健康・美容

医師監修:冬の朝起きられないのはなぜ?原因と改善方法を解説

冬になって気温が下がり始めると、なかなか目が覚めなくなったり布団から出るのが億劫になったりして、「いつも遅刻ギリギリまで起きられない」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では、冬の朝にありがちなお悩みを解決する対処法をいくつかご紹介します。冬の眠気やだるさなどの原因と対策を解説しているため、ぜひ参考にして今冬はスッキリした朝を迎えましょう。

監修者

井上 信明(いのうえ のぶあき)
日本小児科学会専門医・同指導医/米国小児科専門医/米国小児救急専門医

日本の医学部を卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科および小児救急の研修を行う。

冬の朝、起きられないのはなぜ?4つの原因を解説

冬になって気温が下がると、いつもより起き上がるのが億劫に感じたり、いつまでたっても布団から出られなくなったりしますが、これにはいくつかの理由があるのです。

冬起きられない主な原因としては、日照時間の短さによるホルモン量の低下や、暖房などを使った快適な環境づくりによって副交感神経が優位になることが挙げられます。そのほか、身体の冷えによる眠りの質の低下、冬季うつの発症なども考えられます。

ここでは、起床の難しさを引き起こす原因について分かりやすく解説します。

睡眠に関係するホルモンが影響を受けるから

冬は日照時間が短くなります。緯度による違いはありますが、日本では夏と冬の日照時間に約3~6時間もの差があり、曇りや雨、雪などの影響も考えると、日照時間はさらに短く感じられることもあるでしょう。

さらに、冬は日射量自体も減少します。日照時間と日射量が減ることで幸福度に影響する「セロトニン」というホルモンの分泌量が減少しやすくなり、意欲の低下、不眠や過眠の原因となり得ます。

加えて、睡眠と覚醒のリズムを調節するホルモンである「メラトニン」は、前述の「セロトニン」から生成されます。したがって、「セロトニン」の分泌量が低下すると「メラトニン」の生成量も低下するため、体内時計が狂いやすくなってしまいます。

こうした睡眠に関係するホルモン量の低下が原因で、眠気を感じやすくなるのです。

副交感神経が優位になりやすいから

暖房をつけ、過ごしやすい室温の部屋に長時間いると、通常時に比べて副交感神経が優位になります。そうすることで身体が休憩タイムに入り、リラックスしている状態になります。

活動時に必要となる器官の動きを促進する交感神経とは異なり、副交感神経は心身の緊張を解いて身体を休ませるのに必要となる器官の動きを促進します。これによって血流が促され、脳の動きが落ち着く・心拍数が減るといった変化が起こり、眠くなりやすくなるのです。

眠りの質が低下しているから

人間の体温が最も高くなるのは昼間です。反対に、就寝中や寝起きの体温は低くなっています。これは、体温を少しずつ下げて脳のクールダウンをはかることで、深い睡眠を得られるためです。

しかし、冬の寒い部屋では就寝中の体温調節が難しくなり、眠りの質が低下しやすくなります。

これにより、睡眠時間を確保できていてもしっかりと眠ることができず、布団から起きられない・目覚めることができないという状況に陥るのです。

冬季うつの症状が出ている可能性

冬に眠くなる原因のひとつとして、「冬季うつ」の可能性が考えられます。冬季うつは季節性のうつ病で、その症状は日照時間が不足する冬季にだけ現れます。

冬季うつの原因は、日光を浴びる量が減ることで「セロトニン」の分泌量が低下することが影響していると考えられています。精神の安定をもたらす作用のあるセロトニンが不足すると、抑うつ状態や不安が強くなります。

冬季うつの症状には、疲れやすさや気分の落ち込み・過眠・過食などがあります。一般的なうつ病に比べて症状に気付かれにくいですが、冬場にだけ食欲増進や強い眠気などの悩みがあるという方は、病院で受診してみることがおすすめです。

【起床後に】冬の朝スッキリ起きるコツ

日照時間の短さによる睡眠に関係するホルモン量の低下や、身体の冷えによる眠りの質の低下など、冬の朝の起きづらさをもたらす原因をお伝えしました。

ここからは、冬の朝スッキリ目覚めるために起床時などにできる5つのコツをご紹介します。

なかなか布団から起き上がれないという方は、以下で紹介する方法をぜひお試しください。どれも手間がかからないちょっとした工夫なので、習慣化して冬場の目覚めをスッキリとした心地のよいものにしましょう。

