FIREとは?早期退職との違いは?FIREに必要なことも解説!
「FIRE」という言葉を耳にし、気になっている人は多いのではないでしょうか。本記事では、FIREとは何か、FIREをした場合のメリットやデメリット、早期退職との違いについて解説します。FIREを正しく理解して、自由な生き方を手に入れましょう。
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FIREとは?
FIREとは、「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとった名称で、「経済的な自立」と「早期リタイア」を意味します。
定年を迎えるより前に退職し、会社に縛られることなく自由に生きようという考え方です。経済的な自立とは、給与収入ではなく資産の運用益で生活できる状態を指します。
近年、若い世代の間で関心が高まっており、中には30代や40代でFIREを実現する人もいます。今後はさらに新たな生き方の選択肢として社会に浸透していくでしょう。
早期リタイアとの違いは?
「早期リタイア」の意味も含むFIREですが、従来の早期リタイアとは別物です。どちらも定年前に退職するという部分は共通していますが、考え方が異なります。
従来の早期リタイアは、リタイア後のために資金を準備し、リタイア後はその資金や年金、退職金などで生活するスタイルです。資産を切り崩しながらの生活であるため、FIREの場合よりも多くの資金が必要です。老後に資金が尽きないよう、退職前にしっかりと貯蓄をしておく必要があります。
一方、FIREの場合は、投資などによる運用益だけで生活できるようになったタイミングでリタイアします。資産を切り崩さず、不労所得で生活するスタイルです。毎月の生活費を利益で賄えるため、経済的に自立しているのが大きな特徴といえます。
FIREを実現するために押さえておきたい3つのポイント
経済的に自立しながら、会社や固定の労働に縛られることなく過ごせるFIRE。しかし、その実現のためにはいくつか条件があります。ここでは、FIREを実現するために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
なお、ここでご紹介するポイントは、FIREが発祥した米国の環境が元になっています。日本の金融経済情勢とは異なるということと、時代によっても大きく変化するということを念頭に置いて、あくまで一説として捉えておくようにしましょう。
FIREには「年間支出の25倍の資産」が必要(アメリカ基準)
アメリカにおいて、FIREにはリタイア後の年間支出額の25倍の資産が必要といわれています。例えば、年間支出額が200万円の場合であれば、5,000万円の資産が必要です。
単身世帯の平均支出額180万円で計算した場合は、4,500万円が必要です。リタイア前にこれだけの金額を用意しなければならないため、非常にハードルが高いといえます。
4%ルールを守る必要がある(アメリカ基準)
前述した「年間支出の25倍の資産が必要」というポイントの背景には、「4%ルール」があります。
4%ルールとは、「年間の生活費を投資元本の4%以内に抑えれば、資産を減らすことなく暮らせる」という、アメリカで生まれた理論[1]です。簡単に言うと、「生活費を投資で得られる利益内に収める」ということになります。この理論に沿って、現在の生活費(年間支出)から逆算すると、必要な投資元本は年間支出の25倍以上になるわけです。
ただし、日本において4%ルールが適用されるかどうかは賛否両論です。日本において4%ルールを元に実行したFIREは、アメリカと比較すると成功率が低いという大学の研究結果も存在します[2]。
また、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」においては、日本人の平均寿命が男性約 81 歳、女性約 87 歳と長寿化していることや、バブル崩壊以降の景気停滞による賃金低下などを踏まえた資産形成が必要になることが解説されています[3]。
このように、あくまで4%ルールはアメリカのルールであるため、現在の日本にそのまま当てはめることにはリスクがあります。そのため、日本の経済情勢や個人の生活環境にあわせて、リタイアする際の資産は十分に検討しなくてはなりません。
また、次にご紹介する「サイドFIRE」などを用いて、資産運用ですべてカバーせず、収入を得ながら生活する方法もおすすめです。
副業と組み合わせる「サイドFIRE」という方法もある
「サイドFIRE」とは、資産運用ですべてをカバーせず、副業で収入を得ながら生活する方法です。FIREを実現した人の中には、ビジネスや投資などで大きな資産を築いた人もいますが、資産形成はほとんどの人にとって高いハードルといえるでしょう。
そこでおすすめしたい方法が、サイドFIREです。例えば、年間支出額240万円の人であればリタイア時に6,000万円程度の資産が必要です。しかし、副業で月10万円の収入があるなら、必要な資産額は3,000万円程度まで抑えられます。
FIREを実現する手順
FIREを実現するためには、適切な手順を踏んで準備を進めることが大切。闇雲に目指すのではなく、必要な工程を一つずつクリアしていくことで、成功する確率もアップするはずです。以下の手順で進めましょう。
1. 毎月の支出を把握する
まずは、毎月の支出を把握することから始めましょう。毎月の支出額が分からなければ、年間支出額を計算できません。
そこでおすすめしたい方法は、家計簿アプリを使うことです。アプリを活用すれば自身の支出や収入を自動で記録できるほか、どのようなことにいくらお金を使っているのかが一目瞭然です。
2. 必要な資産額を計算する
次に行うことは、必要な資産額の計算です。
このとき計算に入れておきたいことは、リタイア後にかかる費用が在職中とは異なる点です。たとえば、リタイア後は社会保険の種類が変わり、保険料の負担が増えます。
ほかにも、子どもの学費や結婚資金など、家族のライフイベントも考慮する必要があります。年間生活費が算出できたら、4%ルールやその時期の経済・社会情勢、ご自身の生活状況などを踏まえて、必要な金額を割り出しましょう。
3. 資産を形成する
