健康・美容

眠りたいのに眠れない!不眠の5つの要因と睡眠の質向上のために今日からできること

監修者

久保田 英里
循環器内科医

国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

不眠症とは

不眠症とは、夜間の不眠症状が週に2回以上あり、その状態が少なくとも1か月以上持続し、その結果として社会生活または職業的機能が妨げられるといった場合、不眠症と定義されます。

日中の倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下、抑うつなどの症状が続く場合があります。

不眠症とは

不眠症になる要因

不眠症になる要因は、大きく分けると以下の5つが挙げられます。英語の頭文字をとって「5つのP」と称されます。

生理的な要因(Physiological)

生活習慣や睡眠時の環境によるケースです。

例えば、夜間勤務の仕事で昼に眠る必要がある、育児中でまとまった睡眠がとれない、周囲の騒音、明るすぎる、暑さや寒さ、枕や布団が体に合わないなどがあります。

心理的な要因(Psychological)

心理的な作用により眠れないケースで、不安や心配事が気になって眠れない、楽しいイベントの前に気が高ぶり眠れないなどがあります。

薬理学的な要因(Pharmacological)

飲食物の影響や薬の副作用によるケースで、カフェイン、たばこ、アルコールなどの摂取やステロイド薬やインターフェロン、パーキンソン病治療薬の内服などがあります。

身体的な要因(Physical)

身体の痛みやかゆみ、せき・息苦しさなどの症状が原因になるケースで、何かの病気による症状が続いている、頻尿のため夜間に何度も目覚めるなどがあります。

精神医学的な要因(Psychiatric)

精神的な病気によるケースで、神経症やうつ病、統合失調症など精神的な持病があるなどがあります。

不眠症の疫学的整理

日本では20歳以上の約30%の方が不眠症状を有しています。なかでも50歳以上の中高齢で増加するため、高齢化が進んだ国でより不眠症状を持つ人が多く、日本では65歳以上の50%以上の方が不眠の症状を訴えています。

毎日のように不眠があって日中に問題を抱え、臨床的に治療が必要となる中等度以上の人は先進国では6~8%といわれていますが、日本でも7%が深刻な不眠症で悩んでいることが明らかとなっています。

不眠症の症状

寝付けない、睡眠中に何度も目が覚める、朝早くに起きてしまう、熟睡できた感じがしない、眠りが浅いなどの症状がつづき、日中の倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下などの心身の不調が出現する場合があります。

不眠症の症状

不眠症の診断

不眠症の診断においては、どのようなタイプの不眠症状があるのか、またそれによる日中の機能障害があるのかを適切に判断することが重要です。さらに睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群など、他の睡眠障害を除外できる場合に不眠症と診断することになります。

基本的には、不眠症状や日中の機能障害は問診による主観的な評価をもとに判断します。夜間睡眠の状態をより詳細に評価するために行う睡眠ポリグラフ検査(PSG)という検査や、腕時計型の加速度センサーを手首に取り付け、連続的に活動量を計測するアクチグラフィという検査を行うこともあります。

睡眠の質向上のためのセルフケア

不眠の原因を見つけ出し、取り除くことがとても重要です。 まずはご自身で取り組める対処方法[1]をご紹介します。

1.睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分

  • 必要な睡眠の長さは個人差があり、季節によっても変化するので8時間にこだわらないようにしましょう。
  • 年齢を重ねることで必要な睡眠の長さは短くなります。

2.カフェインやニコチンなどの刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法を

  • 就床前4時間前からカフェイン摂取、就床前1時間前から 喫煙は避けましょう。
  • 軽い読書、音楽、ぬるめのお湯で入浴、アロマなど好きな香りを嗅ぐ、筋肉をゆるめるストレッチなど。

3.眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない

  • 眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くします。

4.同じ時刻に毎日起床

  • 早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じます。
  • 日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなることがあります。

5.適切に光を浴びてよい睡眠を

  • 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオンしましょう。
  • 夜は明るすぎない照明にしましょう。

6.規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

  • 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽めまで。
  • 運動習慣は熟睡を促進します。

7.昼寝をするなら、15時前の20~30分程度

  • 昼寝を長くし過ぎるとかえって頭がぼんやりしてしまうことがあります。
  • 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に影響しやすいのでしないようにしましょう。

8.眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起き

  • 寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減ります。

9.睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感がある場合は要注意

  • 症状の原因として睡眠の病気の存在が疑われ、専門的な診療が必要となります。はやめに専門医を受診しましょう。

10.十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に

  • 長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談しましょう。
  • 車の運転にも注意が必要です。

11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

  • 睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となってしまうのでやめましょう。

12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

  • 睡眠薬は一定時刻に服用し就床しましょう。アルコールとの併用は禁物です。

不眠症の相談目安

長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合や不眠に伴って睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感がある場合、ご自身での対処で効果が出ないときは精神科や心療内科の専門医に相談しましょう。

不眠外来、睡眠外来、睡眠障害外来などの専門外来を設けている病院もあります。睡眠薬による治療に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、安全に使用できるお薬もたくさんあります。また生活・睡眠習慣の改善などを手助けする治療法もありますので、まずは専門病院を受診して相談してみましょう。

まとめ

不眠症の要因 や症状、対処法についてご紹介しました。不眠の症状が続く場合、睡眠が足りない以外にも身体の不調につながり、日中の生活機能が低下するなど日常生活への影響が大きいことがわかりました。今回ご紹介した対処法を参考に、良質な睡眠のためにできること、始めてみませんか。

Facebookでシェアする
LINEでシェアする

KEYWORD

#人気のキーワード