季節の行事

その年採れた梅の実を仕込む「梅仕事」。日本ならでは風習で季節を楽しもう

梅の木に青梅の実がなる梅雨の時期に行うのが「梅仕事」。時間をかけて自家製の梅干しや梅酒などを作る梅仕事は、丁寧な暮らしの中で日本の四季を感じさせてくれる風物詩です。

今回は梅の歴史や効能とともに、梅仕事の種類やポイントをご紹介。今年はぜひ梅仕事に挑戦して、ゆとりある時間を楽しんでください。

「梅仕事」という言葉を聞いたことがありますか? 梅仕事とは、梅雨の時期になる6月ごろ、その年に収穫された梅の実を使って梅干しや梅酒などを手作りすること。日本の四季を楽しむ昔ながらの風習のひとつです。

とはいっても手間のかかりそうなイメージのある梅仕事。「やってみたいけど、難しそう」と躊躇している方もいるのでは?

今回は、初心者の方にもわかりやすいよう、梅仕事についてご紹介。ぜひ挑戦してみてください。

梅にまつわる基礎知識

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梅雨の時期になる6月ごろ、各家庭で始まる「梅仕事」。みなさんは梅仕事のことをご存知ですか?そして、梅についてどれくらい知っていますか?今回は梅仕事をテーマに、まず梅にまつわる基礎知識をご紹介します。

梅仕事とは

2月には美しい花を咲かせる梅。花が散り、梅雨時の6月頃に青梅が実るようになると、全国で梅漬けをする「梅仕事」が始まります。梅仕事ができるのは一年のうちでもこの時期だけ。梅干しや梅酒、梅シロップなど、自分の手で仕込みながら五感で季節を感じることができます。 

梅の歴史と日本の生産量

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梅は原産地の中国から弥生時代に日本に伝わったといわれています。以来、観賞用の花として親しまれ、奈良時代や平安時代の花見では桜ではなく、梅の花を見て楽しんでいたのだとか。また、当時は梅の実は漢方薬として用いられたのだそうです。

梅の実は体に良い食材として親しまれ、戦国時代には武士に、江戸時代には庶民の家庭にと普及していきました。梅の実に熱いお湯をさして飲む「福茶」も縁起物として流行したのだそうです。

日本の梅の栽培面積は、農林水産省 平成28年 耕地及び作付面積統計によると全国で16,400ヘクタール。最も栽培面積の多いのが和歌山県(5,510ヘクタール)、次いで群馬県(1,020ヘクタール)、福井県(506ヘクタール)となっていて、この3県で全国の栽培面積の約43%を占めています。 

6月6日は「梅の日」

6月6日が「梅の日」に制定されているのをご存知ですか? 今から460年以上前、時の天皇が京都の賀茂神社に梅を奉納し五穀豊穣を祈ったところ、それまでずっと降らなかった雨がたちまち降りはじめ、それを見た人々はその雨を「梅雨」と呼んだのだそう。

この故事に因んで、「紀州梅の会」が6月6日を「梅の日」に制定し、毎年京都の上賀茂神社と下鴨神社に青梅と梅干しを奉納しています。 

参考:
JA紀州「6月6日【梅の日】式典」
農林水産省「梅のすばらしさを広める活動について知ろう」

梅の効能

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梅にはビタミン類やミネラル類が豊富に含まれています。また、糖質をエネルギーに転換する時に不可欠な成分であるクエン酸も豊富に含まれています。クエン酸には、疲労感のもとである乳酸の代謝分解を促し、筋肉に溜まることを防ぐ効果もあるので、疲労回復効果も期待できます。 

参考:
文部科学省 食品成分データベース 果実類/うめ/梅干し/塩漬
JAグループ 春・夏の旬くだものうめ(青梅)

梅仕事の下準備

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初めての梅仕事。しっかりと準備をして臨みたいですね。梅の品種や使う道具、容器の消毒や梅の下ごしらえについてご紹介します。

豊富な種類の日本の梅

梅は品種がとても多く、日本には約350種類あります。そしてそれらの梅は花を観賞するための「花梅(はなうめ)」と実を食べる「実梅(みうめ)」に分けられ、実梅は100の品種があります。

中でも、梅の栽培面積が最も多い和歌山県の「南高(なんこう)」、アンズとの交雑種とされる「豊後(ぶんご)」、東日本で栽培量が多い「白加賀(しらかが)」、カリカリ梅で有名な「甲州最小(こうしゅうさいしょう)」などは人気の品種です。

