教えて家電王!Vol.15 家電王の快眠講座(3) 最新テクノロジーで睡眠はさらなる次元へ進化する
明かりや空気といった我々を取り巻く環境を家電でコントロールし、良質な睡眠を追求する「家電王の快眠講座」。第3回目は、眠りの質を大きく左右する“音”という観点から睡眠を考えてみます。
川のせせらぎや波の音など自然の音はリラックス効果があるとされていますが、それは自然の音が「1/f(エフ分のいち)ゆらぎ」と呼ばれるリズムを発していて、それが人の脳をリラックスさせるアルファ派を発生させるからと言われています。睡眠が脳波と密接な関係にあるのは今やよく知られた話ですが、今回紹介するのはその進化形。
最新のテクノロジーを搭載した睡眠家電を使って、睡眠の質をあげてみてはいかがでしょうか。
教えてくれる人
中村 剛
(なかむら つよし)さん
東京電力エナジーパートナー株式会社 勤務
2002年に『TVチャンピオン』スーパー家電通選手権で優勝し、銀座にて体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営に従事。現在は“家電王”として動画マガジン『くらしのラボ』をFacebookとYouTubeで毎週配信しているほか、テレビや雑誌、新聞などの様々なメディアで暮らしに役立つ情報を発信している。無類のネコ好き!
目次 [CLOSE]
睡眠を阻害する突発的な騒音を“マスキング”するBose「Sleepbuds Ⅱ」
最初にご紹介するのは、高品質な音響機器で知られるBOSEから発売されている「Sleepbuds Ⅱ」。実はこれ、私も愛用しています。
小型のイヤホンのように見えますが、好きな音楽などを再生することはできません。あくまでも睡眠用に特化した製品なのです。
この製品の機能は、睡眠を妨げる騒音を防ぎ心地良い音や音楽で深い眠りに導くというもの。
屋外の騒音や、同室にいるパートナーのいびきなどで、たびたび目が覚めてしまうという方は多いのではないでしょうか。そういう音に対してBOSEが開発したのが「ノイズマスキング」という技術です。
イヤホンやヘッドホンを探していて「ノイズキャンセリング」という言葉を目にしたことはありませんか?
字面からなんとなく騒音をカットするのだろうというイメージは湧くと思いますが、簡単に仕組みを説明すると、イヤホンに搭載された超小型マイクが、周囲のノイズの周波数を拾ってその逆相の信号を発生させ、音波をぶつけることで両方の音を消し去るというもの。イメージ通りノイズをキャンセルする機能です。音楽や映画など、特定の音に集中して楽しみたいときはこちらの機能を備えたヘッドホンやイヤホンが活躍します。
「Sleepbuds Ⅱ」が採用している「ノイズマスキング」という機能は「ノイズキャンセリング」とは全く異なり、外部の音とは異なる音を発生させ、脳にある音を感知する仕組みに作用するというもの。ある一定の周波数の音を規則的に発生させることで突然の騒音や不快な音を脳が感知しにくくなるので、屋外にときどき通る車やバイクのエンジン音、パートナーのいびきなどに効果的なのです。
「Sleepbuds Ⅱ」では好きな音楽を聴くことはできないのですが、眠りのために最適化されたサウンドコンテンツが用意されています。
そのうちノイズマスキング効果を備えた音は20種類。降り注ぐ雨の音や焚火のパチパチという音など、規則的な音が騒音を消してくれます。また、降りしきる雨や打ち寄せる波の音など自然界の音をブレンドし、スムーズに眠りに導く音を集めた「風景」や、心と体をリラックスさせる音楽を用意した「静けさ」など35種類の音源が用意されており、好みに応じて選ぶことができます。
「Sleepbuds Ⅱ」を使用するにはスマホのアプリが必須。専用アプリをダウンロードしてペアリングします。入眠時に音楽や音を流す時間の設定ができるほか、アラーム機能も用意されており、アラームは曜日ごとに異なる時間を設定できます。
イヤープラグが一晩中耳に入っているのは不快なのでは?と思われるかもしれませんが、小型で柔らかく、フィット感に優れた素材なので、普段からイヤホンをされている方ならほぼ気にならないでしょう。寝返りを打ったり、横向きで寝たときも、外れたり痛みを感じるということはありませんでした。また、バッテリーはフル充電で10時間。バッテリーの消費を抑えるために、サウンドコンテンツはストリーミングではなく、イヤーチップに音源をダウンロードして再生する仕組みを採用しているのがユニークですね。
