医師監修:半身浴の正しいやり方・効果とは?入浴時間・適切温度も解説
そこでこちらでは、全身浴との違いや半身浴のメリット、さらに入浴時間や適切な温度設定などを踏まえた、半身浴の正しいやり方を解説します。合わせて、半身浴を行う際の注意点についても触れているので、ぜひご覧ください。
監修者
- 井上 信明(いのうえ のぶあき)
- 医師/公衆衛生学修士(MPH)
日本の医学部を卒業後、アメリカとオーストラリアで医師として7年半勤務。
目次 [CLOSE]
半身浴とは?全身浴との違いを解説
半身浴とは、浴槽に少し低めの温度のお湯をため、みぞおちの近くまで浸かる入浴方法のことです。
肩まで浸かる全身浴に比べると、時間やお湯の温度などにも違いがあり、期待できる効果も異なります。
半身浴は「38~40℃」でゆったりと楽しめる
半身浴では、お湯の温度を38~40℃程度に調整します。全身浴では温度の目安が40℃(※至適温度は42℃)なので、少しぬるいくらいです。
この温度でゆったりとお湯に浸かることで、身体をゆっくりと温めていきます。
半身浴の入浴時間は「20~30分」が目安
全身浴でのお湯に浸かる時間は10分程度が目安です。温かいお湯に浸かり、短時間で身体を温めるのが目的です。
一方、半身浴は20~30分程度が目安となります。じっくり時間をかけ、リラックスした状態で入浴を楽しみます。
半身浴で得られる効果・メリット
入浴では、「温熱」「水圧」「浮力」という3つの作用が働きます。これは全身浴だけでなく、半身浴でも同様です。その結果、具体的には温熱による体温上昇や安眠効果、水圧によるむくみの改善、浮力によるリラックス効果などがあります。
上記を踏まえ、半身浴で得られる効果・メリットの一部をご紹介します。
①疲労回復効果
身体が温まると血管が拡がり、血行が促進されます。温まった血液が全身を巡れば、身体が芯まで温まり、新陳代謝が促進されて疲労回復につながります。また半身浴では、副交感神経が優位になりますが、その結果リラックスした状態で眠りにつくことができます。
なお、半身浴には全身浴と比べて身体への負担が少ない、という特徴があります。これは、人はお湯に浸かると熱だけでなく、水圧によって少しずつ体力を消耗していくからです。半身浴であれば負担を軽減しつつ、リラックスしたままバスタイムを過ごせます。
②冷え・むくみの改善
じっくり時間をかけて半身浴に浸かると、身体が隅々まで温まります。芯から温まれば、冷えの解消につながるでしょう。
加えて、下半身に対してかかる水圧が、長時間の立ち仕事による下半身のむくみの改善に効果的です。温熱の作用によって促進された血液やリンパの循環の影響もあり、体液が心臓へと押し戻されるので、むくみ解消に役立つのです。
③美肌・ダイエット効果
時間をかけて行う半身浴は、毛穴を開き、肌の汚れや余分な皮脂を排出しやすくする効果があります。そのため、美肌効果も期待できるでしょう。
また、半身浴には基礎代謝を高める効果があります。花王と北海道大学の共同研究である「半身浴による生理変化」[1]によると、週3回30分の半身浴を4週間継続することで、安静時のエネルギー消費量が1日あたり平均約200kcal増加したとのことです。ダイエットをする方にも、半身浴はおすすめの入浴方法と言えるでしょう。
半身浴を行う際に準備しておくこと
半身浴を行う際には、水分補給や上半身の冷えの防止などに考慮する必要があります。併せて、よりリラックスできるアイテムも活用しましょう。
水:こまめな水分補給で脱水予防
半身浴は長い時間行うことが多いため、水分補給が大切です。発汗によって体内の水分が失われると、脱水や熱中症などのリスクが高まります。最悪の場合、脳梗塞などの重篤な疾患を引き起こす可能性もあるため、その予防に努めましょう。
まずは入浴の30分前程度から、少しずつ水を飲むようにしてください。バスルームにもペットボトルや水筒を持ち込み、入浴中にもこまめな水分補給を心がけましょう。お風呂から上がった後は、身体から大量の水分が失われている可能性があります。そのため、入浴後の水分補給も忘れないでください。
タオル:上半身の冷えを防ぐ
半身浴中は身体全体を温めてくれますが、寒い時期などは上半身が冷えやすくなります。そのため、タオルを羽織るようにして冷えを防止しましょう。なお、タオルが濡れた状態だと、反対に身体の熱を奪ってしまいます。使用するタオルは乾いたものを用意し、できる限り濡れないように注意してください。
また、浴室自体が寒かったり、上半身が濡れたままで半身浴をしたりするのは冷えにつながります。浴室の温度は、ヒートショック(急激な温度変化による健康障害)を防ぐためにも、室温や脱衣所と大きな温度差にならないように調整し、上半身を極力濡らさないことを心がけましょう。
入浴剤:温浴効果やリラックス効果UP
