子育て

パパもしっかり理解しよう 働くママの育休と職場復帰

育児休業を取得したのちに職場復帰し、育児と仕事の両立を目指す人が増えてきました。ここでは、育休後コンサルタント・山口理栄氏と、特定社会保険労務士・新田香織氏の著書『改訂版 さあ、育休後からはじめよう~働くママへの応援歌~』(労働調査会)をもとに、育休取得や職場復帰のポイントを紹介します。


育児をしながら、キャリアアップをすることは、一般的に難しいと考えられているかもしれません。しかし、育児と仕事は、どちらかを選んでどちらかをあきらめなければならないというものではないはずです。産休(産前・産後休業)や育休(育児休業)を取るまでのステップや、職場に復帰するまでの準備など、ここに紹介する内容を、育児と仕事を両立させるためのヒントにしてください。

育休取得から職場復帰までの流れ


働くママが産休や育休を取得して職場復帰するには、一般的に、職場への報告に保育園の選定など、いくつかの準備を重ねていく必要があります。パートナーであるパパと情報共有をしながら、ひとつひとつクリアしていきましょう。

1.妊娠の報告と産休の取得

子どもができたとわかったとき、「安定期になってから報告しよう」と思う人も多いことでしょう。しかし、上司にはなるべく早く報告することが望まれます。なぜなら、出産前後は短くて4カ月、長ければ3年ほど休職することになるため、職場側では、仕事を他の人に割り当てたり、場合によっては社員の異動や人材の雇用をしたりする必要があるからです。
産休に入る際は、育休期間(復職予定日)を決める必要があります。保育園の入園許可が出ないなどの理由で、育休期間を延長する可能性があるかどうか、あるならいつまでに確定するかなども調べておきましょう。仕事の引き継ぎにあたっては、誰が見てもわかりやすい、間違いのない資料を作成するように心がけましょう。

2.産休・育休中の職場への連絡と過ごし方

産休や育休の期間は、定期的に職場と連絡を取り合うようにすることが理想的です。出産日は産休や育休の期間を決定する起点となるので、なるべく早く報告しましょう。休職中にも上司や同僚と適度なコミュニケーションをとることができれば、職場復帰への焦りや不安を軽減できることがあります。
また、育休中は、子どもが外出できる月齢になったら、子連れで外出をしてみましょう。子育て世代の出会いの場として、地区ごとに設けられている「地区センター」や、NPOなどの市民団体が運営する「子育て支援拠点」、保育園が定期的に行う「保育園の園開放」、キッズスペースが設けられた「親子カフェ」などがあります。市区町村の広報誌やインターネットなどで情報収集をしながら利用することで、視野を広げることができます。

3.復職にともなう環境の整備

テレワーク導入の推奨により、子どもの具合が悪いときは自宅で作業ができるという職場が増えています。とはいえ、出産や子育てを機に引越しを考えるのであれば、少しでも職場の近くに住むというのも選択肢のひとつです。自宅や保育園と会社の移動時間が短くなれば、出社せざるを得ない日でもすぐに駆けつけられたり、有給休暇が1日ではなく半日で済んだりする場合があるからです。
また、育児と仕事の両立から住む場所を考えたとき、保育園時代の子育てに適した場所と、小学生を育てるために適した場所が、一致しない場合もあります。そんなときは、現時点で仕事と育児が両立できる場所を優先するといいでしょう。子どもに手がかかる保育園時代は、時間的な余裕が少ない大変な時期といえます。最終的に住む場所を決めるのは、子育てが少し落ち着くまで先延ばしにするという考え方も、間違いではありません。
実際に保育園を選ぶときは、行政の窓口で最新情報を得ることから始めましょう。待機児童が多い地域では、第一希望に入園できなかったときのために、第二や第三の候補を選んでおく必要もあります。

職場復帰後の子育て環境の整備


職場復帰後は、仕事と並行して、保育園の送り迎えや食事、寝かしつけなどを行う必要があります。ママとパパで協力をしながら、ときに外注サービスを利用するなどして、無理をしすぎないように家事や育児に臨みましょう。

1.子どもの病気への備え

育児をしながら仕事をしていると、子どもの病気で職場に行けない日が来ることが想定されます。テレワークで作業したり、パートナーが休んだりして対処できる日もあるでしょう。しかし、そうできない日に備えて、早めに対策をしておくことが望まれます。住んでいる地域の病児保育やファミリーサポートサービスを調べて、登録しておきましょう。
ちなみに、乳幼児期の子どもは、親が気をつけていたとしても、熱を出したり風邪を引いたりするものです。子どもの病気に対しては必要以上に自分を責めずに、冷静に対処しましょう。子どもの様子がおかしいと気づいたときは、「仕事を休むべきかどうか」という考えが頭をよぎるかもしれません。そんなときに備えて、大原則として「子ども優先」と決めておくと、気持ちが楽になるでしょう。

