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アサーティブコミュニケーションとは?意味や実践方法を解説!

ビジネスシーンでは、相手の意見も尊重しつつ、自分の主張もしっかりと相手に伝えることが重要です。その実行に役立つのが、近年注目されている「アサーティブコミュニケーション」です。本記事ではアサーティブコミュニケーションが重要視されている背景や身に付ける際のポイント、トレーニング方法等についてご紹介します。

アサーティブコミュニケーションとは?

アサーティブコミュニケーションとは、相手を尊重しつつ自分の主張も伝えるコミュニケーション方法です。

アサーティブ(assertive)を直訳すると「断言する」「はっきり自己主張する」などという意味ですが、アサーティブコミュニケーションは、自分の意見だけを一方的に伝えるという方法ではありません。相手も自分も尊重することで、意見が対立していたとしてもお互いが納得できる結論を導き出すことを目指しています。

なお、アサーティブコミュニケーションに似た言葉として、「アサーションコミュニケーション」という言葉もありますが、どちらも同じ意味です。

アサーティブコミュニケーションが重要視される背景

そもそもアサーティブコミュニケーションは、1950年頃にアメリカで開発された、人間関係の構築を苦手とする人向けのカウンセリング手法が起源とされています。このアサーティブコミュニケーションが日本のビジネスシーンにおいて重要視されるようになった理由は、職場におけるグローバル化や多様化(ダイバーシティ化)が進み、年齢や価値観、国籍や文化などの異なる人が一緒に働くようになったことが影響しています。

会社員が会話をしている画像

アサーティブコミュニケーションを身に付けるメリット

この章では、アサーティブコミュニケーションを身に付けることで得られるメリットについて詳しく解説します。

コミュニケーション能力が上がる

アサーティブコミュニケーションでは、自分の気持ちを理解し、言葉を選びながら相手に意見を伝えると同時に、相手の意見をしっかり聞いて尊重します。どちらかが一方的に論理を押し付けたり、我慢したりすることがなく対等に会話ができるため、相手との意思疎通がしやすくなりコミュニケーション能力の向上にもつながります。

人間関係が上手くいく

どちらか一方の意見が強くなり過ぎると人間関係は上手くいきません。アサーティブコミュニケーションが身に付いていれば、意見に相違がある状態でもすり合わせを行いながら納得感を持って話し合うことが可能です。お互いがストレスを溜めずにコミュニケーションを取ることができ、結果的に人間関係が良好になっていきます。

仕事での生産性が上がる

アサーティブコミュニケーションを身に付ければ、業務における情報共有がスムーズになり、生産性が向上するというメリットもあります。ただし、一人がアサーティブコミュニケーションを身に付けても、生産性は上がりません。会社全体でアサーティブコミュニケーションを意識することが大切です。意見を主張できる人が増えると議論が活発になり、より良い案もうまれやすくなるでしょう。

ハラスメントを防止できる

アサーティブコミュニケーション自体が相手の気持ちを配慮しながらコミュニケーションを取る手法であるため、ハラスメントを防止できる点もメリットです。
ハラスメントは相手の人権や人格を傷つける行為ですが、相手の気持ちに配慮したコミュニケーションができれば、当然ハラスメントが起こりにくくなります。また、相手が上司や先輩であっても行き過ぎた言動に対しては「No」を示すなど適切に対処できるようになれば、ハラスメントの解決につながります。

アサーティブではない3つのコミュニケーションのタイプ

コミュニケーションを円滑にできるアサーティブコミュニケーション。では、「アサーティブではないコミュニケーション」とはどのようなものでしょうか。この章では、アサーティブとは言えないコミュニケーション3タイプをご紹介します。

攻撃的に自己主張するタイプ

相手の気持ちを考えずに一方的に自己主張をするのは、アサーティブではありません。なぜなら、アサーティブコミュニケーションは自分の主張だけではなく、相手の主張にも耳を傾けるコミュニケーションだからです。アサーティブコミュニケーションとは正反対のコミュニケーションと言えるでしょう。

怒られている画像

攻撃的に自己主張するコミュニケーションは、自分が優位に立ちたい・相手に負けたくないと思ってしまうタイプの方に見られます。このタイプの特徴として、相手に共感する能力が足りない場合が多いです。

受け身に徹し自己主張をしないタイプ

受け身に徹して自分の意見を伝えようとしないのもアサーティブコミュニケーションではありません。アサーティブコミュニケーションは相手の意見を尊重しますが、同時に自己主張も行うコミュニケーションだからです。

受け身に徹して自己主張をしないコミュニケーションは、相手の意見は尊重できるものの自己主張ができないタイプの方に見られます。このタイプの方には、自分より相手を優先する、頼まれたら断れないなどの特徴があります。

作為的で直接的な表現をしないタイプ

自分の意見を言葉や文字で直接的に表現せず、態度や陰口など非言語で伝えようとするのも、アサーティブコミュニケーションではありません。アサーティブコミュニケーションはお互いの意見をしっかり伝え合うコミュニケーションだからです。

