ムダなイライラを遠ざけよう 怒りと付き合うアンガーマネジメント
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アンガーマネジメントの目的は、怒らなくなることではありません。怒る必要のあることに対しては上手に怒り、怒る必要のないことに対しては怒らなくて済むようになることです。イライラの感情は伝染しやすいため、自分がイライラすれば、部下など周囲の人たちもイライラしてしまいます。ストレスなくチームで仕事をするヒントとして、アンガーマネジメントを取り入れましょう。
人間関係でイライラしないために
社会では、さまざまなコミュニティで、さまざまな人との交流を経験します。どんな環境でも、人に対してイライラしてしまうと、その場の空気に悪影響を与えます。最初に、人間関係でイライラしないためのポイントを紹介します。
1.自分の時間は好きな人のために使う
人間関係を「他人からどう見られているか」で考えると、無意識に「誰からも好かれるような人になろう」として、ストレスを感じてしまいます。これを防ぐには、人間関係を単純に「つき合いたいか、つき合いたくないか」で考えてみましょう。「つき合いたくない人とはつき合わない」と判断しても、人生が大きく崩れることはないものです。
つき合いたい人とだけつき合うというのは、時間の節約につながります。つき合いたくない人とつき合うということは、その人と対面しているときだけではなく、その人のことを考えているときも、時間を浪費しているからです。貴重な時間を「好きな人との関わりのために使う」と選択することは、自分の人生の質を上げるのに大切な考えといえるでしょう。
2.必要以上に頑張らない
自分が期待されていると思うと、それに応えようと必要以上に頑張ってしまう人がいます。頑張ることは悪いことではありませんが、期待に応えられなかったときに罪悪感を覚えたり、自分を責めたりするようであれば問題です。
人間関係は、経済活動における等価交換のように、自分が100円を支払ったからといって、誰かが100円分の価値を返してくれるとは限りません。何かに取り組む際に「相手はこれくらいの価値を返してくれるだろう」と思った時点で、人間関係を経済活動に置き換えていることを認識しましょう。自分が期待に向き合ったときには、純粋に人間関係として期待に応えたいのか、それとも、経済活動として期待に応えたぶんの見返りを求めたいのか判断しましょう。ムダにイライラしない人は、その見極めができる人といえます。
3.SNSにのめり込まない
SNSやメッセージアプリの発達により、個人間に流通する情報量が膨大になりました。便利になった一方で、他人の動向が気になったり、自分がどう思われているか不安になったりと、ストレスを感じる機会も増えているのではないでしょうか。
自分自身を強く持ち、自分の人生を歩んでいる人は、他人の言動を気にせずに受け流すことができます。自分の人生に集中するためには、「自分が何をしたいか(WANT)」「自分が何をしなければいけないか(MUST)」「自分が何をできるか(CAN)」の3つを理解しましょう。すると、自分の人生の核となるべきものを認識できるはずです。ときには、SNSを一定期間シャットアウトするのも一案です。最初は不安に感じるかもしれませんが、ストレスから解放されて、仕事に対する集中力がアップすることもあります。
仕事でイライラしないために
ビジネスでは、仕事と休日の区別の仕方や、部下とのコミュニケーションなど、さまざまな場面でストレスが生じる可能性があります。仕事でイライラしないためのポイントを紹介します。
1.無理にONとOFFを切り替えない
イライラしない人は、公と私を無理に区切ろうとしません。平日や休日に関わらず、自分の思考や感情を自由に行き来させているものです。仕事を意識から切り離そうとするほど、仕事に意識が向いてしまうこともあるので注意しましょう。「休日は休まなければ」「公私を区切らなければ」という気持ちが強い人ほど、この逆説が生じやすい傾向にあります。
最近では、「ONとOFFを切り替える」ことをよしとする流れがあります。会社を出た瞬間に仕事を忘れられる人なら問題ありませんが、休日も仕事のことを考えてしまう人もいることでしょう。ONであろうとOFFであろうと、どちらも自分自身なので、切り替えができなくても不自然ではありません。そんなときは、「ONとOFFを切り替える」という概念に縛られすぎずに、「ONもOFFも同じ自分」と受け入れてみましょう。そうすれば、どんな環境でもいつもの自分で過ごすことができ、余計なイライラを減らすことにつながります。
2.先送りにしない「2分ルール」
やるべきことを先送りにしているために、イライラすることがよくあります。苦手なものや面倒なものを処理しないままでいると、それに関わる時間が伸びるため、イライラするのです。場合によっては罪悪感が生じ、大きなストレスとなります。
