パートナーや子供に振り回されない! 女性のためのイライラコントロール術
そこで今回は、アンガーマネジメントトレーニングのプロフェッショナルである川嵜昌子氏の著書『仕事もプライベートもうまくいく!女性のためのアンガーマネジメント(産業能率大学出版部)』より、イライラを自分でコントロールできるようになる方法をご紹介します。
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アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントとは、怒りを我慢したり、感情を抑圧したりすることではなく、「自分の感情を大切にし、自分らしく生きるためのノウハウ」です。
一昔前は、女性は結婚したら仕事をやめるという価値観が当たり前でしたが、今では結婚、出産しても、仕事を続ける女性が増えています。生き方の幅が広がり、働くことで経済力を得られるようになりましたが、生きやすい社会になったかというと、残念ながら必ずしもそうではないと著者は言います。
職場では不安定な雇用条件や弱い立場に、また家庭では家事の負担が大きいという現状に置かれていると感じるケースもまだまだあることでしょう。こういった不満から、男性に対して怒りを感じてしまったり、他の女性に対して「妬ましい」という気持ちが生まれてしまったりするのです。
特にこの「妬ましい」という感情は、SNSのような本来ならば知る必要のない「余計な情報」によって生み出される怒りと言えるでしょう。
アンガーマネジメントというツールを使って、あなたがものの見方と行動を少しだけ変えれば、ストレスが減り、人生が楽になるはずです。
怒りとはなにかを知ろう
怒りの原因が多様化している時代において、ムダな怒りを手放して、もっと楽に生きるためのノウハウが「アンガーマネジメント」です。怒りの正体や仕組み、対処法などを知ると、だんだんと、よい意味で人のことが気にならなくなりますよ。
身を守るために必要なもの
怒りはとても自然な感情で、悪いもの、恥ずべきものではありませんし、怒りの感情を減らすことは出来ても、ゼロにすることはできません。「怒り」のルーツは、動物が命の危険から身を守るための機能・役割と考えられ、生き延びるために必要な機能であり、なくすことはできないのです。
現代社会では、命の危険だけでなく、心の危険にさらされたときにも「怒り」が発生します。自分の気持ちやプライドを傷つけるもの、自分の考えや価値観、存在を否定するものから、自分の心を守る役割を果たしているのです。
怒りを感じるパターン
怒りは、その時々の心の状態と大きく関係しています。同じ出来事でも、その時の心の状態によって腹が立ったり、立たなかったりします。家事や育児で疲れている、仕事で悩んでいるときほど、普段気にならないようなことにも腹を立ててしまうという経験はありませんか?心がマイナスの感情でいっぱいになると、些細なことがスイッチとなり、怒りの点火につながってしまうのです。
怒りのスイッチは、相手に対して「こうなるべき」と思っていることが、思うとおりにならないことで入ってしまいます。「べき」は理想、常識、期待とも言い換えることができます。
自分と相手は違う人間なので、考え方や価値観、常識が完全に一致するということはあり得ません。ですが、これらが一致せず、あなたの信じる「べき」が裏切られたと感じると、怒りが生まれるのです。逆に、相手に期待していなければ、期待が裏切られることもないので、腹は立ちません。
怒る頻度が高い人は出来事の解釈がネガティブな思い込みになりやすい傾向があります。相手が自分の思うとおりにならないと怒りを感じたとしても、相手は裏切ったつもりなんてまったくなかった、ということが少なくありません。ネガティブな解釈は、自分にあまり自信が持てないとき、他人の評価が気になるとき、相手が自分より下の立場だと思っている相手に対して起こりやすいものです。
「危険」な怒りとは
怒りは自然な感情ですが、強くなりすぎて自分でコントロールできなくなると、自分自身や周りの人に対して影響を与えてしまいます。次の「4つの怒り」には、少し注意した方がよいでしょう。
1つ目は小さなことに対しても強く怒りすぎてしまい、怒っている間は周りの人が何を言おうと聞く耳を持たないパターン。
2つ目は、いったん怒りが収まっても、何らかのきっかけで怒りが再燃するパターン。10年も前のことでも、ふと思い出して今現在起きたことのように不機嫌になります。これは「怒り」ではなく「恨み」になってしまっていることも多いでしょう。
