季節の行事

【12月】師走の由来とは?意味や語源、新年を迎える日本の風習も紹介

12月を指す言葉としておなじみの「師走(しわす)」。この言葉を聞くと、「ああ、今年も終わりか」と、一年の早さを実感する方も多いのではないでしょうか。

「先生も走り回るほど忙しい月」と何となくは知っていても、「なぜ先生?」「その“師”って誰のこと?」と聞かれると、意外と答えられないもの。この記事では、そんな師走の由来や語源を、有名な説から意外な説まで分かりやすく解説します。

さらに、単なる言葉の知識だけでなく、忙しい年末に込められた日本の美しい文化や、新年を気持ちよく迎えるための風習もご紹介。この記事を読み終える頃には、慌ただしい毎日が、少しだけ味わい深いものに感じられるはずです。

師走(しわす)とは?意味と使われる時期を解説

師走(しわす)とは、日本の旧暦で12月を表す言葉です。現在使われている新暦でも、そのまま12月の異名として広く親しまれています。

この言葉は、年末の慌ただしい世の中の様子や、人々が忙しく行き交う様子を表現する際に使われるのが一般的です。「師走に入る」といえば12月になったことを意味し、手紙の挨拶で「師走の候」と書けば、年末の忙しい時期の時候の挨拶となります。

もともとは旧暦の12月を指したため、現在の暦に当てはめると1月頃になることもありました。しかし、今では「12月=師走」という認識が定着しており、年末の風物詩として私たちの生活に溶け込んでいます。

12月が師走と呼ばれる由来は?有力な3つの説を紹介

「師走」という言葉の由来には、実は決定的な定説がありません。しかし、その語源については、いくつかの有力な説が存在します。

多くの人が疑問に思う「師」とは、一体誰を指しているのでしょうか。ここからは、12月が師走と呼ばれるようになった背景について、とくに広く知られている3つの説をご紹介します。それぞれの説を読み解きながら、当時の日本の風景に思いを馳せてみましょう。

【説1】最も有名!僧侶(お師僧さん)が走り回る説

師走の由来として最も広く知られているのが、「師である僧侶(師僧/しそう)が、年末に忙しく走り回る」という説です。

昔の日本には、年末になるとそれぞれの家で法事を行い、僧侶を招いてお経をあげてもらうという習慣があったといいます。年末に檀家(だんか)の家々を訪問し、お経をあげるために奔走する僧侶たち――。その姿から「師馳す(しはす)」という言葉が生まれ、「師走」という漢字が当てられた、というわけです。

この説は、師という言葉のイメージと年末の慌ただしさが結びつきやすく、多くの人に受け入れられてきました。日本の古くからの仏教文化と、人々の暮らしの密接な関わりがうかがえる説と言えるでしょう。

【説2】神社の御師(おし)が走り回る説

僧侶ではなく、神社の「御師(おし)」が由来だとする説もあります。御師とは、特定の神社に所属し、その神社の信徒のために祈祷や参拝の案内、お札や暦の配布などを行っていた人々のことです。

とくに、伊勢神宮や富士山の御師は全国に多くの信徒を抱えていました。彼らは年末になると、お札や新しい年の暦を配るために、全国各地の信徒の家を訪ねて回ったのです。その忙しさから、御師が走り回る月、すなわち「師走」と呼ばれるようになったと考えられています。

この説は、日本古来の神道における信仰の形を背景としています。僧侶説が仏教に根差しているのに対し、こちらは神社を中心とした文化から生まれた由来として興味深いものです。

【説3】当て字や言葉の変化である説

「師」は特定の人を指すのではなく、言葉そのものが時間と共に変化して生まれたという、言語学的な視点からの説も有力です。この場合、「師走」という漢字は、もともとあった言葉の音に後から当てられた「当て字」と考えられます。

その語源とされる言葉には、以下のようなものがあります。

四極(しはつ)
一年を春夏秋冬の4つの季節と捉え、その最後の季節が終わる「四季の果つる月」が転じたとする説。
年果つ(としはつ)
文字通り「年が果てる(終わる)」という意味の言葉が変化したとする説。
為果つ(しはつ)
一年の最後にやるべきことをすべて終える、「為し果つる月」から来たとする説。

これらの「しはつ」という響きに、後世の人が年末の忙しい様子を表す「師走」という漢字を当てはめたのではないか、というわけです。この説は、特定の職業の忙しさだけでなく、誰もが感じる「一年の終わり」という概念が言葉の由来になった可能性を示唆しています。

師走の由来が「借金」といわれるのはなぜ?

