ビジネスマナー

相手を思いやる心をカタチに 新社会人のためのビジネスマナー

社会に出てまず覚えなければならないのが、ビジネスマナーです。社内外の人に対して正しい行動がとれなければ、ビジネスがうまくいかないだけではなく、自分自身の人柄を疑われてしまうこともあります。ビジネスマナー講師・田巻華月氏の著書『安心と自信を手に入れる! ビジネスマナー講座 』(同文舘出版)をもとに、社会人に必要なマナーの基礎を紹介します。

ビジネスマナーとは、仕事をする上でのルールや礼儀であり、その根底にあるものは「相手を思いやる心」です。この点を踏まえて正しいマナーを身につければ、良好な人間関係を築き、自分を助ける武器にすることができます。社会人としての経験が浅いうちは、どれが正解なのかわからないかもしれません。まずは、下記で紹介するビジネスマナーの基礎を知り、型を取り入れましょう。働き方が多様化しても、一定のマナーを理解していれば、気持ちよくビジネスが進められるはずです。

社会人の基礎を身につけよう


相手が同僚や上司、お客様でも、気持ちよくビジネスを進めるためには、最低限のビジネスマナーが必要です。マナーが身についていて初めて、「仕事を任すことができる人」「一緒に仕事がしたい人」と思ってもらえるのです。

1.ルール・モラル・マナーの違い

一般的に、「ルール」とは規則のことで、守らなければならない決まり事です。「モラル」とは道徳や倫理のことで、人として正しい行動をとるための普遍的な意識です。「マナー」とは礼儀や作法のことで、相手を思いやる心が軸になります。
マナーに罰則はありませんが、身についていないと、人間性を疑われて信用を得ることができません。相手の気持ちになって「こうしたら、相手はこう思うのではないか」と先回りして考える想像力を育みましょう。
ビジネスマナーは「これが絶対に正解」というものはなく、時代やシチュエーションで変化します。まずは、挨拶や敬語などの基本を身につけて、自分の型をつくり上げましょう。「マナーは相手を思いやる心」がキーワードです。

2.ホウ・レン・ソウの重要性

「報告・連絡・相談」を略して「ホウ・レン・ソウ」と呼び、チームで仕事を進めるための代表的なビジネスマナーです。「報告が遅れる」「連絡が行き違う」「相談せずに独断する」といった行為は、チームワークを乱すだけではなく、トラブルを招くこともあるので注意しましょう。
「報告」は、自分が知った情報を先輩や上司に伝えることです。聞かれる前に自分から報告するという姿勢を持ち、内容を整理して結論から手短に伝えましょう。トラブルやミスなどの悪い報告は早めに伝えることで、スピーディな対処ができ、損失を最小限に抑えることができます。
「連絡」は、上司や同僚、お客様と情報を共有することです。こまめなコミュニケーションをとり、事実を正確に伝えることを意識しましょう。伝える手段を口頭にするかメールにするかは、緊急度や重要度など、状況に応じて判断しましょう。
「相談」は、判断に迷ったときに先輩や上司から助言を得ることです。事実関係や自分の考えを簡潔に伝え、意見やヒントをもらいましょう。トラブルやミスは早めに相談し、自己判断で動かないように意識しましょう。

3.場面に応じたお辞儀

お辞儀は日本の伝統的な文化であり、相手に敬意を伝える作法です。お辞儀が整っていれば、態度や振る舞い、言葉使いも自然と丁寧になるものです。
正しい姿勢は、まず、背筋を伸ばして肩の力を抜き、膝とかかとをそろえてまっすぐ立ちます。手の位置は、おへその下のあたりで重ねたり、ズボンの縫い目に指先を沿わせたりする型があります。
お辞儀の基本的なリズムは、「サッと頭を下げ、ピタッと停止し、ゆっくり頭を起こす」の流れです。場合によっては、相手よりも先に頭を下げ、後に頭を上げるように意識しましょう。背中の倒し方は、社内での会釈で15度程度、お客様への敬礼で30度程度、お礼やお詫びをする最敬礼で45〜60度程度とするのが一般的です。

敬語と話し方に気を配ろう


言葉を正しく使うことができなければ、相手を嫌な気持ちにさせたり、傷つけたりしてしまうこともあります。敬語や話し方の基本を踏まえつつ、相手や場面に応じて適切に選べるように、言葉を磨いていきましょう。

1.敬語の基礎知識

最初に、「尊敬語」と「謙譲語」の違いを理解しましょう。「尊敬語」は、主語が相手側(上司・先輩・お客様など)のときに相手を高めて敬意を表します。「話す」であれば、「おっしゃる」「お話になる」をはじめ、「れる・られる」を用いた「話される」などの言い方があります。名詞に「お・ご」をつけた、「お名前」「ご住所」なども尊敬語です。
「謙譲語」は、主語が自分側(自分・社内の人など)のときに、自分を低めて相手を高める表現です。「話す」であれば、「申し上げる」「お話しする」などがあります。名詞では「小社」「弊社」なども謙譲語です。
さらに、丁寧な言葉で相手に敬意を表す「丁寧語」があります。「〜です」「〜ます」が一般的で、さらに「〜でございます」とすると、より丁寧な言い方になります。