3つ目は、しょっちゅうイライラしているパターンで、周囲の人は常に気を使い、緊張をし、怒りを呼びそうな話を避けるようになってしまいます。
4つ目は暴言、暴力、モノを壊す行為や、逆に自分を責めたり自傷行為を行ったりするパターンです。
この4つを見て、自分の怒りにはどのような傾向があるか確認してみましょう。さらに周りからの評価をしてもらうことで、客観的に自分を理解することができますよ。
怒りをコントロールするには
怒りの傾向が分かったとして、そこから自分の感情をどうコントロールすればよいのでしょうか。ここでは、すぐに取り入れられるアンガーマネジメントのテクニックを学びましょう。コントロール方法には、「意識を変えるもの」と「行動を変える」ものがあります。
3つのコントロール
アンガーマネジメントで今すぐできる対処法として、3つのステップがあります。
①衝動のコントロール
イラッとしたときに最も大切なのは、怒りの感情に任せて行動しないことです。そのためには、「6秒」待ってから、物を言い、行動することがおすすめです。この6秒は理性が動き出すまでの時間と考えられているからです。
何度か大きく深呼吸をする、ストレッチで身体の力を抜く、別のものに視線を移して気を逸らすという簡単な方法もあります。その他にも、あらかじめ「大丈夫」「落ち着いて」など、自分が落ち着く「呪文」となる言葉を決めておいて心の中で唱える方法や、今の怒りに点数をつけて考えることで理性が働き冷静さを取り戻す方法があります。
②思考のコントロール
6秒待ったら、次は、そのイラッとした相手や出来事を許せるかどうかを考えます。人は「許せるゾーン」、理想的ではないけど許容範囲の「まあ許せるゾーン」、「許せないゾーン」に思考が分かれています。
イラッとしても、自分の人生にとってどうでもいいことは「まあ許せるゾーン」に入れて、怒りを手放してしまいましょう。
③行動のコントロール
どうしても「許せないゾーン」に入ってしまう場合はどうしたらよいでしょうか。まず、その状況を自分で「変えられる」のか、「変えられない」のか。「重要」なのか、「重要でない」のかを考えます。これらを組み合わせて対処法を考えましょう。
A. 「重要」で「変えられる」場合は、自分が相手に伝えたり、何らかの行動を起こせば状況が変わるケースです。例えば、パートナーがゴミ捨て当番を忘れているなら、伝えて気づかせてあげましょう。「どうして私が教えてあげなきゃいけないの?」と伝えないまま怒り続けることはやめて、この状況を変えるためにも自分から行動に移すことが大切なのです。
B. 「重要ではない」が「変えられる」場合は、余力があるときに取り組むようにします。ただし、いつまでに、どの程度変われば気が済むかは基準を決めておきましょう。そうしないと、いつまでも気掛かりな状態が続いてしまいます。
C. 「重要」だが「変えられない」場合は、自分の力では変えられないことを受け入れると同時に、現実的な選択肢を探しましょう。例えば、乗る予定だった飛行機が、悪天候で欠航になってしまったケースです。いつまでも変えられないことに執着していても、状況は改善しません。
D. 「重要でない」し「変えられない」場合は、放っておくか関わらないようにしましょう。例えば、飲み会で上司の自慢話が続いてうっとうしい、というような場合です。
「べき」には要注意
前述の通り、「こうあるべき」という自分の常識が叶わないと人は怒りを感じます。この「べき」が強すぎると、気づかないうちに自分の行動を制限してしまいます。また、自分だけではなく相手を支配しようとしたり、否定されたと思い込んだりしてしまうこともあります。
このような「べき」という考えはあなたの血肉のような存在で、簡単に切り離すことはできません。そのためには「誰か」「何か」が自分を怒らせているのではなく、「自分が」怒っていると捉えることが大切です。怒りは自然に発生してしまいますが、立ち止まり、冷静に考えることは可能だということを思い出しましょう。そうすれば、怒らないという選択ができるようになるのです。
家族を円満にするコツ
身近な存在な家族は「怒り」が発生しやすい環境でもあります。「言わなくても分かってくれるはず」「当然、こうするだろう」という期待が大きい分、ギャップを許しがたく感じがちだからです。では、どのようにしたらイライラの少ない、円満な家族生活を送ることができるでしょうか?
