節分いわし(柊いわし)の意味と由来は?地域差や飾り方・期間とレシピも
この記事では、節分いわしの意味・由来から、正しい飾り方や飾る期間、そして魚料理が苦手な方でもパクパク食べられる美味しいレシピまでご紹介します。今年の節分は、日本の伝統を暮らしに取り入れ、無病息災を願ってみませんか。
節分にいわしを飾る・食べる意味とは?由来を解説
節分いわしとは、魔除けや無病息災を願って、節分に食べたり、柊の枝に刺して玄関に飾ったりするいわしのことです。
なぜ節分シーズンにいわしが登場するのか、その理由をご存じでしょうか。実は、節分といわしには「魔除け」と「健康」という2つの大きな意味が込められています。
古くから日本では、季節の変わり目には邪気(鬼)が生じやすいと考えられてきました。そのため、特定の食材や植物の力を借りて邪気を払い、新しい春を清らかな状態で迎えようとしたのです。
ここでは、この興味深い風習の起源と、それぞれの行為に込められた願いについて詳しく解説します。
魔除けの「柊鰯(ひいらぎいわし)」とは?
節分に玄関先で見かける、葉のついた枝に魚の頭が刺さった飾り。これは「柊鰯(ひいらぎいわし)」と呼ばれ、日本に古来より伝わる強力な魔除けアイテムとされてきました。別名「節分いわし」や「焼嗅(やいかがし)」などとも呼ばれ、平安時代に類似の風習が記録されているほど歴史ある風習です。
柊鰯が魔除けとされる理由は、主に2つの要素の組み合わせにあります。一つ目は、いわしの頭を焼いた時に出る「激しい臭気」です。この強いニオイを鬼(邪気)が嫌がり、家に近づかないように追い払う効果があると考えられてきました。
二つ目は、柊(ひいらぎ)の葉にある「鋭い棘(とげ)」です。たとえ、鬼がいわしのニオイに負けず、家に近づいてきてしまったとしても、柊の棘が鬼の目を刺して退散させられると信じられています。つまり、柊鰯は「臭いで遠ざけ、棘で撃退する」という、鉄壁の守りを意味しているのです。

いわしを食べる理由は「邪気を払う」と「無病息災」
いわしを飾るだけでなく「食べる」ことにも、重要な意味があります。この風習には、「邪気を払う」という考え方と、「無病息災」という2つの側面があります。
前述したとおり、鬼(邪気)は、いわしを焼いたニオイを嫌うとされています。そのため、いわしを食べることで、体の中から「邪気」を消し去ることができると信じられていました。つまり、節分にいわしを食べることは、自分の中にある悪いものを浄化する意味合いがあったのです。
さらに、現代の栄養学的な視点から見ても、いわしは非常に優れた食材です。いわしには、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)、カルシウムなどが豊富に含まれています[1]。寒さの厳しいこの時期に栄養価の高いいわしを食べることは、風邪をひかずに元気に過ごすための「無病息災」の願いに直結しています。
節分いわしの風習は西日本が中心?地域差について
節分にいわしを飾ったり食べたりする風習は、全国一律のものではありません。実は、主に関西地方をはじめとする西日本を中心に根付いている文化です。特に大阪や京都、奈良などの関西エリアでは、節分の日にいわしを食べる習慣が色濃く残る傾向があります。
一方、関東地方など東日本では、節分にいわしを食べる習慣は必ずしも一般的ではありません。関東の一部では「けんちん汁」を食べる風習があるものの、そもそも節分に行事食を食べる文化自体があまり根付いていない地域もあります。
しかし、近年の恵方巻きブームに伴い、節分いわしの認知度も全国的に高まってきました。「日本の伝統的な行事を楽しみたい」「家族の健康を願いたい」という想いから、地域を問わずこの風習を取り入れる家庭が増えています。地域の違いを知ることで、日本の食文化の奥深さを感じることができるでしょう。
【初心者向け】節分いわし(柊鰯)の作り方と飾り方
節分いわし(柊鰯)は、身近な材料を使って家庭で簡単に作ることができます。お子様と一緒に工作感覚で作るのも、行事への理解を深める良い機会になるでしょう。
ここでは、初めての方でも迷わずに実践できる、正しい作り方と飾り方のステップをご紹介します。マンションなどの現代的な住宅事情に合わせた飾り方も提案しますので、ぜひ参考にしてください。
準備するものと正しい作り方の手順
まずは、必要な材料と道具を揃えましょう。スーパーの鮮魚売り場やお花屋さんで、節分シーズンになるとセットで販売されていることもあります。いわしの頭を生のまま飾る地域もありますが、一般的には焼いたものを使用することが多いため、ここではいわしの頭を焼いた作り方をご紹介します。
【準備するもの】
- いわしの頭(1個)
- 葉のついた柊の枝(1本)
- 塩(適量)
【作り方の手順】
- いわしの頭を焼く
もっとも重要な工程です。いわしの頭をグリルや網でしっかりと焼きます。このとき、煙と臭いをあえて出すように焼くことで、魔除けの効果があるとされています。 - 柊の枝を用意する
柊の枝を適度な長さに整えます。棘が鋭いので、扱う際は怪我をしないように注意してください。 - 頭を枝に刺す
焼き上がったいわしの頭のエラの部分、または目から口にかけて、柊の枝を突き刺します。枝が貫通して固定されれば完成です。