2.保育園と便利なサービス

保育園は、仕事中の子育てのパートナーとして、信頼できる存在です。家庭での子どもの状態について、できる限り情報を共有し、気になることは積極的に相談しましょう。保育士との連絡は、送迎時に口頭やノートで、体温・食事・睡眠時間などの情報を交換するのが一般的です。ここでも上手にコミュニケーションをとりながら、良好なパートナーシップ関係を築きましょう。
また、子育ての負担を軽減するには、家事の時間を節約することが近道です。食洗機や全自動洗濯乾燥機、掃除ロボットなどの便利な家電製品はもちろん、さまざまなサービスの利用も検討してみましょう。生協などの宅配サービスやネットショップなら、買い物の時間を短縮することができます。さらに、夕食など食事の宅配サービスや、掃除などの家事代行サービスも、子育て世代から注目を集めています。

3.小1の壁

子どもが小学校1年生になると、いわゆる「小1の壁」と呼ばれる2つの課題を意識する必要があります。
1つめは「子どもの問題」です。保育園のうちは、基本的に子どもは親か保育士の管理下にありまが、小学生になると、一人で行動する機会が増えます。すると、「朝は子どもを家から送り出せるか」「夜は子どもより先に帰宅できるか」「学校や学童保育までの道は安全か」「夏休みの預け先はあるか」など、子どもの安全や管理について、さまざまな問題を解決しなければなりません。
2つめは「親の問題」です。小学校では、親が出席すべき行事や会合が平日に行われることが多く、仕事を休まなければならない場面が生じます。小学校は保育園と違って、子どもの様子を毎日のように報告してくれるわけではないので、1年生のうちはなるべく参加するように心がけましょう。

職場復帰後の仕事への向き合い方


復職後は、育児のために残業ができなかったり、休まざるを得なかったりする場面があるかもしれません。そこでやみくもに「迷惑をかけているかも」と心配するのなら、パパとの連携や各種サービスの利用など、万全の体制を整えましょう。「できる限りの対策はしている」という納得感があれば、子どもの病気などに冷静な判断ができ、職場に必要以上の負い目を感じずに済むはずです。

1.1日1日をゆっくり積み上げよう

復職した直後は、1日1日を確実に積み重ねるように意識してみてはいかがでしょうか。たとえ長い時間の勤務ができなかったとしても、自分が持っているノウハウを周りの人とシェアすることで、組織全体の仕事をサポートすることができます。
たとえば、誰かが苦戦している仕事に関して、「私はこんなファイルを使っていましたがお役に立ちますか」と差し出すのも、チームの貢献になります。さらに、その声がけが他の問題を解決するきっかけになるかもしれません。短い時間しか働けなかったとしても、自分の知識や技術を周りの人に提供するという気持ちで仕事をしていれば、組織にとってかけがえのない存在となることができるでしょう。
自分の将来は、自分で決めることができます。会社の中のポジションではなく、「5年後はこんな働き方をしたい」のように、自分に合った目標を立てつつ、1日1日をゆっくりと積み上げてみてはいかがでしょうか。

2.フルキャリという生き方

「フルキャリ」とは、仕事も子育ても大切にしたいと考える女性の生き方で、キャリア重視の「バリキャリ」でも私生活重視の「ゆるキャリ」でもない生き方として近年注目されています。とはいえ、キャリアや育児に対する意識は、人によって異なります。自分にとって大切なポイントは何かをよく考えて、満足度の高いライフスタイルを模索しましょう。
フルキャリを続ける中で、仕事上のチャレンジやスキルアップに意欲が出てきたとき、社内のフルキャリで活躍する女性が気になるかもしれません。お手本を見つけて近づく努力をするのは間違ったことではありませんが、上記したように価値観は人それぞれです。1人だけを妄信するのではなく、「あの人の仕事の姿勢」「この人の時間の使い方」など、たくさんの情報を集めて、自分と波長の合うスタイルを取り入れていきましょう。
フルキャリのルールは1つ、「自分の好きな方法を選択し、その結果に自分で責任を保つこと」です。

まとめ

産休や育休を取得して職場復帰するには、「妊娠の報告と産休の取得」「産休・育休中の職場との連絡」「復職にともなう環境の整備」など、いくつかのステップがあります。ママとパパで情報共有をしながら、時間に余裕のある時期から準備を重ねましょう。
特に、子どもが病気になったときの備えについては、万全にしておくことが望まれます。「できる限りの対策はしている」と納得できる体制を整えることができれば、子どもの病気などに冷静な判断ができ、職場を休まざるを得ない場合も過剰なストレスを感じずに済むでしょう。
復職後は、周囲との働き方の違いに焦らず、1日1日をゆっくり積み上げましょう。自分にとって大切なポイントは何かを考えて、フルキャリという生き方を選ぶのも一案です。

書籍紹介:改訂版 さあ、育休後からはじめよう~働くママへの応援歌~』(山口理栄、新田香織著/労働調査会)2016年5月出版

改訂版 さあ、育休後からはじめよう~働くママへの応援歌~』(山口理栄、新田香織著/労働調査会)2016年5月出版

出版社書籍紹介:改訂版 さあ、育休後からはじめよう~働くママへの応援歌~』(山口理栄、新田香織著/労働調査会)2016年5月出版
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