季節の行事

お盆の食べ物とは?定番の精進料理や地域別の行事食・お供え物を紹介

家族が集まるお盆に向けて、「お盆に何を食べたらいい?」「使ってはいけない食材は?」など、お悩みの方もいると思います。また、「ご先祖へのお供え物には何がいい?」という疑問もあるのではないでしょうか。

そこで今回は、お盆の基礎知識からお盆の定番料理、地域別の伝統料理、お盆に避けるべき食材まで、お盆の食べ物を詳しく解説します。定番の精進料理・そうめん・団子の他にも、全国ではさまざまな行事食が食べられています。お盆の食べ物で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

お盆とは?食べ物・お供え物の基本知識を解説

お盆は毎年夏に行われる、ご先祖さまをお迎えする日本の伝統行事の一つです。

まずは、お盆の行事や食べ物、お供え物などの基本知識を解説します。

ご先祖さまをお迎えする夏の行事

お盆の正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といいます。ご先祖さまの霊を自宅にお迎えし、家族や親戚が集まってお墓参りして供養を行う夏の仏教行事です。

お盆の時期は、「月遅れの盆」と呼ばれる8月15日前後の13〜16日としている地域が一般的ですが、「新盆」として7月15日を中心に行われている地域や、「旧盆」として旧暦の7月15日頃(新暦では毎年8月~9月頃)に行われている地域もあります。

仏壇にお供えするものを五供(ごくう)といい、香・灯燭(とうしょく)・花・浄水・飲食(おんじき)の5つとされます。また、きゅうりとナスに割り箸を用いて馬や牛に見立てた精霊馬(しょうりょううま)を飾るのも、お盆ならではの光景です。

お盆 ナス きゅうり

食べ物はお供え物と同じものを食べるのが習慣

お盆に自宅で食べるものは、お供え物と同じであるのが一般的です。仏前や神前、霊前に捧げるものをお供え物といい、その種類は全国各地でさまざまです。

なお、捧げたものを後で食べるということではなく、捧げたものと同じ料理を別で用意して皆で食べます。これは全国で共通した習慣とされています。

【伝統料理】古くからお盆に食べられてきた「精進料理」

お盆の伝統的な食べ物としては「精進料理」が定番です。もともと、精進料理は僧侶特有の食事で、「御霊具膳(おりょうぐぜん)」と呼ばれる御膳に乗せられ、以下2つの特徴があります。

ここでは、それぞれの特徴について解説していきます。

特徴①動物性の食材や五辛五葷(ごしんごくん)は使わない

精進料理は僧侶の食事であり、取り除くべき煩悩を刺激するとされる「五辛五葷(ごしんごくん)」を使いません。五辛五葷とは、ねぎ・にら・らっきょう・にんにく・玉ねぎなど、辛味や香りのある食材を指します。

また、仏教では「五戒」という教えがあり、生き物の殺生を禁止しています。獣類・鳥類・魚類をまとめて「三厭(さんえん)」といい、精進料理では三厭は避けるべき食材とされ、動物・鳥・魚の肉や卵を使用しません。

お盆に食べてはいけない食材については、後述の「▼お盆に食べてはいけない食べ物 」でも詳しく解説します。

特徴②正式には一汁三菜か一汁五菜の形がとられる

精進料理の正式な形は、汁物を1種類におかずを3つ用意する一汁三菜、もしくはおかずを5つ用意する一汁五菜とされています。

ご飯と漬物は、おかずに含まないで数えるのがポイントです。また、漬物を切る際は枚数にも注意が必要で、身切れを連想させる3切れにするのは避けましょう。

【全国共通】お盆に食べられる定番の食べ物3選

精進料理のほかにも、全国共通でお盆に食べられているのが、「そうめん」「団子」「おはぎ・ぼたもち」です。ここでは、それぞれの料理について紹介していきます。

そうめん

そうめんは、ご先祖さまがお盆に乗る、精霊馬の手綱に見立てているとされています。また、幸せが細く長く続くようにとの願いも込められており、そうめんはお盆に食べる縁起の良い食べ物です。

細い麺は、夏バテで疲れ気味の体でも食べやすく、お盆の時期にぴったりの料理といえます。

そうめん

団子

団子もお盆に食べられる定番の料理です。お供えするタイミングによって、以下の通りに呼び名が分かれます。

お供えのタイミング 意味 味付け
お迎え団子 お盆に入るとき 家に帰るまでの疲れを癒やす あんこやみたらしなど
お供え団子 お盆の期間中 家に滞在中のお菓子 きなこやあんこなど
送り団子 お盆の終わり際 あの世に戻る際のお土産 味付けしない真っ白な団子
お迎え団子
お供えのタイミング
お盆に入るとき
意味
家に帰るまでの疲れを癒やす
味付け
あんこやみたらしなど
お供え団子
お供えのタイミング
お盆の期間中
意味
家に滞在中のお菓子
味付け
きなこやあんこなど
送り団子
お供えのタイミング
お盆の終わり際
意味
あの世に戻る際のお土産
味付け
味付けしない真っ白な団子

団子の数や味付けはさまざまあり、各地域の特色が現れるお盆料理です。

団子

おはぎ・ぼたもち

魔よけの効果を期待して作られたおはぎやぼたもちも、お盆料理の定番品です。小豆が魔よけの役割を果たすとされていて、「ご先祖さまが無事に家に帰って来られるように」という願いが込められています。