室温を20~22℃に調節する

冬の朝にスッキリ起きるためには、室温を適度に調節して、身体が冷え過ぎたり温まり過ぎたりしないようにすることが大切です。起床時に適した室温は、20~22℃、最低でも16℃といわれています。

起床時に適した室温にしておくために、オンタイマー機能を使って起床予定時間の少し前から暖房をセットして、部屋を暖めておくとよいでしょう。布団のなかと部屋の温度差が少なくなり、布団から出やすくなるためおすすめです。

睡眠中の身体は、朝方になると徐々に浅い睡眠に切り替わり、起床する準備を始めています。適度な睡眠時間がとれている場合は、部屋の寒さを和らげることで起きやすくなるでしょう。

なお、就寝中ずっと電気毛布を使う、また靴下を履いて寝るなど、睡眠中の体を温め過ぎると、手足からうまく熱の放散ができなくなる可能性があるため、注意が必要です。睡眠中に手足から熱の発散ができないと、深部体温が下げられず、スムーズに入眠できなくなってしまいます。

起床したらすぐに明るさ、光を感じる

起床後すぐにカーテンを開けて太陽の光を浴びるか、室内の電気をつけて光を感じ、覚醒を促しましょう。なかなか布団から出られない場合は、リモコン式の電気スイッチの利用がおすすめです。

身体は、朝日を浴びることで起きる時間になっていることを判断しています。体内時計が整うのも朝日のおかげです。そのため、厚手のカーテンを使用している場合、起床時間になってもなかなか室内に朝日の光が入らず、薄暗いままになってしまいます。朝日が入らない状態では、すでに夜が明けていても身体が朝になっていることを感知できません。

体内時計の調整には、強い光の刺激で頭を覚醒させる必要があります。スッキリ目覚めるためには、室内の光を調節して起床後すぐに明るさを感じることが大切なのです。

カーテンを開けている人

ストレッチをして交感神経を活性化させる

朝スッキリ目覚めるためには、交感神経を活性化させることが重要です。交感神経の活性化にはストレッチが有効です。

眠っている間の人は副交感神経が優位になり、体温が低い“休憩モード”に入っています。この状態から、交感神経を優位にして体温が上がった“活動モード”にするためには、身体を動かす必要があるのです。布団から出て活動するのがつらい場合は、布団に入ったまま行えるストレッチを実践してみましょう。

布団の中で仰向けのまま両膝を立て、ゆっくり深呼吸しながら膝を左右に倒します。膝を抱えてみたり腰を持ち上げてみたりしたあと、布団の中で伸びをすれば身体が温まります。交感神経が活発になって血の巡りも良くなるため、起床しやすくなるでしょう。

起床後のルーティンを決めておく

朝起きてすぐに行うルーティンを決め、眠くて仕方がない状態でも必ずそのルーティンを行うようにすれば、次第に自然と目が覚めるようになります。

「カーテンを開ける」でも、「白湯を飲む」でも構いません。心地よい音楽をかけながらストレッチをすることもおすすめです。何かひとつ、起床後すぐにすることを決め、起きることと関連付ければ目覚めがスムーズになります。

自分の楽しみにつながるようなルーティンであれば、気持ちよく1日をスタートできるでしょう。

睡眠の質を改善する

夜なかなか寝つけなかったり夜中に何度も起きてしまったり、十分寝たはずなのに頭がスッキリしなかったりする場合は、睡眠の質が低下している可能性があります。夜間にしっかりと質の高い睡眠をとれれば、冬場でも比較的スッキリ起きられます。

食事の摂り方やお風呂の入り方など、スムーズに睡眠へ導くルーティンを工夫して、睡眠の質を改善しましょう。睡眠の質の改善方法は、次項で詳しく解説します。

【就寝前に】眠りを深くするコツ

冬でもスッキリ目覚めるためには睡眠の質を高くすることが重要です。就寝前に体を温めたり、目や脳を休めたりすることが睡眠の質の改善につながります。

ここからは、眠りを深くする以下のコツについて詳しく解説します。

38~40℃のお風呂に浸かる

睡眠の1時間ほど前に体温を上げておくと、その後の体温調節がしやすくなります。暖房をつける、厚手の靴下や部屋着を身に着けるといった方法もありますが、効率的に体温を上げるためにおすすめなのが、38~40℃くらいのぬるめのお風呂に浸かることです。10分程浸かれば手足の血行が良くなり、入眠しやすくなります。

