身体の中からアレルギー対策! 自分にあう善玉菌を知ろう
そこで今回は、医療法人社団青藍会 西焼津クリニック院長 林 隆博氏の著書『アトピー・花粉症もスッキリ! アレルギーは腸から治す』(幻冬舎)より、腸とアレルギーの関係と腸内環境を整える菌のとり方についてご紹介します。
アレルギーの原因を知ろう
目や鼻がムズムズする、湿疹が治らないなどのアレルギーは薬を使っても完全に治すことが難しい症状で、多くの人が悩みを抱えています。治療が長引いてしまうと心身への負担が大きく、現代人の大きな悩みの種となっています。では、アレルギーの原因はなんでしょうか。
免疫バランスの崩れがアレルギーを起こす
なぜアレルギー症状が現れるのかというと、私達の体に存在する「免疫」が大きく関わっているそうです。免疫は体をウイルスや細菌などの病原体から守るシステムのようなもので、病原体をやっつけることが得意な細胞や、抗体をつくるのが得意な細胞が活躍をして、ウイルスなどを攻撃しています。
これらの細胞が活躍するときには発熱をしたり、体の節々が痛んだりすることもあるので、これらは風邪の症状として経験があるのではないでしょうか。
免疫システムは3種類の細胞がバランス良く機能することで成り立っていますが、バランスが崩れるとうまく働かなくなり、本来攻撃すべきではない花粉、ホコリ、食べ物を敵だと勘違いして攻撃をします。そのため、戦うために生み出される抗体が体を刺激して、くしゃみ、かゆみなどアレルギー症状を起こしてしまうのです。
アレルギーを起こす原因とは
前述のとおり、アレルギーを起こすのは免疫システムのバランスが崩れるからです。
では、具体的にどのような原因で、免疫システムがバランスを崩してしまうのでしょうか。
たとえば睡眠不足や不規則な生活、運動不足、ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、免疫細胞の機能が落ちてしまう場合があります。カビやダニ、ホコリ、大気汚染による有害物質などが多い環境も、体内に雑菌や細菌が取り込まれるため悪影響です。また、食べ過ぎや極端なダイエット、高脂肪・高カロリー、油っぽい食事も腸内環境の悪化につながり、免疫力も低下します。
このように、アレルギーを起こす原因は一概に言えず、さまざまな要因がからみあっているのです。
腸から免疫システムを改善する
バランスが崩れた免疫システムを改善するためには、生活環境や食生活を見直すことが大切ですが、こうした環境調整は一朝一夕にはできません。また、たとえできたとしてもアレルギー症状はすぐによくなるものではなく、加齢による衰えにはあらがいようがありません。ですが「腸内環境」を整えることでこれを改善することができるのです。
腸と免疫の関係性とは?
腸は食べ物を消化して便を排泄する器官で、広げるとテニスコート1面分くらいにもなる大きな臓器です。その腸に運ばれてくる食べ物にはさまざまなウイルスや細菌が付着していて、有害物質を体内に吸収してしまう危険にさらされています。
そのため、腸には体にある免疫細胞の60~70%が集中しています。有害なウイルスなどが腸から体内に吸収されてしまわないように、免疫細胞が24時間365日、ウイルスなどをブロックして守ってくれているのです。
免疫の力を左右する3つの腸内細菌
そんな働き者の免疫細胞の仕組みをコントロールしているのが「腸内細菌」という細菌で、腸の表面には数多くの腸内細菌が住みつき、身体のなかでさまざまな働きをしています。腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類のグループに分かれていますので、一つずつ特徴を見ていきましょう。
1.善玉菌
消化吸収の促進や免疫力アップの働きのほか、腸内を酸性にして病原菌が住めない環境に整えてくれる菌です。体内で有益な働きをする細菌のグループで、アレルギーを起こしにくい身体を作る助けをしてくれます。
2.悪玉菌
腸内で毒素を生み出し腸壁を傷つけ、アレルギーを初めとするさまざまな疾患を引き起こす原因になります。また、体内の老化を促進し、免疫力を低下させて脳神経や心の状態を悪くするなど、悪影響を起こす菌です。
3.日和見菌