また、果肉が多い「和郷(わごう)」や「麗和(れいわ)」は梅干しや梅酒に、香りの良い「翠香(すいこう)」は梅酒や梅ジュースに、やや小さい「八郎(はちろう)」は梅干しに適しているとされています。 

参考:農研機構「うめ種」

梅仕事の道具

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梅仕事で道具を使用する際、特に梅を干す際には、アルミニウムのバットなどは使用しないようにしましょう。梅干しは酸性が強く、アルミニウムは強い酸性の食品に触れると黒ずんだり溶けてしまったりすることがあります。

梅を干す際には、竹製のざるやすだれなどを使用するようにすると良いでしょう。

保存容器は消毒を

梅干しや梅酒などを漬ける際にガラス容器を使う場合、容器や蓋は大型の鍋などを使用して事前に煮沸消毒をするようにしましょう。煮沸時間の目安として、厚生労働省や各都道府県が推奨する、以下の条件を参考にしてください。

  • 100℃ で30秒間
  • 90℃以上 で5分間以上
  • 80℃で5分間以上
  • 75℃以上 で15分間以上
  • 沸騰してから5分間以上

煮沸消毒をする際、熱湯にガラス容器を入れると割れてしまう場合があるので、加熱する前から入れておくようにしましょう。消毒後は容器の内側を手やふきんで触らないように注意し、清潔なふきんや金網などの上にふせて完全に乾かしましょう。 

参考:農林水産省「食中毒から身を守るには」

梅の下ごしらえをしよう

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梅仕事を始める前に、まず梅の下ごしらえをしましょう。梅の実はまず、水で洗ってひとつひとつ丁寧に汚れを落とします。水からあげたらふきんで水気を拭き取り、竹串などを使って梅のなり口(へた)を取り除きましょう。このとき梅の実に傷をつけないようご注意を。

作るものによって事前に冷凍する場合もあるので、レシピを確認して準備をしておきましょう。 

梅仕事あれこれ

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梅仕事の下準備ができたら、さっそく梅仕事を初めてみましょう。まずチャレンジしたいのはやっぱり梅干し。そのほかにも代表的な梅仕事のいくつかをご紹介します。

梅干しの歴史

梅干しのはじまりは江戸時代、紀州藩田辺領といわれています。紀州藩田辺領は稲作ができないやせ地が多く、年貢に苦しむ農民のために、梅の栽培が推奨されたのだそう。この土地は温暖で、低い山に囲まれ日当たりが良く梅栽培に適していて、県南部地域を中心に栽培が広がり、その後、高品質な梅干しが生産されたと伝えられています。

明治以降になると、日清戦争や日露戦争、第二次世界大戦での軍用食として梅干しの生産量が増加。明治10年代にはコレラや赤痢の流行がきっかけで梅干しの需要が増加したのだそう。今ではご飯のお供やお弁当のおかずの定番として、広く親しまれています。
 
参考:農林水産省「うちの郷土料理|和歌山県 梅干し」

梅干しの作り方

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梅仕事の基本といえばやはり梅干し。ぜひ作り方をマスターしておきたいですね。塩漬けの梅干しは、ストックバッグを使って簡単に作ることができます。

梅の実は水で洗って汚れを落とし、水気を拭き取りなり口(へた)を竹串などで取り除きます。ストックバッグに入れ、梅に対して20%の塩を入れて馴染ませ、重石をのせて約1カ月。梅をザルに取り出し、天日にあてる「土用干し」を3日3晩続たけら、梅干しのできあがりです。

参考:農林水産省「昔ながらの保存食!梅干し」

梅酒の作り方

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梅酒も梅仕事の定番。まず、梅をよく洗い、2時間ほど水にさらします。水からあげ、水気を拭き取りなり口(へた)を竹串などで取り除きます。消毒した広口瓶に梅と氷砂糖を交互に入れ、最後にホワイトリカー(焼酎甲類)を注ぎ入れます。

梅1kgに対して、氷砂糖は700g、ホワイトリカーは1.8L。広口瓶の蓋を閉めて冷暗所で保存し、3カ月ほどで飲めるようになります。

参考:農林水産省「梅の季節到来!さっぱり梅酒や梅ジュースで暑い夏を乗り切ろう!」

梅シロップ(梅ジュース)の作り方

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梅シロップは、炭酸水や水などで割って梅ジュースとして楽しむことができます。暑い夏にもさっぱりと喉を潤してくれるのでおすすめです。