ただし、熱すぎるお風呂に入ると深部体温まで上がってしまい、なかなか寝付けない状態に陥ることもあるので注意しましょう。寝る直前の入浴や、42℃以上のお湯は避けた方が良いでしょう。

入浴中の人

手足・首を温めて体温の低下を防ぐ

眠る前に手足や首が冷えていると体温調節がうまくできず、質のよい睡眠をとることができません。外気温が寒い冬場は、寝る直前まで首元にスカーフやマフラーを巻いたり、靴下やレッグウォーマーを履いたりして手足の冷えを防ぐように心がけましょう。

なお、前述のとおり靴下を履いたまま寝ることは避けた方が良い場合があります。靴下を履いたまま寝ると睡眠中手足から熱の放散ができなくなり、睡眠の質が悪くなってしまうため注意しましょう。

特に女性は筋肉量が少なく、日中でも体が冷えている「冷え性」もしくは「末端冷え性」の場合があります。冷え性が原因で、なかなか寝つけなかったり起きられなかったりすることもあります。

極力スマホやパソコンの使用を控える

寝る直前までスマホやパソコンを使っているという方も多いでしょう。しかしこれは、質のよい睡眠を得るためには避けるべき行為です。

スマホやパソコンを見ることで、脳には新しい情報が次々に入ってきます。情報を処理するためには、脳は活発に動かざるをえません。興奮状態になり副交感神経との切り替えがうまくいかず、なかなか入眠できなくなるのです。

さらに、スマホやパソコンが発するブルーライトは朝日に似た光のため、脳の目覚めを促してしまいます。体内のリズムが崩れて眠りが浅くなると、寝起きも悪くなってしまいます。

冬でもスッキリ起きるためには、寝る直前のスマホやパソコンの使用は避け、体内リズムを整えるようにしましょう。

冬だけでなく慢性的に起きられない原因は?

冬場に起きられなくなるには、いくつかの原因があることを紹介してきました。しかし、冬だけではなく一年中慢性的に起きられないという場合、何らかの病気や環境などが原因となっている可能性があります。

考えられる主な原因は以下のとおりです。

  • 慢性的な睡眠不足
  • 概日リズム睡眠障害(睡眠相後退症候群など)
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • レム睡眠行動障害
  • 周期性四肢運動障害
  • 起立性調節障害
  • ストレス
  • 薬の副作用
  • 更年期や認知症による睡眠障害

日本人は慢性的に睡眠不足なことが多く、一般的な成人に必要な7時間前後の睡眠をとれていないことがあります。慢性的な睡眠不足の場合は、1日や2日十分に寝ただけでは解消されません。

自分自身で気が付かないまま睡眠不足に陥っている可能性もあるため、寝起きが悪いと感じる方は、まずは自身の睡眠時間を振り返ってみてはいかがでしょうか。

ほかにも、体内時計が乱れてしまうことで起きる「睡眠相後退症候群」や、眠っている時に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」などの病気が隠れている場合もあります。また、就寝中足がピクッと動く「周期性四肢運動障害」や、夢に反応して身体が動いてしまう「レム睡眠行動障害」などがあると、ぐっすり眠れずに朝起きられない原因になります。

朝起きられないだけでなく、過度の眠気のために日常生活に支障が出るような場合、何らかの病気が原因となっているかもしれません。まずはいつも受診している内科で相談することをおすすめします。

なお、女性の場合は更年期になると女性ホルモンの分泌が低下し、自律神経の調節に支障が出ることで睡眠の質に影響を受けることがあります。高齢者では、認知症による睡眠障害も要因となり得ます。

また、ストレスはスムーズな入眠や心地よい目覚めを妨げます。適度に運動する、就寝前のスマホ・パソコンの使用を控えるなどして、リラックスすることを心がけましょう。

伸びをする人

就寝前・起床後の工夫で、冬にも心地よい目覚めを!

冬場になかなか起きられないのには、いくつか理由があります。その理由を知り、対策を練れば、すっきりした目覚めができるでしょう。

ここで紹介した就寝前・起床後の8つのコツを参考にし、心地よい目覚めをぜひ実感してみてはいかがでしょうか。

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