善玉菌、悪玉菌のどちらにも属しませんが、優勢なほうの味方につきます。善玉菌が優勢であれば、善玉菌と同じような働きをしてくれます。
このように腸内では善玉菌と悪玉菌が競い合っており、「バランスの良い状態」とは常に善玉菌が悪玉菌より優勢な状態のことを言います。ひとたびバランスがくずれると、善玉菌がうまく動けずアレルギーを引き起こす原因にもなってしまいます。
ですが、悪玉菌がゼロになればいいというわけではありません。悪玉菌がいることで善玉菌の効果が発揮されることもあるからです。
善玉菌の主な種類
ひとくちに善玉菌といっても非常にたくさんの菌がありますが、なかでも代表的なものは乳酸菌とビフィズス菌です。
一つ目の乳酸菌は人の腸内だけではなく、植物や発酵食品など自然界に広く存在しています。乳糖やブドウ糖などの糖類を栄養源にして、善玉菌のエネルギー源となる「乳酸」をつくります。
二つ目のビフィズス菌はヨーグルトに含まれていることも多く、乳酸菌の一種と思われていることも多いのですが、その特徴はまったく異なります。ビフィズス菌は乳酸だけでなく酢酸もつくり、その酢酸で腸内を酸性に保つことで、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。
腸内の善玉菌を増やそう
免疫力を高めてアレルギーを予防・改善するためには、善玉菌を増やして悪玉菌を減らし、免疫細胞を強化することが大切です。腸内環境をよくしておくには、日頃から意識的に取り入れる必要があります。では、効果的に効く菌を摂る方法を見ていきましょう。
正しい菌の摂り方
著者によると、もっともよい腸内細菌のバランスは善玉菌20%、日和見菌70%、悪玉菌10%です。しかし、善玉菌は加齢、ストレス、生活習慣の乱れでどんどん減少してしまいます。
日常的に摂取しやすいのは善玉菌が乳酸菌とビフィズス菌なのですが、腸内に住み続けることができる菌と数日間で排出されてしまう菌があります。
さらに、一人一人の腸内環境との相性もあり、どの菌が効果を発揮するかは実際に摂取してみないと分かりません。その種類によって腸のどの部分で働くかが異なっており、特定の善玉菌ばかりを摂取していると腸内細菌が偏ってしまうのです。
そのため、さまざまな菌を何度も継続して摂取し、自分の体に合う菌を増やしていくことが大事になります。
乳酸菌は味噌、醤油、納豆、つけもの、みりん、清酒など日本の伝統的な発酵食品にたくさん存在していて、これらは栄養価も高く、免疫力を高めるにはピッタリ。
一方でビフィズス菌は空気を嫌うため動物の腸内にしか存在しておらず、ヨーグルトやサプリメントから摂取するのが現実的な方法でしょう。
善玉菌は1日200億個の摂取が理想で、乳酸菌とビフィズス菌の両方を効率的に摂取しやすい食べ物が、ヨーグルトです。
一般的なヨーグルトで換算すると1日およそ200gを目安に食べれば良いことになりますが、これらの菌の多くは、少しずつ便として排出されてしまうため、毎日摂取することがオススメです。
もちろん、ヨーグルトだけを摂取すればいいというわけではなく、上記にあげたような食材も日常的に食事に取り入れてくださいね。
効果的なヨーグルトの選び方・食べ方
さて、生きた乳酸菌やビフィズス菌を豊富に含んでいるヨーグルトは店頭では「はっ酵乳」と表記されることもあります。はっ酵乳は乳酸菌数または酵母数が1mlあたり1000万個以上含まれているものを指し、複数の菌を組み合わせていることが基本です。
また、はっ酵乳を加工して飲みやすくした「乳製品乳酸菌飲料」という日本で誕生した飲料や、乳酸発酵させた脱脂乳を原料とした「乳酸菌飲料」と呼ばれる飲料もあります。
種類や商品によって菌数が大きく異なるので、購入するときは商品規格を知り、よく確認して購入しましょう。店頭でどれを買おうか迷ったときには次のポイントを参考にしてみてください。
1. 菌の性質で選ぶ
次項で菌の効果を解説していますので、自分が求めている効果がある菌が入っているものを選んで試してみましょう。
2.ビフィズス菌入りの商品を選ぶ
すべての製品にビフィズス菌が入っているとは限りません。著者いわく、ビフィズス菌は整腸作用がより高まるというデータがあるそうなのでオススメしたい商品です。