そんなイライラを解消するには、「2分ルール」を実践しましょう。「メールの返信」「デスク周りの片付け」「経費請求の確認」など、「1分では足りないけれど、3分もかからない」という仕事は、先送りにせずに2分で済ませるのです。2分以上かかるものは「10分ルール」に当てはめ、10分だけ集中して向き合いましょう。やるべきことは先送りせずに、ちょっと腰を上げて作業するだけで、仕事が片付くと同時にムダなイライラがなくなるはずです。
3.部下がどうしたらできるかを考える
「なぜ報告をしなかったんだ」「なぜ時間がかかるんだ」と部下を叱ったことはありませんか。この叱り方に共通しているのは、原因を聞いているということです。よくある叱り方ですが、問題をこじらせてしまう危険があることを覚えておきましょう。
問題解決には、2つの方法があります。1つは「原因志向」で、問題の原因をつきつめて、その原因をつぶせば同じことが起こらないという考え方です。「Aという原因があったら、必ずBという結果になる」と因果関係が明確な、明らかな過失や単純なミスを解決する際に適した方法です。
もう1つは「解決志向」で、問題の原因は置いておき、この先はどうすればいいかを中心に考える方法です。こちらは、「Aという原因があったからといって、必ずBという結果になるとは限らない」と因果関係が不明瞭な、人間関係や感情の問題を解決するのに適した方法です。このような場合は、過去にこだわってイライラしても意味がありません。この先どうすればいいかを優先して考えましょう。そうして理想と現実のギャップを埋めていくほうが、自分にとっても部下にとっても、精神衛生上のメリットがあります。
自分にイライラしないために
社会生活を送る上で、自分を偽ったり、過去にこだわりすぎたりしていると、ストレスが積み重なり、漠然としたイライラに包まれてしまうことがあります。最後に、自分にイライラしないためのポイントを紹介します。
1.自己開示を積極的に行う
ジョハリの窓という考え方では、人間には「開放の窓(自分も相手も知っている自分)」「盲点の窓(自分は知らないが、相手は知っている自分)」「秘密の窓(自分は知っているが、相手は知らない自分)」「未知の窓(自分も相手も知らない自分)」の4つの側面があるとされています。コミュニケーションでは、お互いに知らない部分があると不具合が生じるため、開放の窓を大きくすることが推奨されています。
「いい人と思われたい」「カッコつけたい」という気持ちは誰にでもあるものですが、自分を偽れば偽るほど、「誰にも理解されない」と自分にイライラしてしまうことがあります。真のコミュニケーションとは、本当の自分をさらけ出すことです。その結果、相手に理解してもらうことができ、自分が理解されたことを実感できるのです。「盛らない」「飾らない」「嘘をつかない」など、正直に自分をさらけ出すことを意識すれば、ムダなイライラを減らすことができるでしょう。
2.今ここにいることを意識する
「なんとなくイライラする」という人は、無意識に過去にこだわっていたり、未来に不安を感じていたりすることが多いようです。一般的に、子どもが大人よりもストレスが少ないのは、過去を振り返らず、未来を心配していないからだといわれます。同様に、イライラせずに機嫌よくしている人は、今この場のこと以外は考えていないものです。
もしも、身体が今この場所にあるにもかかわらず、心が過去や未来へ向いているとしたら、心身が一つになっていないことになります。そして、身体と心がバラバラであれば、どちらの健康も維持することが困難になります。「なんとなくイライラしているな」と感じたら、自分が今ここにいることを意識して、心身の健康を保ちましょう。そうすることで、イライラが少しずつ解消され、機嫌よく過ごすことができるようになっていくはずです。
まとめ
アンガーマネジメントとは、怒らなくなることではなく、怒る必要のないことに対しては怒らなくて済むようになることです。自分がムダにイライラしてしまうと、周囲の人や環境も悪い雰囲気になってしまうことを覚えておきましょう。
ストレス社会と呼ばれる現代は、イライラにつながる環境要因が多いといえます。そのため、ムダにイライラしてしまう人は、ますますイライラするようになり、仕事の生産性が落ちてしまいます。対して、ムダにイライラせずにいられる人は、より健やかに生活し、仕事の生産性を高めていけるはずです。日頃の生活からアンガーマネジメントを意識し、豊かな人生を手に入れましょう。
書籍紹介:『アンガーマネジメントを始めよう』(安藤俊介著/大和書房)2021年8月出版
出版社書籍紹介:『アンガーマネジメントを始めよう』(安藤俊介著/大和書房)2021年8月出版
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