最後に、FIREに向けて必要な資産を形成します。目標金額や期間、毎月必要な入金額を明確にしましょう。毎月いくら積み立てていけばよいか計算するには、シミュレーションソフトを使用するとよいでしょう。
具体的な資産形成の手段は以下のとおりです。
- iDeCo
- 個人型確定拠出年金のこと。自分でお金を出して、預金や投資信託などで運用していき、60歳以降に運用してきたお金を受け取る仕組み。節税効果があるのが特徴。
- NISA
- 少額からの長期・積立・分散投資を支援する非課税制度のこと。年間120万円が上限の「つみたて投資枠」と年間240万円が上限の「成長投資枠」が併用できる(総枠は最大1,800万円)[4]。
- インデックスファンド
- 特定の株価指数などの指標に連動した運用を目指す投資信託のこと。
- 不動産投資
- アパートやマンションなどの不動産を購入して貸出することで利益を得る投資のこと。
- 貯蓄
- 定期預金などを利用して銀行にお金を預けたり、国債を購入したりして金融資産を蓄えること。
特徴やリスクは投資の種類ごとに異なります。その投資ごとの特徴やメリット、デメリットを事前に理解しておきましょう。リスクが高すぎる手段は避け、分散投資することをおすすめします。
投資に絶対はありません。資産が増えるどころか、減る可能性がある点も理解しておきましょう。
FIREのメリット
漠然と「FIREのメリットは、働かなくていいこと」と考えているかたも多いでしょう。しかし、FIREにはそれ以外にもさまざまなメリットがあります。ここではFIREのメリットを3つ紹介します。
自由な時間が増える
FIREをすると労働に時間を奪われることがなくなるため、自由な時間が増えます。新しいことへのチャレンジや、趣味、勉強などのやりたいことをしてもよいでしょう。これまで仕事第一でなかなか家族のために時間を使えなかった人も、FIRE達成後は家族のために時間を使えます。
好きな場所に住むことができる
FIREを達成すれば、住む場所に制約がなくなり、好きな場所に好きなタイミングで住めるようになります。在職中は、通勤時間を考えて住まいを決める必要があり、転勤の多い仕事である場合は、自分の意思とは関係なくさまざまな土地に住まなくてはなりません。
しかし、FIRE達成後は利便性を求めて都会に住むことも、老後を見越して田舎に移り住むこともできます。旅をしながらの生活や、海外での生活も望めばできるでしょう。
自分の好きな働き方ができる
自分の好きな働き方ができることもメリットです。完全なFIREを実現し計画通りに資産運用ができていれば、基本的には働かなくても生活できます。
だからといって必ず仕事を辞めなければならないというわけではありません。仕事にやりがいや楽しさを感じている人は、仕事を続ける選択肢もあります。
例えば、以前から興味のあった分野への再就職や、在職中のように決まった時間に決まった業務を行うのではなく、好きな時間に好きな仕事をする働き方も可能です。
一定の利益が保証されているからこそ、収入を気にせずやりがいを重視して働くことができるでしょう。
FIREのデメリット
ここまでご紹介した通りメリットのあるFIREですが、デメリットも存在します。FIREを検討する方は、デメリットも理解しておくことが大切です。ここでは3つのデメリットを紹介します。
再就職が難しくなる
キャリアに空白期間ができることで、再就職が難しくなる可能性があります。FIRE後の資産運用が順調であれば問題ありませんが、うまくいかず働く必要性が出てきたときに、長期間仕事から離れていたことは面接の際にマイナス評価の要素となり得ます。
リタイア前に経験を積み重ねてきたとしても、ブランクが長くなり年齢も重ねてしまうと、即戦力として見てもらえず、中途採用も難しくなります。30代や40代ではまだ可能性があっても、50代以降となると中途採用のハードルが上がるでしょう。
生きがいを失う場合がある
FIRE前は早く仕事を辞めたいと思っていても、いざ辞めてみたら虚無感に襲われる可能性があります。他人との関わりが減ることで孤独を感じてしまう場合もあります。生き生きと仕事をしているかつての同僚を街で見かけ、自分だけが立ち止まっているような気持ちになることもあるでしょう。
もともと本気で打ち込めるような趣味があればまだしも、自分のやりたいことが見つからず、生きがいを失う可能性もあります。FIREによって得た時間で何をするかのイメージが湧かない方は、慎重に検討したほうがよいでしょう。
年4%の運用益が維持できるかは分からない
4%ルールの根拠である年4%の運用益が維持できるかどうかは、誰にも分かりません。投資にはリスクがあり、資産を用意できてFIREを実現できたとしても、市場の変動次第では想定どおりの運用益を得られるとは限らないためです。維持どころか、資産が大きく減ってしまう可能性もあります。
また、病気やけがのリスクや親の介護など、予期せぬ事態が起こることで、運用益の範囲内で年間支出をまかなえなくなることもあります。
さらに、年4%の運用益が維持できたとしても、元々用意した資産の額や将来の日本の経済情勢によっては、「安定した暮らしを送るには足りない」となるリスクも存在します。前述したとおり、そもそも4%ルールはアメリカの基準であるためです。
まとめ
FIREは、より自由で自分らしい生き方を実現できるライフスタイルです。会社や時間に縛られることなく、好きなことを好きなときに好きなだけする。誰もが一度は夢見たことのある生活なのではないでしょうか。
その一方で、リタイア後の資産運用が思いどおりにいかなかったり、生きがいを失ったりするなど、逆に人生の充実度が下がってしまうケースもあることを認識する必要があります。メリット・デメリットを正しく理解し、後悔のないFIREを目指しましょう。
- AAII Journal:
“Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable” - 山口經濟學雜誌 62 巻 1 号 15-49 頁
4%ルールは可能か : 日米比較 - 金融庁
金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について - 金融庁
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