どこに飾る?玄関や軒先など飾る場所
節分いわし(柊鰯)が完成したら、効果的に邪気を払える場所に飾りましょう。基本的には、鬼(邪気)が家の中に入ってくるのを防ぐため、「家の入り口」に飾ります。
- 一軒家の場合
- 玄関の外側、軒下などに飾るのが一般的です。ドアの横や上部など、外から見える位置に設置しましょう。
- マンション・アパートの場合
- 玄関ドアの外側に飾るのが理想ですが、共有部分の規約で難しい場合もあります。その際は、玄関ドアの内側や、玄関の下駄箱の上などに飾っても問題ありません。大切なのは「邪気の侵入を防ぐ」という気持ちです。
また、臭いが気になる場合は、ラップで軽く包んだり、換気の良い場所に置いたりするなど工夫をしましょう。鬼は臭いを嫌うため、多少臭いが漏れる程度が良いとされますが、現代の生活環境に合わせて調整してください。
いつからいつまで飾る?期間の目安
「いつから飾り始めて、いつ外せばいいの?」これは、多くの方が抱く疑問ではないでしょうか。実は、飾る期間には地域や家庭によってさまざまな説があり、明確な「正解」は一つではありません。代表的な期間の目安をいくつかご紹介します。
- 節分の日のみ(2月3日頃)
- もっとも一般的で手軽な方法です。夕方に飾り、翌朝には片付けます。
- 1月中旬(小正月明け)~節分まで
- 早めに準備をして、節分当日を迎えるパターンです。
- 節分~2月末日まで
- 2月いっぱいは邪気を払うという意味で飾ります。
- 節分~翌年の節分まで(一年間)
- 神社やお寺などで授与されたものなど、一年通して飾る地域もあります。
初めて節分いわしを飾る場合は、「節分の日のみ」または節分の翌日にあたる「立春(2月4日頃)まで」と決めておくと、管理もしやすくおすすめです。無理のない範囲で、ご自身のライフスタイルに合わせて期間を決めましょう。
飾り終わった後の処分方法は?
役目を終えた節分いわし(柊鰯)を、そのままゴミ箱に捨てるのは気が引けるものです。縁起物ですので、感謝の気持ちを持って適切に処分しましょう。
もっとも丁寧な方法は、神社やお寺の「お焚き上げ」に持っていくことです。しかし、タイミングが合わない場合も多いでしょう。家庭で処分する場合は、以下の手順で「清めてから」処分するのがマナーです。
【節分いわし(柊鰯)を処分する手順】
- 塩で清める
白い紙(半紙やキッチンペーパーなど)の上に節分いわしを置き、塩を左・右・左とかけます。 - 包む
そのまま白い紙で丁寧に包みます。柊の棘が飛び出さないように注意してください。 - 処分する
自治体のゴミ出しルールに従って、燃えるゴミとして出します。他のゴミと混ざらないよう、別の袋に入れるとなお良いでしょう。
「家を守ってくれてありがとう」と心の中で感謝を伝えれば、罪悪感なくすっきりと処分できます。
節分に食べたい!栄養満点おすすめイワシレシピ
いわしは小骨が多く、子供が苦手としやすい魚でもありますが、調理法を工夫すれば、骨を気にせず美味しく食べることができます。
ここでは、はじめて作る方でも失敗しない基本の塩焼きから、定番の揚げ物、子供が喜ぶ甘辛レシピ、体が温まる汁物まで、4品のレシピをご紹介します。
定番を美味しく!基本の「いわしの塩焼き」

もっともシンプルで、いわしの旨味をダイレクトに味わえるのが塩焼きです。「生臭くなりそう」「グリルを洗うのが面倒」という方でも、下処理と焼き方のコツを押さえれば、皮はパリッと、身はふっくらとした絶品に仕上がります。
材料(2人分)
- いわし:4尾
- 塩:小さじ1/2
- 大根:100g
- しょうが:1かけ
- すだち(またはレモン):1/2個
作り方
- 下ごしらえをする
いわしはうろこを軽く落とし、頭と内臓を取り除いてよく洗い、水気を拭き取る(※魚屋で下処理済みのものを購入しても良い)。大根は皮をむいておろし、軽く水気を切る。しょうがは皮をむいてすりおろす。 - 焼く準備をする
下ごしらえしたいわしの両面に塩をふり、10分ほど置いて、出てきた水気をキッチンペーパーで軽く拭き取る。 - 焼く
魚焼きグリルまたはオーブントースター、またはフライパンにクッキングシートを敷いていわしを並べる。中火〜強火で皮に焦げ目がつき、中まで火が通るまで焼く。目安は片面4〜5分。 - 盛り付ける
焼きあがったいわしを器に盛り、大根おろしとすりおろしたしょうがを添え、半分に切ったすだちを添えて完成。
【美味しく焼くコツ】
- 下処理段階で、キッチンペーパーでいわしの水気をしっかり拭き取ることが、臭みを消す最大のポイントです。
- 盛り付けるときに上になる面(表)から焼き始め、焼き色がついたら裏返しましょう。
子どももパクパク!「いわしの竜田揚げ」

