株式投資の基本 投資の種類や投資の始め方について
執筆者
- 青野 泰弘(あおの やすひろ)
- ファイナンシャルプランナー/行政書士
1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。
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株式投資の始め方
株式を売買するには、まず証券会社で口座を開設する必要があります。インターネット証券などで開設をすれば、本人確認書類を撮影して提出することで、最短で即日、概ね1週間以内で口座を開設することができます。投資初心者の場合、口座を開設する際は特定口座を選択するのがおすすめです。
特定口座
特定口座とは、譲渡益課税における申告や納税手続きを簡素化するために導入された制度で、特定口座を利用すると、証券会社が投資家に代わって譲渡損益を計算してくれます。特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしの2種類がありますが、源泉徴収ありの特定口座を選択すれば、確定申告を不要とすることができます。口座を開設したら、いよいよ取引をします。
株式投資を始めるための必要資金
東京証券取引所(東証)での取引単位は100株(単元と呼びます)になっていますので、株式投資は原則100株で行うことになります。2021年末の東証一部上場企業の株価で一番高い企業はSMC(6273)で、1株77,590円でした。つまり、SMCの株を単元株で購入すれば約776万円が必要となります。また東証一部上場銘柄2,138銘柄中、1,100位(中間)にある株でも1株1,500円程度なので、単元株で投資すると10万円以上のお金を準備しないと、始めることができません。
ただし最近は1株から購入できる単元未満株取引というサービスを提供する会社が増えてきています。各社それぞれ愛称を付けて展開しています。1株から投資することができれば、最高値のSMCでも8万円弱、一般の銘柄でも2,000円もあれば、購入することができます。
単元未満株取引のできる証券会社
証券会社名 | 単元未満株取引の愛称 |
---|---|
野村證券 | まめ株 |
SMBC日興証券 | きんかぶ、フロッギー |
大和証券 | connect |
SBI証券 | S株 |
マネックス証券 | ワン株 |
auカブコム証券 | プチ株 |
単元未満株取引は、通常の株取引と比較して、注文の出し方や取引時間などに制限はありますが、1株から購入できるので、少ない投資金額でもスタートできます。また1株でも配当金を受け取ることもできるので、多くのお金を準備できない場合には、単元未満株取引で投資を開始してもよいでしょう。
株式投資で得られる利益
株式投資で得られる利益としては、値上がり益と配当および株主優待があります。
値上がり益
値上がり益は、購入した金額と売却した金額の差がプラスになっている場合のことです。マイナスになっている場合は、値下がり損となります。値上がり益は、株価が上昇すればするほど増えていきます。株価が10倍になることをテンバガーとよび、そのような銘柄を発見することは株式投資の醍醐味の1つといえます。
なお値上がり益に対しては、復興特別所得税を含め20.315%の所得税と住民税がかかります。源泉徴収ありの特定口座を開設していれば、証券会社が税金を源泉徴収してくれますので、確定申告をする必要はありません。
配当
配当は、企業が決算を終えた後に業績に応じて支払いを決めるものです。3月決算の銘柄であれば一般的に株主総会後の6月下旬に支払われます。また会社によっては中間配当といって、半期の決算後に配当を支払う場合もあります。
東証一部上場2,183銘柄中、配当を出す予定の会社は1,873銘柄あり、会社予想の配当利回り(配当÷投資金額×100)は、0.02%から11.84%となっています。銀行の預金金利よりも高い利回りですが、業績により変化することがあるので、注意が必要です。
株主優待
また株主優待も株式に投資するメリットの1つといえます。株主優待とは、決算日時点の株主に対して、製造業であれば自社製品、サービス業であれば、店舗で使える食事券や施設の入場券などを企業が株主に贈る制度です。