入浴剤には、保温効果を高めて湯冷めを防いだり、血管の拡張作用を高めたりする「温浴効果」があります。商品ごとに効能は異なるため、パッケージの記載を確認したうえで選ぶようにしましょう。
また、香りには心身をリラックスさせる効果があるとされています。ご自身が好きな香りの入浴剤を使えば、よりリラックスした状態で半身浴を楽しめます。
半身浴の正しいやり方・入浴手順
ここからは、より具体的な半身浴のやり方・手順をご紹介します。ステップの順に記載した後、知っておきたいポイントについても解説します。
- STEP1:38~40℃でお風呂を沸かす
- お湯は少しぬるく感じる温度に設定します。浴槽へ座ったときに、みぞおちの高さになるまでの量をためてください。
- STEP2:入浴準備をする
- 30分前の水分補給や、タオル、入浴剤の準備などをしておきます。
- STEP3:入浴の前にかけ湯をする
- お湯に慣れるため、下半身にかけ湯をします。上半身が濡れないよう注意してください。
- STEP4:5分湯船に浸かった後、髪・身体を洗う
- 5分程度の入浴は身体を温めます。皮脂や汚れが発汗によって柔らかくなった後で、髪と身体を洗いましょう。その後、上半身をタオルで拭きます。
- STEP5:湯船に20分程度浸かる
- ここからが半身浴の本番です。20分を目安とし、長くても30分程度、お湯に浸かりましょう。なお、お湯を冷やさないように、浴槽にフタをするのがポイントです。
- STEP6:浴室内にタオルを持ち込んで拭く
- 濡れたまま浴室の外に出ると、急激な温度変化で身体に負担がかかります。また、保湿のためにも、半身浴では浴室内で身体の水分を拭き取るようにしましょう。
- STEP7:寝間着に着替えて髪を乾かす
- 半身浴後は身体を冷やさないためにも早めに寝間着に着替え、髪を乾かします。
半身浴を行う際のポイントは以下のとおりです。
- お湯の量はみぞおちの高さまでためる
- かけ湯の際は上半身が濡れないよう注意
- 最初に5分程度の入浴で体を暖める
- 皮脂や汚れが発汗によって柔らかくなった後で髪と身体を洗う
- 半身浴中はお湯を冷やさないように浴槽にフタをする
半身浴をするときの注意点
最後に、半身浴を行う際の注意点をまとめます。場合によっては、身体に大きな被害をもたらすこともあるため、十分に気をつけて半身浴を行うようにしましょう。
急激な体温の変化を起こさないようにする
冬場の入浴は、ヒートショックを引き起こす可能性があります。これは、急な温度の変動で血圧が大幅に変わり、健康に害を及ぼすことがある現象です。とくに、冬に脱衣所などの寒い場所から突然熱いお湯に入ることで起こります。
寒い場所にいると血管が収縮し、血圧が上昇しますが、急に熱いお湯に浸かると血管が拡張して一気に血圧が低下することが影響します。冬の居間は暖房が効いている場合が多いですが、脱衣所や浴室は寒いままのこともあります。そうすると暖かい部屋から寒い部屋、そして熱いお湯へと急激な温度変化を繰り返すため、ヒートショックを起こすリスクが高まります。
ヒートショックを予防するには、慣らしのためのかけ湯が大切です。心臓から離れた下半身だけにかけ湯をすることで、血圧の変化を緩やかにできます。また脱衣所を少し暖かくしておき、急激な温度変化が起きないようにしておくことも有効です。
ちなみに、半身浴は全身浴に比べて、血圧が変動しにくいという特徴があります。ヒートショックを起こしやすい高齢者の方には、とくにおすすめの入浴方法です。
食後・飲酒後すぐの入浴は控える
食べた直後は一時的に血圧が低下するため、食後すぐに入浴すると、水圧の影響を受けて内臓が圧迫されて体に負荷がかかります。入浴は食前に行うか、血圧が落ち着く食後1時間程度まで待つことをおすすめします。
また、飲酒後は血管が拡張して血圧が低下する傾向にあります。そのため、飲酒後すぐに入浴すると、さらに血圧を下げることにつながるため避けた方が良いです。さらにアルコールの利尿作用による脱水や、酩酊による転倒のリスクもあります。これらのリスクを踏まえると、飲酒後の入浴は控えた方が良いでしょう。
体調が優れないときは入浴を控える
体調が優れないタイミングでの入浴は避けた方が良いでしょう。確かに半身浴は身体への負担が比較的少ない入浴方法ではありますが、それでもある程度の体力消耗が考えられます。体調が戻ってから、ゆっくりと半身浴を楽しむようにしましょう。
まとめ
身体への負担が少なく、それでいてさまざまな効果が得られる半身浴。長風呂が好きという方にも、よりおすすめの入浴方法です。
今回の記事でご紹介したやり方や注意点を踏まえて、ぜひ半身浴を楽しんでください。
- 日温気物医誌第70巻3号2007年5月:
半身浴による生理変化
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