また、「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」を祈願するためにもち米が使われており、お盆のあとに迎える秋の実りを願ったとされています。おはぎやぼたもちは傷みが早いため、お供えが終わったら早めに食べましょう。

【地域別】お盆に食べられる地域の伝統料理8選

各地域には、お盆に食べる行事食として、さまざまな伝統料理が伝わっています。その中から、代表例として以下の行事食を解説してきます。

地域によって食べられているものはさまざまです。ここでは、それぞれの食べ物にまつわる話を交えて紹介していきます。

北海道や東北地方の一部:赤飯

赤飯

北海道や宮城県、秋田県などの東北地方の一部では、お盆に「赤飯」を食べる習慣があります。お盆に食べられる理由は、赤飯には魔よけの効果があるとされている小豆が入っているためという説があります。

砂糖によってほんのり甘い味のものもあり、子供にも食べやすい味付けです。

秋田県:赤ずし

秋田県の北部でお盆に食べられているのが「赤ずし」です。炊き上げたもち米を、塩もみした赤じそと酢で混ぜ合わせて発酵させたもので、赤じその彩りが鮮やかなお盆の伝統料理です。

夏バテで食欲が落ちていても、酸味のある味でさっぱりと食べられます。地域によっては輪切りにしたきゅうりを混ぜ込んだものも見られ、夏の食材を活かした行事食です。

宮城県:ずんだ餅

ずんだ餅

宮城県の郷土料理でお盆にも食べられているのが「ずんだ餅」です。特徴的な黄緑色の餡はつぶした枝豆で作られており、古くから多くの農家がお盆にずんだ餅を食べていたとされています。

ずんだ餅は、別名「ぬた餅」や「ばんだい餅」と呼ばれることもあります。

長野県:天ぷら饅頭

天ぷら饅頭

長野県の中部でお盆に食べられるのが「天ぷら饅頭」です。お盆に天ぷらを食べる風習は東北地方を中心に見られますが、長野県では饅頭に衣を付けて揚げて食べます。

饅頭に衣を付けることで、よりごちそう感のある料理として親しまれています。

京都府:あらめの煮物

あらめの煮物

京都市内を中心にお盆によく食べられているのが「あらめの煮物」です。「あらめ」とは昆布の一種の海草で、見た目はひじきによく似ています。煮物では、砂糖としょう油で甘めに味付けされます。

送り盆の際にあらめの煮物をお供えし、あらめのゆで汁を家の出入り口にまく「追い出しあらめ」の風習も残っています

大分県:タラの乾物(たらおさ)

大分県の玖珠(くす)・日田地方では、タラのエラと胃の乾物である「たらおさ」をお盆に食べる風習があります。

食料の保存技術や交通インフラが整っていない時代において、山あいの地域でタラの乾物は貴重な海の幸でした。エラの食感がコリコリとしていてやみつきになる逸品です。

鹿児島県:かいのこ汁

「かいのこ汁」は、「粥の子」がなまって呼ばれたものとされており、鹿児島県で食されているお盆料理です。かいのこ汁は精進料理の1つで、なす・かぼちゃ・芋がら(芋茎)・きくらげ・昆布などが入っており、夏野菜や大豆など具沢山な点が特徴です。

8月14日、15日の朝に作り、お供え物として仏前にも供えられます。

沖縄県:酢の物(ウサチ)

沖縄県では、「ウサチ」と呼ばれる酢の物料理がお盆に食べられます。お供え物である「ウサギムン」の副菜として添えられ、モヤシやゴーヤーなどが材料として使われます。

ウサチはお盆に食べられる他、旧正月や大晦日などの各行事でも食されていて、沖縄県を代表する伝統料理の一つです。

お盆に食べてはいけない食べ物

先述したように、お盆は仏教の教えに基づく伝統行事です。そのため、精進料理に代表されるように、お盆には仏教の教えを守った食べ物を食べるべきとされています。

お盆に食べてはいけないとされる食べ物は、「三厭(さんえん)」と「五辛五葷(ごしんごくん)」とされています。ここからは、それぞれの言葉の意味と代表的な食材について解説します。

三厭(さんえん)

「三厭(さんえん)」とは、「獣類」「鳥類」「魚類」をまとめて呼ぶ言葉です。仏教の戒律の1つである「不殺生戒(ふせっしょうかい=生き物の命を奪ってはいけない)」の考えに基づき、仏教では三厭は避けるべき食材とされています。

精進料理では、三厭は使用されません。お盆の時期も、動物・鳥・魚の肉や卵を食べることは避けた方が良いとされています。

五辛五葷(ごしんごくん)

辛味や香りが強い食材のことを「五辛五葷(ごしんごくん)」といいます。食べると煩悩が刺激されるとされており、仏教では食べことを避けられてきました。

具体的には、玉ねぎ・ニラ・葱・ニンニク・ラッキョウなどの食材が該当します。五辛五葷も精進料理には使用されず、お盆にはこれらの食材を使わない料理を食べると良いでしょう。

まとめ

お盆はご先祖さまを家にお迎えする夏の伝統行事です。定番である精進料理・そうめん・団子の他、地域ごとにさまざまな伝統料理がお供え物として捧げられ、家族で食べられています。

お盆に食べられる精進料理は、殺生を避け、煩悩を刺激しない食材を使う、仏教の教えが深く関係している料理です。今年のお盆はご先祖さまへの思いを深めながら、今回ご紹介したお盆の伝統料理を作ってみてはいかがでしょうか。

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