実は私はショートスリーパーで、毎日4~5時間くらいの睡眠時間なんです。睡眠時間が短くても元気に毎日が送れているのは、「Sleepbuds Ⅱ」のおかげで充実した睡眠が得られているからかもしれません。
眠りの深さをコントロールするフィリップス「SmartSleepディープスリープ ヘッドバンド2」
もう少し、睡眠にアグレッシブに取り組むならこちらはどうでしょう。フィリップスが発売した睡眠用ウェアラブルヘッドバンド「SmartSleepディープスリープ ヘッドバンド 2」は、脳波を計測し、睡眠が深くなったタイミングで500-2000Hzのオーディオトーンを流すことで睡眠の質を高める製品です。
フィリップスといえば、日本では歯ブラシのイメージが強いかもしれませんが、オランダを拠点に世界100ヶ国以上で展開するヘルステックカンパニー。2030年までに30億人の人々の生活を向上させるというビジョンを掲げ、予防医療や診断、治療、そしてホームケアに力をいれています。
2019年に発売された本製品の初期版はメーカーの予想を上回るスピードで売れ、人々の睡眠に対する不満や、ニーズの高さを証明しました。2021年1月にリニューアルされた際には眠りに導くためのスリープサウンドやアラーム機能が追加され、就寝から起床までをトータルでサポートしてくれるようになりました。
こちらの製品もまずはスマホとのペアリングが必須。就寝前にヘッドバンドを頭に装着し、スマホのアプリで脳波が計測されているかを確認します。
就寝前は眠りをサポートする音を流すこともでき、レインフォレストや波などの4種類から選べます。この音は、脳波で眠りを感知すると自動的に停止するので、睡眠を妨げることはありません。骨伝導スピーカーを採用しているので、耳にイヤホンが入っているのが苦手という方にもおすすめです。
いざ睡眠に入るとそのなかでも最も深い眠りが訪れたときに500-2000Hzの断続的なオーディオトーンが流れます。その音が深い睡眠時に出現するスローウェーブを活性化させて、深い睡眠の質を高めるというのですが、音が発生するのは眠りの最も深いとき。なので、音を意識して聞くことができないのが残念ですね(笑)。
この製品は、目覚めを快適にしてくれるというメリットもあります。眠りのサイクルはおよそ90分間隔と言われ、その間に浅い眠りと深い眠りを繰り返し、一晩にそれを3~5回繰り返します。スムーズに起きるには、眠りの浅いタイミングで起きるのがベストなのですが、自分でそのタイミングを計るのは至難の業ですよね。それを可能にするのがスマートアラーム機能です。脳波を測り、セットした時間の30分前までの眠りの浅くなったタイミングでヒーリングサウンドを流し、自然な目覚めに導いてくれます。
起床後はスマホアプリと同期しましょう。すると、昨晩の眠りのスコアが表示されます。
眠りについた時間や、眠りの深い時間、オーディオトーンによってより深い睡眠が得られた時間、起床時間などが表示され、自分の眠りが手に取るようにわかるのもおもしろいですね。
この製品は慣れるまでに少し時間がかかるかもしれません。頭に巻くので最初は少し気になってしまったり、就寝中に外してしまったりということもあるようですが、2週間もするとだいたいの方が慣れるようです。。睡眠の質を上げるという機能で充実した眠りが得られるのはもちろんですが、決まった時間にベッドに入って、体を休めるということを意識するようになるので、生活自体が規則的になり、深い眠りが得られるような体、精神状態に変化するという効果もあるようです。
3回にわたりお届けしてきた快眠講座。生活の多様化やストレスなど、現代にはさまざまな不眠の要素があります。不眠はとてもつらいもの。日中の生産性が落ちるだけでなく、おもわぬ事故につながったり、長期的には体を壊してしまう原因になるかもしれません。あまりにひどい場合は医師に相談することをおすすめしますが、不眠が物理的な原因や環境によるものならば、家電を用いることで改善するかもしれません。不眠にそこまで悩んでいない方も、スリープテックを取り入れればより充実した毎日が送れるかもしれませんよ。
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