香ばしい衣と、ふっくらとした身のコントラストが楽しい、定番の揚げ物です。漬け込みダレの生姜の風味が魚の臭みを抑え、カリッとした食感とジューシーな旨味を引き立てます。
材料(2人分)
- いわし(開いたもの):4尾
- 片栗粉:大さじ3
- 揚げ油:適量
- (A)しょうゆ:大さじ1
- (A)酒:大さじ1
- (A)みりん:小さじ1
- (A)おろし生姜:小さじ1
作り方
- 下ごしらえをする
いわしは水気をしっかり拭き取り、骨があれば取り除く。ボウルに入れ、(A)の調味料を揉み込み、10分~15分ほど漬け込む。 - 衣をつける
漬けたいわし全体に片栗粉をしっかりとまぶす。 - 揚げる
揚げ油を170℃に熱し、いわしを投入する。両面がきつね色になり、カラッと揚がったら油から上げる。 - 仕上げて盛りつける
油をよく切って器に盛りつける。お好みで大葉やレモンを添えて完成。
甘辛いタレが美味しい!「いわしの蒲焼き」

甘辛いタレと香ばしい香りが食欲をそそる、ご飯が進む定番料理です。いわしの風味豊かな旨味が濃厚なタレと絡み合い、お子様から大人まで楽しめる味わいになります。フライパンで手軽に作ることができ、普段の食卓をワンランクアップさせてくれます。
材料(2人分)
- いわし(開いたもの):4尾
- 片栗粉:大さじ2
- サラダ油:大さじ1
- (A)しょうゆ:大さじ2
- (A)みりん:大さじ2
- (A)酒:大さじ1
- (A)砂糖:大さじ1/2
- (A)おろし生姜:小さじ1/2(チューブでも可)
作り方
- 下ごしらえをする
いわしは水気をしっかり拭き取り、両面に薄く片栗粉をまぶす。 - 具材を焼く
フライパンにサラダ油を中火で熱し、いわしの皮目を下にして入れる。焼き色がついたら裏返し、両面をこんがりと焼いて火を通す。 - 調味料で煮絡める
一度火を止め、(A)の調味料をすべてフライパンに加える。再び中火にかけ、調味料を煮詰めながら、いわし全体によく絡める。 - 仕上げて盛りつける
タレにとろみがつき、いわしに照りが出たら火を止める。器に盛りつけ、お好みで山椒や刻みネギを添えて完成。
身体の芯から温まる「いわしのつみれ汁」

まだ寒さが残る節分の時期には、温かい汁物が体に染み渡ります。関東地方などでよく食べられるつみれ汁は、いわしの栄養を丸ごと摂れる優秀なメニューです。
材料(2人分)
- いわし:4尾
- 長ねぎ(青い部分):5cm
- 生姜:1/2かけ
- 卵:1/2個
- 片栗粉:大さじ1
- 塩:少々
- 酒:小さじ1
- (A)だし汁:400mL
- (A)しょうゆ:小さじ2
- 塩:少々
【具材】
- 大根:3cm
- 人参:3cm
- 仕上げ用のねぎ(小口切り):適量
作り方
- 下ごしらえをする
いわしは手開きなどで骨を取り、皮を剥いて包丁で叩き、粗いミンチ状にする。長ねぎ(青い部分)と生姜はみじん切りにする。大根と人参は薄いいちょう切りにする。 - つみれのタネを作る
ボウルに叩いたいわし、長ねぎ、生姜、卵、片栗粉、塩、酒を入れ、粘りが出るまで手でよく混ぜ合わせる。 - つみれと具材を煮る
鍋に(A)のだし汁と大根、人参を入れ、火にかける。野菜がやわらかくなったら、つみれのタネをスプーンなどを使って一口大に丸めて鍋に入れる。 - 仕上げて盛りつける
つみれが浮き上がってきたら火が通った合図。味見をしてしょうゆと塩で味を調える。器に盛りつけ、仕上げに小口切りのねぎを散らして完成。
まとめ:節分いわしを取り入れて一年を健やかに
節分にいわしを飾る・食べるという風習には、家族の健康と幸せを願う、昔ながらの知恵と愛情が詰まっています。今年は節分いわしを飾って家を守り、栄養たっぷりのいわし料理を囲んでみてはいかがでしょうか。
特別な道具がなくても、スーパーで手に入る食材で気軽に始められるのが、この行事の魅力です。伝統的な節分いわしを取り入れて、邪気を払い、健やかで笑顔あふれる一年をお過ごしください。
- くらひろ by TEPCO:
初夏の魚をおいしく食べよう!旬を迎える魚とおすすめレシピ
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- くらひろ編集部
- 東京電力エナジーパートナー株式会社
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