「師走の由来は借金」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、年末になると、多くの商家や人々がその年につくった借金の支払いや集金に追われて走り回っていた様子から生まれた俗説です。

江戸時代には、支払いを年末にまとめて行う「掛け売り」が一般的でした。そのため、貸した側も借りた側も、お金の工面のために奔走する必要があったのです。この様子を、お金の貸主である「師」が走り回ると見立てて「師走」と結びつけたというわけです。

この説は、庶民の生活実感から生まれたユーモアのある解釈と言えるでしょう。ただし、あくまで語源としては俗説であり、先に紹介した3つの説の方が有力とされています。年末の金銭的な慌ただしさが、言葉のイメージに影響を与えた一例として覚えておくと面白いかもしれません。

師走の忙しさの本当の意味とは?新年を迎えるための日本の風習

現代の私たちにとって、師走の忙しさは仕事の締め切りや忘年会、大掃除などに追われるイメージが強いかもしれません。しかし、古来の日本において、この忙しさにはもっと深く、神聖な意味が込められていました。

師走の慌ただしさは、単に年末でやることが多いからというだけでなく、新しい年の神様である「年神様(としがみさま)」を清らかな状態でお迎えするための、神聖で大切な準備期間であったことを意味しています。

年神様は、私たちに新しい年の豊作や幸せをもたらしてくれる、とても大切な存在です。その神様を気持ちよくお迎えするために、人々は様々な準備をしていたのです。その代表的な風習を2つご紹介します。

煤払い:一年間の穢れを清める「大掃除」の起源

年末の大掃除は、今や当たり前の習慣ですが、その起源は「煤払い(すすはらい)」と呼ばれる神事にあります。

煤払いは、単に家の中の汚れを掃除するだけではありませんでした。かまどなどから出た一年分の煤(すす)を払い清めることで、家の中に溜まった「穢れ(けがれ)」を祓い、年神様を迎えるのにふさわしい神聖な空間を作るための儀式だったのです。

もともと、この煤払いは12月13日に行われていました。この日は「正月事始め」とも呼ばれ、ここから本格的なお正月の準備がスタートします。現代の私たちが行う大掃除も、こうした日本の伝統文化を受け継ぐ、新年を清々しい気持ちで迎えるための大切な営みといえるでしょう。

松迎え・正月事始め:年神様をお迎えする準備

昔の人々は、12月13日の「正月事始め(しょうがつごとはじめ)」を合図に、計画的に新年を迎える準備を進めていました。

その一つが「松迎え」です。これは、お正月の飾りである門松の材料となる松や竹を山へ採りに行く行事のこと。門松は、年神様が自分の家へ迷わずに来てくれるための目印(依り代)とされており、非常に重要な準備でした。

その他にも、おせち料理の準備を始めたり、新年のための晴れ着を用意したりと、昔の人々は心を込めて一つひとつの準備を丁寧に行っていました。こうした風習を知ることで、師走の忙しさが、新しい年への期待と祈りに満ちた、豊かな時間であったことが見えてきます。

師走以外にもある!12月のさまざまな呼び名

12月には、「師走」以外にも季節の趣を感じさせる美しい呼び名がたくさんあります。こうした言葉を知ることで、日本の豊かな言語文化に触れることができます。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。

極月(ごくげつ/ごくづき)
一年が極まる(きわまる)月、最後の月という意味です。
限りの月(かぎりのつき)
文字通り、一年の一番限り(最後)の月であることを表しています。
除月(じょげつ)
古い年から新しい年へ移る節目を表す言葉。大晦日を「除夜」と呼ぶのもこれに由来します。
春待月(はるまちづき)
厳しい寒さの先に、暖かい春の訪れを心待ちにする気持ちが込められています。
梅初月(うめはつづき)
他の花に先駆けて、早咲きの梅が咲き始める頃であることから名付けられました。
年積月(としつむつき)・年満月(としみつづき)
一年が積み重なる、あるいは一年が満ちる月という意味合いを持つ言葉です。
暮古月(くれこづき)
年が暮れて古くなっていく月、という意味合いを持つ言葉です。

これらの呼び名からは、一年の終わりを惜しむ気持ちや、新しい季節への希望など、当時の人々の繊細な感性が伝わってきます。

「師走の候」はいつ使う?年末に役立つ言葉や挨拶文

「師走の候(しわすのこう)」は、手紙やビジネスメールなどで使われる時候の挨拶の一つです。「候」は「~の季節になりましたが」という意味で、全体として「師走の季節となりましたが、いかがお過ごしですか」というニュアンスになります。

この挨拶は、一般的に12月上旬から20日頃までに使うのが適切とされています。年末の慌ただしい雰囲気を伝えるのにぴったりの言葉です。すぐに使える例文をいくつかご紹介します。

ビジネスシーンで
「拝啓 師走の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。」
プライベートな手紙で
「師走の候、寒さもいよいよ本格的になってまいりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。」
結びの挨拶として
「師走ご多忙の折とは存じますが、くれぐれもご自愛ください。」

これらの表現を覚えておくと、年末の挨拶の際に役立つでしょう。

まとめ

この記事では、12月を指す「師走」の由来となる3つの有力な説から、年末の忙しさに込められた日本の文化的な意味、そして暮らしに役立つ知識まで幅広くご紹介しました。

師走の由来には、僧侶や御師が走り回ったという説や、言葉そのものが変化したという説など、さまざまな解釈があります。そして、その忙しさの背景には、単なる慌ただしさだけでなく、年神様をお迎えするための神聖な準備期間という意味が込められています。

由来や風習を知ることで、毎年何気なく過ごしていた年末の風景が、少し違って見えるかもしれません。今年最後の月、日本の文化や季節の移ろいを感じながら、心豊かに新年を迎える準備をしてみてはいかがでしょうか。

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くらひろ編集部
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