まず、梅をよく洗い、2時間ほど水にさらします。水からあげ、水気を拭き取りなり口(へた)を竹串などで取り除いたら、袋に入れて冷凍庫で一晩凍らせます。消毒した保存瓶に梅と氷砂糖を交互に入れて常温で保存。梅1kgに対して、氷砂糖は800gです。1週間ほどで完成しますので、炭酸水や水などで割って楽しみましょう。

参考:農林水産省「梅の季節到来!さっぱり梅酒や梅ジュースで暑い夏を乗り切ろう!」

梅ジャムの作り方

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梅ジャムは、梅酒や梅シロップを作る際に漬けた梅で作ることができます。漬けていた梅を鍋に入れ、かぶるくらいの水を加えて火にかけます。2分ほど沸騰させたら一度梅をざるにあげ、再び鍋に入れて柔らかくなるまで煮ます。再度ざるにあげて種を取り除いたら鍋に戻し、砂糖を加えて弱火で煮込み練り上げて完成。漬けていた梅1kgに対して、砂糖は200~500gです。

参考:農林水産省「梅の季節到来!さっぱり梅酒や梅ジュースで暑い夏を乗り切ろう!」

梅の砂糖漬けの作り方

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梅の砂糖漬けは、梅をよく洗い、水気を拭き取りなり口(へた)を竹串などで取り除いたら、袋に入れて冷凍庫で凍らせます。冷凍したままの梅のヘタに、清潔な千枚通し等で種を避けるように斜めに1ヶ所穴を空けます。消毒した広口瓶に梅と砂糖を交互に入れて冷暗所で保存。時々攪拌して砂糖が完全に溶けたら、冷蔵庫で保管します。 

参考:農研機構「シワにならない砂糖漬け梅の作り方」

知っておきたい梅干しのアレンジレシピ

豚しゃぶ梅干しうどんの写真

梅仕事の中でも特にチャレンジしてほしい梅干し作り。梅干しはさまざまなアレンジも楽しめて、料理の幅が広がります。さっぱりとした豚肉のしゃぶしゃぶに梅の酸味と香りが食欲をかきたてる「豚しゃぶ梅干しうどん」もおすすめです。

「豚しゃぶ梅干しうどん」のレシピはこちら

このほかにも、おすすめのアレンジをいくつかご紹介します。

梅びしお

梅びしおの写真

梅びしおは、梅干しをペースト状にしたものに砂糖を加えて加熱した練り梅。梅干しを塩抜きして使うので塩分も控えめです。半年から1年ほど日持ちし、幅広い料理に活用できて便利です。

まず、梅干し500gを水につけ、途中で水を替えながら6~8時間かけて塩抜きします。ざるにあげて水気をとったら種を取って裏ごしし、土鍋に入れて弱火にかけます。砂糖100gを2回に分けて加えながら、しゃもじでかき混ぜながら20分加熱します。仕上げにみりん大さじ1を加え、照りを出して完成。

粗熱が取れたら、消毒した容器に入れて保存しましょう。できあがった梅びしおは、他の調味料と合わせてタレやソースに。鶏肉に塗って、片栗粉をまぶして唐揚げにするのもおすすめです。 

梅ごはん

梅干しをそのまま使って炊飯器で炊くだけの梅ごはん。簡単に作れるのでぜひお試しを。まず白米3カップを研ぎ、古代米大さじ1を加えて、普通の水加減で炊飯器にセットします。梅干しを適当にちぎって加え、炊飯。炊き上がったら種を取り除き、全体を混ぜて器に盛って、仕上げに「青じそ」の千切りを散らします。炊く際は梅の種もそのまま入れると果肉の無駄がありません。 

梅漬け

梅漬けは、夜漬ければ翌日の朝ごはんには食べられます。まずキュウリ1本を乱切りにし、皮をむいたカブ2個を食べやすい大きさに切り、塩一つまみを全体にふり2~3時間置きます。野菜の水分が出たらさっと洗って水気を切り、容器に入れて梅干し3個をちぎって種ごと加え、醤油大さじ2、削り節3gを加えて混ぜ合わせ、重石をのせて一晩置いてできあがりです。

まとめ

初夏の風物詩のひとつ、梅仕事。梅仕事ができるのは、一年の中でも青梅がお店に並ぶ時期だけです。みずみずしい梅の実の手触りや香りを感じながら、自分の手で梅仕事をする。季節の移り変わりをゆったりと味わい、贅沢な時間を過ごすことができます。

今年の初夏は梅仕事で、丁寧な暮らしを楽しんでみてはいかがでしょうか?

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