2.間違いやすい敬語表現

尊敬語と謙譲語を混同しないようにしましょう。例えば、「食事を食べましたか」と上司に聞くときに、「お食事は頂かれましたか」とするのは間違いです。なぜなら、「頂かれ」は、「食べる」の謙譲語「頂く」に、尊敬語「れる・られる」を付けた混用だからです。正しくは、「お食事は召し上がりましたか」です。
また、二重敬語にも注意が必要です。「お客様がおいでになられました」「何時にお戻りになられますか」はどちらも間違いで、正しくは「お客様がおいでになりました」「何時にお戻りになりますか」となります。
加えて、よくある誤用を覚えておきましょう。「〇〇はお休みを頂いております」は、身内の休みに「お」をつけているのに加え、休みを許可した自分の会社に「頂く」と謙譲語を使っているので間違いです。正しくは「〇〇は休みを取っております(休んでおります)」です。もうひとつ、「了解しました」の「了解」は、同僚など同じ立ち場の相手に使う言葉です。先輩や上司、お客様に対しては「かしこまりました」「承知しました」などの謙譲語を使いましょう。

3.信頼される話し方と伝え方

ビジネスシーンでは、言葉使いと同様に話し方も意識しましょう。「聞き取りやすい大きさで」「トーンはやや高めに」「スピードはゆっくりと」を基本に、相手や状況によって変化をつけるのもポイントです。
さらに、聞き方を注意すると会話の雰囲気が変わります。相手に心地よく話してもらうためには、「相づち」で共感を示すことが重要です。「そうですね」「確かに」などの同意の相づちや、「それで」「それから」などの会話を促す相づちを、テンポよく取り入れましょう。

お客様に心をこめて対応しよう


最後に、取引先や得意先など、お客様とやりとりをする際のビジネスマナーの基本を紹介します。気遣いや心配りは言葉や態度に表れます。誠実さを心がけて、丁寧に対応しましょう。

1.電話応対の基本と心構え

電話の応対では、自分が会社の代表として話をしているという意識を持つことが大切です。「迅速・簡潔・正確・明朗・丁寧」を意識して対応すれば、失礼にはならないでしょう。電話をかけるときも受けるときも、第一声が会話全体の印象を左右するので、明るく聞きやすい声を意識しましょう。内容は結論を明確にし、簡潔にわかりやすく伝えます。
ちなみに、1対1で話すケースが多い電話では、相手に向かって話しかけていることは明らかですが、あえて「〇〇さんは」「〇〇様は」と、相手の名前を呼んで話しかけることで、好意的に耳を傾けてくれることもあります。会社名も通常は「御社」で問題ありませんが、会社名に「さん」や「様」を付けて呼ぶことで、親しみを表すこともできます。

2.名刺交換

日本は世界でも有数の名刺大国です。最近ではオンラインで名刺交換ができるアプリもありますが、まだ紙の名刺の出番は多いようです。
名刺を差し出す順番は、目下の人や、お願いをする立ち場の側から行うのが一般的です。若年層は、いつでも自分から出す気持ちでいて問題ありません。相手の前に立って名刺を両手で持ち、会社名と部署名、名前を言ってから渡しましょう。相手の名刺は両手で受け取り、「頂戴します」と一言を添えます。
名刺交換後に面談を行う場合は、名刺はテーブルの上に置いておきます。相手が複数の場合は、役職が一番上の人の名刺を名刺入れの上に置き、座っている相手と対になるように名刺を並べておくのが一般的です。名刺をしまうのは、面談終了後の退席するタイミングがいいでしょう。

3.ビジネスメールの基本

メールは即時性があり、データの送受信もできるため、情報共有には欠かせないツールです。また、相手の時間を拘束することなく、同時に複数の人に送信できる点もメリットです。しかし、会話と比べて、言葉の選び方によっては誤解を生む可能性もあるので注意しましょう。
メールの件名は、「〇〇会議のお知らせ」のように、具体的でわかりやすく、後から検索しやすい内容を書き込みましょう。本文は、送信相手の「社名・部署名・フルネーム+様」で始まり、自身の「社名・部署名・電話番号・フルネーム」などを明記した署名で終わります。内容は、適度に改行やスペースを入れながら、簡潔にまとめましょう。
ちなみに、メールは時間を問わず送れますが、よほどの緊急なものではない限り、夜遅い時間は避けましょう。金曜日などの休業日の前日に送る場合は、「お返事は週明けの○日頃にいただければ幸いです」と、一言を添えることで、相手にストレスを与えない工夫ができます。

まとめ

マナーとは「相手を思いやる心」です。正しいビジネスマナーを身につけてこそ、上司や先輩、お客様から、「仕事を任すことができる人」「一緒に仕事がしたい人」と思ってもらうことができます。敬語や挨拶の基礎を身につけつつ、相手や状況に合わせて、誠実で丁寧な対応を心がけましょう。
ビジネスの現場は教科書どおりではなく、「これが正解」という答えはありません。しかし、一定のマナーを身につけていれば、多様な価値観を持つ人とも、気持ちよく仕事を進めることができます。ビジネスマナーに磨きをかけることは、人間力を磨くことにつながります。

書籍紹介:『安心と自信を手に入れる! ビジネスマナー講座』(田巻華月著/同文舘出版)2021年7月出版

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