベトナムのお年玉は、幸運の象徴である赤い祝儀袋に入れて渡されます。中に入れるお金は、「新札」が好まれます。これは、新しい年の幸運を祈る意味が込められています。

お年玉の相場額は幅が広く、生活環境や相手との関係性に合わせて調整されます。あくまでも目安ですが、相場は子供には2〜10万ドン(約120〜600円)程度、仕事の部下や日ごろお世話になっている人などには10〜50万ドン(約600〜3,000円)程度です。他に、ベトナムでは「赤」が縁起の良い色とされていることから、赤い5万ドン札を配るのも好まれています。

このように、生活環境や関係性に合わせて金額は調整されますが、金額の多寡よりも、新年の幸運を分かち合う「気持ち」が最も大切にされます。ベトナムのお年玉文化は、新年の幸運と繁栄を願うベトナムの素敵な文化といえるでしょう。

テトのお年玉

テト期間中の注意点(旅行・ビジネスへの影響)

テトはベトナム最大の祝日ですが、社会全体が特別な期間に入ります。そのため、この時期にベトナムを訪れる旅行者や、ベトナムと関わるビジネスパーソンにとっては注意が必要です。多くの人々が故郷へ帰省し、多くの企業や店舗も長期の休暇に入るためです。

テト期間中のベトナムの状況と、それに伴う具体的な影響について解説します。

テト期間中にベトナム旅行は避けるべき?

テト期間中のベトナム旅行は、一長一短があります。伝統的な祝祭の雰囲気を味わえる一方で、さまざまな制約も生じるためです。

デメリットとしては、まず「多くの店が閉まる」ことが挙げられます。特にテト元日とその前後は、個人商店やローカルレストランの多くが休業します。観光地や一部の大型商業施設、ホテル内のレストランは営業している場合もありますが、事前の確認が必要です。

また、交通機関が「大混雑」します。テト前後は帰省ラッシュのため、国内線の飛行機や長距離バスのチケットは非常に取りにくくなります。タクシーなどの交通手段も捕まりにくい場合があります。

一方で、メリットはテトならではの華やかな装飾や、各地での花火、人々の高揚感など、特別な雰囲気を体験できることです。

テト期間中に旅行する場合は、営業状況の確認や交通手段の事前予約を徹底することが重要です。

ビジネスへの影響は?ベトナム企業のテト休暇

ベトナムと取引がある企業は、テト休暇がビジネスに与える影響を正確に把握しておく必要があります。テト前後は、ベトナムの経済活動が一時的に停滞するためです。

多くのベトナム企業では、テト休暇を政府発表の公的機関の休暇(約1週間)よりも長く設定する傾向があります。10日〜2週間程度の連休を取る企業もあるようです。

このため、テト前後の期間は、業務連絡が取れなくなったり、物流が遅延・滞留したりします。特にテト前は貨物が集中し、港や空港が混雑するため、余裕を持ったスケジュール管理が求められます。

また、テト前には「テト賞与(テトボーナス)」と呼ばれる特別なボーナスが支給される文化があります。これは従業員の生活や帰省を支える重要な習慣です。

このように、ベトナムとのビジネスにおいては、このテト休暇を見越したスケジュール調整や、伝統的な文化・習慣への理解が不可欠です。

まとめ

この記事では、ベトナムの旧正月「テト」について、その意味や時期、文化、注意点などを詳しく解説しました。2026年のテトは2月17日で、一般的なテト休暇は2月14日(土)~22日(日)の9連休です。

テトは、ベトナム人にとって単なる新年のお祝いではありません。それは、家族との絆を深め、先祖に感謝し、自らの文化的なアイデンティティを確認する、1年で最も神聖で大切な時間です。

テトの文化や習慣を理解することは、ベトナムという国や人々をより深く知るための一歩となるでしょう。

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くらひろ編集部
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