3.特定保健用食品のマークで選ぶ
食品そのものや含まれる成分について、厚生労働省から科学的な根拠や安全性、有効性を認められたものです。
ヨーグルトの1日の摂取の目安は200gでそれ以上食べても特に害はありませんが、冷たいヨーグルトでおなかが冷えて下痢をしたり、乳糖が分解されず腸にとどまり便秘になったりすることがあります。ヨーグルトは低カロリーですが脂肪分が高く、食べ過ぎると太る要因にもなるので注意しましょう。
「この時間帯に食べた方がいい」という決まり事は無く、好きなタイミングでかまいません。一日数回に分けて食べても良いでしょう。
また、一度ヨーグルトを取り始めたら2週間は同じヨーグルトを食べ続けて、体調を見てください。快便になったなど効果を感じたら体質にあっている証拠なので食べ続け、お腹がゴロゴロするなど不調を感じた場合は、体質に合っていないことが考えられますので違う種類を試してみましょう。
オススメの乳酸菌
前述のとおり、ヨーグルトを選ぶには菌の性質を見て選ぶ必要があります。菌には様々な種類と効果がありますが、ここでは、著者がアレルギーに効果が期待できるとしている乳酸菌をご紹介します。
・乳酸菌シロタ株
乳酸菌の代名詞的存在で、特に高い整腸作用で知られています。病原菌のみに反応する免疫細胞を活発化させ、免疫バランスを整えて花粉症などのアレルギー症状を軽減させる作用があります。
・KW乳酸菌
生きたまま腸に届き、免疫細胞を活発化して、アレルギーに過剰に反応する免疫の乱れを整えます。アレルギー症状の予防・改善効果を期待する人には特におすすめの菌です。
・フェカリス菌
加熱殺菌された乳酸菌で、花粉症に効果が大きいと言われています。他の乳酸菌より小さい球状のため、一度に大量の菌を摂取することができ、かつ腸のすみずみまで行き届くという特徴があります。
・LGG乳酸菌
消化液に負けず生きたまま腸に届く乳酸菌で、腸内に長くとどまるという特徴から、「持続性乳酸菌」ともいわれています。特に、アトピー性皮膚炎の予防効果が期待されています。
・クレモリス菌FC株
もともと日本には存在しない乳酸菌で、独特の粘りのあるヨーグルトができるのが特徴です。この粘り成分によって菌が生きたまま長まで届き、整腸作用のほか、血糖値上昇を抑え、アトピー性皮膚炎の抑制効果が報告されています。
オススメのビフィズス菌
ビフィズス菌は酸素に弱いため、ヨーグルトなどで摂るのが手軽で効果的です。ここでは、著者がアレルギーに効果が期待できるとしているビフィズス菌をご紹介します。
・M-16V(ブレーべ菌)
赤ちゃんのおなかの中にたくさん住んでおり、健康に成長するためになくてはならない菌です。腸内環境を正常化し、アトピー性皮膚炎の症状が改善されるなど、高い抗アレルギー作用が認められています。
・Bb-12株
多くのビフィズス菌が活動できない強い酸性下でも活動できる菌で、生きて腸まで届く可能性が高いとされています。免疫細胞であるマクロファージを活性化する働きも認められており、免疫力向上やアレルギー症状の抑制が期待できます。
・BB536(ロンガム菌)
酸や酸素、熱に強く、生きたまま大腸に到達し、世界中で約半世紀に渡って研究されている菌です。花粉症の自覚症状を緩和する抗アレルギー作用のほか、O157やインフルエンザなど強力な病原体の感染を防ぐ働きもあるとされています。
まとめ
アレルギーはいろいろな原因が絡み合って発生していますが、腸の環境を整える善玉菌はアレルギー症状を大きく改善する可能性があります。
数多くある善玉菌から自分に適したものを探すには時間が掛かるかもしれません。
ですが、腸内の環境が整えばアレルギー対策だけではなく、体全体の免疫力も高くなるなどメリットもたくさんあるので是非トライしてみてくださいね。
引用書籍:『アトピー・花粉症もスッキリ! アレルギーは腸から治す』(林 隆博 著/幻冬舎 )2017年11月出版
出版社・書籍紹介:『アトピー・花粉症もスッキリ! アレルギーは腸から治す』(林 隆博 著/幻冬舎 )2017年11月出版
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