パートナーのツボを知る
「べき」は育った環境、経験だけでなく、「男性」「女性」という性別によっても異なります。
ここで注意したいことは、「男性」「女性」としてひとくくりにしても世代や地域、家庭環境など様々な要因によって価値観は人によって全く異なるという点です。「このような傾向がある」という視点で捉え、参考にしてみてください。
まず、男性は伝統的な役割として「能力」の証明を重視する傾向があるといいます。そのため、自分の能力が認められていない、信用されていないと感じると、怒りにつながってしまうことが多いのです。また、期待に応えられない、期待外れだと思われるのも許容しにくいでしょう。
一方、女性は「共感」を重視する傾向があるそうです。何かをする場合は「一緒に」成し遂げたいと考え、問題が発生したら、「共に」分かち合いたいと思っています。また、相手の気持ちを察して、相手が求めていそうなことを先回りして行うのが「気が利く」ことで、よいことだと言われることが多く、そのため、口に出さなくても気持ちを察し、対応して欲しいという「べき」を求める傾向があります。
先述のとおり、全ての人にこれらが当てはまるわけでは決してありませんが、パートナーと意思疎通がうまくいかない、イライラさせられていると感じている方は、相手の性別に当てはめて考えてみましょう。もしかしたら、「あっ、こういうことだったのか!」と理解する手助けになるかもしれませんよ。
負けるが勝ち
プライベートな場面で多い「怒り」は、身近な人に対する怒りが多くを占めています。一緒にいる時間が長い分、「言わなくても伝わるだろう」と期待してしまうのです。ですが、お互いに「相手が悪い」と思ってしまっては改善しませんよね。かといって、相手のために自分のほうが対応を変えるということを「譲歩」と捉えると納得が行かないかもしれません。
ですが「誘導」「リード」だと捉えれば、主導権を握るのは自分だと認めることができます。争わず相手に譲ったほうが、自分にとって有利な結果になり、自分の気持ちもラクになるので良いことだらけですよ。
被害者意識を持たない
待っているのに来ない、連絡もないとなると、雑に扱われたと感じて腹が立ちますよね。一方で、待たせている側は「忙しいのを分かってくれるはず」などと思っていることはよくある話でしょう。
お互いに約束事を決めるなどコミュニケーションを取っていても、すれ違いは完全には防げません。「私はこんなに耐えているのに」「尽くしているのに、彼は何もしてくれない」という被害者意識を持つと、相手に振り回されることになってしまいます。そんな時は、「自分の行動は自分の意志で行っている」と考えることが大切です。
例えば、待ち合わせ場所についたら本を読み始めると決めて、「待たされた」と思わないようにしましょう。
不機嫌な相手にはどうする?
アンガーマネジメントの基本的な考え方は「環境や相手が変わらなくても、自分の考え方や行動は変えられる」というものです。つまり、パートナーがいつも不機嫌だったとしても、あなたは気にせずに平常心を保ち、自分らしく楽しく過ごすことを心がければよいのです。
怒っている人、特に身近な人に対しては、相手の不機嫌な態度や言葉に反応せず、「相手の気持ちに寄り添う」か「静観する」とよいでしょう。
子どものエネルギーを利用する
子どもは、大人の期待どおりには、なかなか行動をしてくれません。4歳くらいまでの子どもはある意味、「人は自分の言うことを聞くべき」と思っていて、それが叶わないことに腹を立てているということもあるのです。
対処法は、とにかく冷静になることです。そして、自分の心に余裕を持つことが一番大切なことなので、うまくストレスを発散しましょう。子どもと一緒に走る、ジャンプするなど、遊びを通して身体を動かし、ストレスを発散させる方法も効果的です。
怒りは期待の裏返し
あんなに「いい子」だったのに、勉強も片付けもしなくなった…こんなことを思ったり、子どもに怒ってしまった経験はありませんか?怒りは期待の裏返しなので、期待が大きい分、期待はずれになった際の怒りも大きくなってしまうのです。
小さい頃は素直だった子どもも、親から自立し、大人になろうとしている段階で、反抗的な態度を取ったりもします。そんなときは、子どもを「大人の扱い」をして、本人に任せるようにしてみるとよいでしょう。
どうしても何か言いたい場合は、冷静さを失わず、「どう?何か手伝うことはある?」程度の声がけに留めると、子どもの安心して自主的に動けるようになりますよ。
まとめ
喜怒哀楽の1つである「怒り」は人間にとって自然な感情で、決して悪いものではありません。ですが、怒りをそのまま放出をしてしまうと自分や周りが困ることが起きてしまいますよね。
アンガーマネジメントは、自分の感情を大切にし、自分らしく生きるためのノウハウです。怒りとは何かを知り、コントロールして「自分」を決めることで、相手に振り回されない今よりもっと快適な生活が送れるはずですよ。
書籍紹介:仕事もプライベートもうまくいく! 女性のためのアンガーマネジメント(川嵜昌子 著/ 産業能率大学出版部) 2020年12月出版
出版社書籍紹介:仕事もプライベートもうまくいく! 女性のためのアンガーマネジメント
(川嵜昌子 著/ 産業能率大学出版部) 2020年12月出版
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