週に一度の涙でリフレッシュ ストレスを解消する「涙活」のすすめ
スクールカウンセラー・吉田英史氏の著書『涙活力』(玄文社)をもとに、涙活の効果や実践方法を紹介します。
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「1週間にいちど、1粒の涙を流す」ことで、ヨガやカラオケに匹敵するストレス解消効果が得られるとされる涙活。涙を誘う動画や文章があればいつでもどこでも行うことができ、1粒の涙のリラックス効果は、1週間続くともいわれています。
日々の生活で無意識のストレスを抱えている人こそ涙活に取り組んで、ストレスフリーな生活を目指しましょう。
涙で心のデトックス
「泣いたら気が楽になった」「号泣したらスッキリした」との経験を持つ人は少なくないことでしょう。涙を流すと、なぜ晴れ晴れとした気持ちになるのでしょうか。
1.涙で副交感神経が活性化する
人はストレスを感じたとき、自律神経の中の交感神経が活発になります。交感神経は身体を「戦闘モード」に変えるため、身体は極度の緊張状態に入ります。この緊張をほぐすためには、副交感神経を活発化させて、身体を「お休みモード」にする必要があります。
身体を「お休みモード」にするもっとも簡単な方法は、睡眠をとることです。眠ることで副交感神経が優位に立てば、ストレスが軽減されて疲れがとれるのです。
同様に、眠らなくても副交感神経を活発化させる方法があります。それが、涙を流すことです。泣くことで気持ちがスッキリとするのは、副交感神経が活発になり、たっぷり眠ったようなリラックス感を得られるからなのです。
2.涙活の仕組みと効果
涙の種類には大きく3つあります。
1つめは、目にゴミが入ったときや玉ねぎを切ったときに流れる「反射の涙」です。2つめは、目の潤いを保つために常に出ている「基礎分泌の涙」です。3つめは、心が揺り動かされたときに溢れる「情動の涙」であり、この涙にストレス解消効果が期待できるのです。
人は映画や音楽などに感動すると、脳の内側前頭前野(共感脳)が活発になり、副交感神経が優位の状態になります。そして、涙腺に信号が送られ、大量に分泌された涙が目から流れ出るのです。つまり、情動の涙を流す過程で、自律神経が一時的に副交感神経優位の状態にシフトし、ストレス状態にある脳がリセットされるのです。
3.涙活は短時間でも効果を発揮
涙活は、短ければ2〜3分もあれば可能であり、脳をリラックスさせることができます。
今では、インターネット動画などで、短時間で心を揺さぶられるコンテンツが配信されています。そのような動画をスマートフォンなどに入れておいて、一粒の涙を流すだけでも十分な効果が期待できます。
涙を流すタイミングは、休日の前に自宅や映画館でゆったりと行うのが理想的ですが、仕事の休憩時間やティータイムでも構いません。涙はうっすらと滲む程度ではなく、目から溢れ出る程度のほうが、脳の内側前頭前野が活発になるといわれています。
共感脳をふるわせてストレスを解消し、メリハリのついた生活を目指しましょう。
涙活に期待できるこんなメリット
さまざまな実験結果によって、涙活にはたくさんのメリットがあることがわかっています。これらの効果を意識しつつ、健やかな生活を目指しましょう。
1.免疫力のアップも期待できる
涙活に期待できる最大のメリットは、ここまで紹介してきたように、ストレスを解消する効果です。著者によると「1週間にいちど、1粒の涙でストレスフリーな生活が目指せる」そうで、涙活を体験した人から「ストレスが溜まりにくくなった」との感想が寄せられているそうです。
さらに、免疫力がアップする効果も期待できます。因果関係がはっきりと証明されているわけではありませんが、涙活を習慣づけてこまめにストレスの解消をすることで、体調が改善されたと感じる人もいるようです。
2.美容にもプラス効果が
涙活には、美容やダイエットの効果も期待できます。ストレスが溜まると身体が疲れるだけではなく、老化の一因といわれる活性酸素が過剰に生産されます。そしてその結果、シワやシミ、吹き出物などが出やすくなるといわれています。
涙を流すことを習慣化すれば、身体がストレスから解放され、リラックス状態が保たれます。すると、活性酸素の過剰な生産が抑えられ、肌をきれいに保つ効果が期待できるのです。
加えて、自律神経のバランスが整うため、血行が良くなり、質の良い睡眠へとつながります。美肌づくりには質の良い睡眠が不可欠と考えられていて、眠っている間に代謝が促されることで、肌のトラブルを抑える効果が期待できます。
3.自己肯定感や共感力が高まる
涙を流すということは、自分を見つめ直す行為でもあります。人は社会的な生き物であり、コミュニティーの中でさまざまな社会的役割を担っています。泣いているときは、こうしたプレッシャーから解き放たれ、ふだん背負っているものや、かぶっている仮面を客観視することができるのです。