直接的な表現をしないコミュニケーションは、自分の考えを整理し言語的な方法で物事を解決していくことが不得意な方などに見られます。このタイプの方の言動は、ネガティブに受け取られやすく、人間関係の構築に悪影響がでることも少なくありません。

アサーティブコミュニケーションの4つのポイント

アサーティブコミュニケーションを身に付けるために意識したい4つのポイントについて詳しく解説します。

自分と相手の気持ちに誠実になる

アサーティブコミュニケーションは自分の気持ちも相手の気持ちも尊重するコミュニケーションです。そのためには、自分と相手の気持ちに誠実でなければなりません。どちらか一方の意見だけではなく、双方の意見に耳を傾けることを意識しましょう。

素直な気持ちを伝える

アサーティブコミュニケーションにおいて、自分の気持ちを素直に伝えることは特に大切です。遠回しな表現は避け、素直な気持ちをストレートに伝えましょう。相手と意見が異なっていても、相手の意見も尊重する意思があれば、お互いが納得する答えが見つかります。

対等な立場で伝える

職場や集団行動において、「上司」や「先輩」といった目上の人を尊敬することは素敵なことです。しかし、アサーティブコミュニケーションを社内に浸透させるためには、立場や上下関係によらず対等な立場で意見を伝え合わなければなりません。まずは、人によって態度を変えないことを意識してみると良いでしょう。

面談している画像

自分にも責任があると考える

お互いが納得できる答えを導き出しても、それが成果に結びつかないこともあり得ます。この時、「自分はこう思っていたのに」などと相手の責任にするのではなく、意見を伝えきれなかった自分にも責任があると考えることが大切です。自分の責任でもあると捉えることは、相手の意思を尊重することにもつながります。

DESC(デスク)法でアサーティブコミュニケーションのトレーニングをしよう!

アサーティブコミュニケーションを身に付けるトレーニングとして最も有効な方法は、DESC(デスク)法です。DESC法とは、描写を意味する「Describe」、表現を意味する「Explain」、提案を意味する「Specify」、選択を意味する「Choose」の、4つの頭文字を取った名称のトレーニング方法のことです。

Describe(描写)では、自分の感情を交えずに客観的な事実のみを描写します。自分の感情や主観を入れないことがポイントです。

Explain(表現)では、Describe(描写)で描写した事実に対する自分の意見を、攻撃的な表現や感情的な表現を避けながら述べます。

Specify(提案)では、事実に対しての解決策や打開案を提案します。この段階は、あくまで提案ですので、相手を責めるような口調にならないように注意してください。

Choose(選択)では、提案に対する相手の返事を聞き、その返事に合わせた対応を選択します。

それではDESC法の具体例を、対上司・対同僚・対部下と関係性で解説します。

DESC法の具体例(対上司・対部下・対同僚)

相手が上司の場合

依頼されていたプレゼン資料が期日までに提出できないという状況では、次のような方法でアサーティブコミュニケーションを実践できます。

【状況】依頼されていたプレゼン資料が期日までに提出できない

Describe(描写) 「申し訳ありません。作業が遅れているため○○時までには提出できません」
Explain(表現) 「事前に相談すべきでしたが、自分の作業スピードを過信してその場しのぎで完成させようとしてしまいました」
Specify(提案) 「期日を延長していただけないでしょうか?」
Choose(選択)
  • 答えがYESであれば、「ありがとうございます。必ず間に合うようにします。」
  • 答えがNOであれば、「同僚に手伝ってもらえないか相談します」

相手が部下の場合

【状況】依頼したプレゼン資料が期日までに提出されない。

Describe(描写) 「○○時までに提出をお願いしていた書類、まだもらっていないよ」
Explain(表現) 「私が資料確認する時間や資料をブラッシュアップする時間も確保しないといけないから困るよ」
Specify(提案) 「もし間に合わなそうだったら、もっと早い段階で気づいて相談するようにしてね」
Choose(選択) 「今後は、確認のために締め切りを1日前倒しにしてもいいかな?」

相手が同僚の場合

【状況】緊急で仕事を依頼したい。

Describe(描写) 「○○時までに提出しないといけないプレゼン資料がまだできていないんだ」
Explain(表現) 「忙しいところ申し訳ないんだけど、ここの部分だけでも手伝ってもらえないかな」
Specify(提案) 「これが提出できたら、今○○くんが困っている仕事を手伝うよ」
Choose(選択)
  • 答えがYESであれば、「本当にありがとう!今後必要な資料があったら言ってね」
  • 答えがNOであれば、「急にごめんね。他の人に相談してみるよ」

このように、DESC法を意識して段階的にアサーティブコミュニケーションのトレーニングをしましょう。

まとめ

相手の意見も自分の意見も尊重し、お互いに納得のいく答えを導き出すアサーティブコミュニケーション。70年程前からあるコミュニケーション方法ですが、近年のグローバル化やダイバーシティ化によって特にビジネスシーンで重要視されています。
アサーティブコミュニケーションを身に付けて、職場などで良好な人間関係の構築を図りましょう。

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