例えばハンバーガーチェーンを展開する日本マクドナルドホールディングス(2702)では、6月末、12月末の100株以上を保有する株主に対して、バーガー類・サイドメニュー・飲物3種類の商品の無料引換券が1枚になったシート6枚が送られます。現金換算すれば3,000円以上の価値があるので、年間配当(1株36円 2020年12月期)と合わせれば、1万円程度が得られることになります。
株主優待は、日本独自の制度で、海外の株式を購入しても得られるものではありません。
株式投資のリスク
株式投資は元本が保証されているものではなく、様々なリスクがあります。主要なものとしては、「価格変動リスク」「倒産リスク」「流動性リスク」などがあります。
価格変動リスク・倒産リスク
株式は毎日株価が変動しますので、値下がりした時点で売却すれば、損失が発生します(価格変動リスク)。また、もし企業が倒産すると、価値が最悪ゼロ円になるリスクがあります(倒産リスク)。
値下がりの原因としては、企業業績の悪化など、その企業に由来する要因と、リーマンショックなどのように世界的に株価が下落する外部的な要因に分かれます。特に要因がその企業の業績の悪化に由来するものであれば、株価が下がるだけではなく、配当や株主優待が変更されたり、無くなったりすることもあります。株式投資を開始したら経済全般のニュースだけでなく、保有している銘柄のニュースにも注意を向けるようにしましょう。
流動性リスク
また資本金の小さい会社など売買が活発に行われていない会社の株式を取引しようとすると、思った値段で取引できないこともあります。
株式がどのくらい活発に取引されているか示す指標を流動性と呼びますが、流動性の低い銘柄では、売りと買いの値段が離れていて、直前の値段よりも買う時には高く、売るときには低くなってしまうことがあります(流動性リスク)。
また多くの株数を取引しようとしても、同じ値段では約定できないこともあります。したがって投資初心者のうちは、流動性の高い銘柄に投資するのがおすすめです。
リスクの対処法
株式投資のリスクに対しては、長期・分散投資により、リスクを低減することができます。
長期投資
短期で利益を狙う投資方法として、デイトレードがあります。ただし短期で利益を得るのはプロの投資家でも難しく、投資初心者にはおすすめできません。初めて投資を行う人は、短期間の株価の上下を気にしなくても好いように、長期保有することをおすすめします。配当をもらったり、株主優待を得たりすることを目的にすれば、おのずと保有期間が長くなるために、長期投資となります。
長期で投資する場合には、配当が下がったり、株主優待がなくなったりすることがないように、事前によく調べておくことと、業績の変動などには注意を払うことが重要です。
分散投資
また株の投資のリスクを減らすには、分散投資という方法もあります。1銘柄であれば、その銘柄の株価の上下が直接損益になりますが、複数の銘柄を保有することで、「上がる株」と「下がる株」が混在し、値下がり損を少なくすることができます。
ただし複数銘柄を単元株で保有するためには、大きな金額が必要となりますので、少ない金額で分散投資をするなら、単元未満株で投資するか、多くの投資家から資金を集めて運用する投資信託を利用することをおすすめします。
なお値下がり損が出ていても、別な株で利益が出ていたり、配当金をもらったりした場合には、その利益や配当と値下がり損を相殺できる「損益通算」という制度があります。特定口座を利用していれば、その年の値上がり益、値下がり損と受け取った配当金などを証券会社が自動的に損益通算してくれます。ただし複数の証券会社で取引をして、損益通算をする場合や、損失を翌年以降に繰り越す場合には、自分で確定申告を行う必要があります。
まとめ
株式投資を行うには、単元株(100株)なら一般的に10万円以上の資金が必要となりますが、単元未満株取引であれば数千円で株が購入できます。株式投資の利益は値上がり益以外にも、配当や株主優待からも得られます。また株式投資の主なリスクは値下がりリスクですが、大きな値下がりの原因となる企業業績などは特にチェックするようにしましょう。長期で配当の増額を続けている会社で、株主優待などもある銘柄に投資すると、投資初心者でも安心して、保有し続けることができるでしょう。
※投資は自己責任です。掲載情報によって生じた損害等については一切の責任を負いません。
※特定の証券会社、銘柄等を推奨するものではありません。
※情報は2022年1月現在のものです。
執筆者:青野 泰弘(ファイナンシャルプランナー・行政書士)
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