自分がいまどのような状況にあって、どのような役割を背負っているのかを知ることは、前に進むための力になります。また、自分を許す気持ちを芽生えさせることもできます。自分を許せるということは、自己肯定感の向上につながり、ポジティブに生きるきっかけとなるのです。
さらに、最近では、チームビルディングを目的とした研修として、複数のメンバーで涙活を行う企業も増えています。誰かと一緒に泣くという行為は、相手との一体感や連帯感を生じさせ、共感力を育む効果が期待できます。集団での涙活によって、チームワークが向上したという話も珍しくはありません。
涙活を実践するためのコツ
涙によるストレス解消効果を習慣化するためには、自宅などで気軽に涙活を行うことが理想的です。泣くためのツボや環境づくりについて紹介します。
1.泣きのツボを見つけよう
人はどうしても、泣くことを「弱いこと」と捉えてしまいがちです。しかし、泣くことは悪いことでも恥ずかしいことでもありません。まずは、「もっと気楽に涙を流していい」と自分に語りかけ、「泣いてはだめ」という思い込みを捨てましょう。
泣きのツボというのは、人によって違います。人が何かの映像や言葉に触れて涙を流すのは、そこに自分の経験を投影するからであり、心がゆさぶられるポイントは、歩んできた人生によって異なるからです。
泣けるコンテンツを見つけるためには、自分がどのような媒体やジャンルであれば泣けるのか、インターネットなどを利用してリサーチしましょう。動画であれば、涙活を習慣化するためには、2〜3分から5〜6分程度の長さが理想的です。
映像のほかにも、絵本や手紙、音楽など、自分に合ったものを探してみましょう。
2.泣ける環境づくり
泣きやすくなる環境には、いくつかのポイントがあります。まず、外的環境です。人は薄暗い空間のほうが泣きやすい心理状況になるので、部屋の照明は落とすといいでしょう。入浴やアロマなどを上手に取り入れて、リラックスした状態で取り組むと、より涙が出やすくなります。
さらに、人の身体は朝から夜に向かって緩んでいくというバイオリズムがあるので、朝昼より夜の方が泣きやすいといえます。加えて、休みの前日は心身がゆったりするので、毎週末など、1週間に1回のペースで涙を流すのが理想的です。
次に、内的環境です。近くにハンカチやティッシュを置いておくだけで、泣くことに対する心理的なハードルを下げることができます。このように、泣きやすい環境を整えて涙活を行いましょう。
スマートフォンに泣ける映像を入れておき、休憩時間に涙するだけでも、スキマ時間を利用したストレス解消を行うことができます。
3.ときには誰かと一緒に泣いてみよう
ひとりで実践できる涙活ですが、誰かと一緒に泣くのもおすすめです。自宅で家族やパートナーと泣くのもいいですし、映画館で友人や恋人と泣くのもいいでしょう。最近では、WEB会議システムを活用して、オンラインで同じ映像を観て泣く取り組みもあります。
誰かと一緒に泣くことで得られるメリットのひとつは、泣きやすくなることです。「もらい涙」や「誘い涙」という言葉があるように、涙は伝播するものです。誰かが一緒にいて、同じコンテンツで涙を流しているという安心感も、泣きやすさにつながります。
もうひとつのメリットは、相手との関係が深まることです。一緒に涙を流すことでお互いの理解が深まり、一体感が生まれるきっかけとなるのです。もし、恋人やパートナーとすれ違いが生じたときは、一緒に感動する映画を観るといいでしょう。ふたりで同じ映画を観て泣いて、互いに泣き顔を見合うことで、仲直りができることもあるからです。
涙を流している自分はありのままであり、それを見せるというのは、自己開示につながります。そして、お互いの新たな一面を理解するためのきっかけにもなります。同じものを観て泣くことで、絆が深まることもあるのです。
まとめ
意識的に涙を流す行為を「涙活」と呼び、大きなリラックス効果を得られるそうです。短い時間でも、「1週間にいちど、1粒の涙を流す」ことで、ヨガやカラオケに匹敵するストレス解消効果が得られるとされているので、実践してみましょう。
涙活には、ストレス解消以外にも、「免疫力のアップ」「美容へのプラス効果」「自己肯定感や共感力の向上」などのメリットが期待できるといわれています。映像や音楽など自分の泣きのツボを知り、心身をゆったりとさせた状態で涙を流してみましょう。家族や恋人、パートナーと一緒に行うことで、絆を深める効果も期待できます。
『涙活力』(吉田英史著/玄文社)2021年10月出版
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