マタニティブルー
子育て

医師監修:マタニティブルーとは?原因や症状、対処法を解説

妊娠や出産は人生において大きなイベントのひとつです。一方で、「これからの妊娠期間や出産のことを考えると不安」「出産後、赤ちゃんを心から愛せるか、きちんと育てられるか心配」といった不安を感じるママは少なくありません。

妊娠中や出産直後に、頻繁に不安を感じたり、ちょっとしたことで涙が出たり、感情の起伏が激しくなる状態のことを「マタニティブルー」といいます。

妊娠初期や産後すぐの時期にみられますが、ほとんどの場合は一過性であるため心配はいりません。この記事では、マタニティブルーの原因や対処法、産後うつとの違いなどをご紹介します。

監修者

井上 信明(いのうえ のぶあき)
日本小児科学会専門医・同指導医/米国小児科専門医/米国小児救急専門医

日本の医学部を卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科および小児救急の研修を行う。

マタニティブルーとは?産後うつとの違い

マタニティブルーと似た症状に「産後うつ」があります。産後うつは専門家による診療が必要となるため、病院の受診が必要です。

ここでは、マタニティブルーと産後うつとの違いについてご紹介します。

マタニティブルー:一時的な精神不安定状態

マタニティブルーの正式名称は「マタニティブルーズ:maternity blues」といい、産後3~10日程度の期間に精神が不安定になる状態を指します。近年では、妊娠中に起こる不安症もマタニティブルーに含まれることがあります。

日本では、約30~50%のママがマタニティブルーを経験する[1]といわれています。マタニティブルーの症状は基本的に一過性であり、通常は特別な治療をしなくても1週間程度で改善するため、病院を受診する必要はありません。

マタニティブルーになりやすい人の特徴には、真面目で責任感が強い人やPMS(月経前症候群)になったことがある人、周囲へ悩み相談するのが苦手な人などが挙げられます。

産後うつ:治療が必要な病気

産後うつの症状はマタニティブルーと似ていますが、産後2週間~数カ月と、長期間持続するのが特徴です。

マタニティブルーのような症状が14~15日以上続いているのであれば、産後うつの疑いがあるので、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

マタニティブルーの原因

マタニティブルーが起こる原因は、産前産後に起こる心身の変化が複雑に絡み合うことだと考えられています。

ここからは、マタニティブルーを引き起こす原因について説明します。

女性ホルモン量の低下

マタニティブルーは、女性ホルモン量の急激な低下が原因で起こる場合があります。

妊娠をすると、女性ホルモンが卵巣だけでなく、胎盤からも分泌されるようになります。しかし、出産時に胎盤が排出されると、女性ホルモンの分泌量が大きく減少します。

この女性ホルモンの急激な変化に体が適応できず、不安やストレスを感じやすくなることがマタニティブルーを引き起こす原因といわれています。

体力の低下や生活スタイルの変化

妊娠や出産によって体力が低下したり、慣れない育児で生活スタイルが大きく変わったりすることも、マタニティブルーの原因のひとつとされています。

妊娠中は、お腹が大きくなることで体への負担が増し、運動制限なども伴うことから、体力が著しく低下する傾向にあります。

さらに、産後は赤ちゃん中心の生活となるため、昼夜を問わずお世話が必要になり、睡眠不足にもなるでしょう。このような産前産後に特有の疲労が積み重なることも、マタニティブルーに大きな影響を与えると考えられます。

妊娠中・産後の心理的な不安

出産や育児をうまくこなすことができるのか不安な気持ちになることも、マタニティブルーの原因となります。

母親としてのプレッシャーや家計のやりくりはもちろん、育児で自分の行動が制限されるなど、さまざまな不安要素がマタニティブルーを引き起こす要因になります。

夫婦や家族関係に不安がある方や、妊娠以前から精神的不調を抱えていた方などは注意が必要です。

妊娠中・産後の心理的な不安

マタニティブルーの症状

マタニティブルーの症状は、大きく分けて精神面の症状と身体面の症状に整理できます。

ここでは、マタニティブルーの主な症状をご紹介します。

精神面の症状

マタニティブルーのときは、精神面の症状が現れることがあります。以下の症状に当てはまる場合は、マタニティブルーの可能性があります。

  • 気持ちが落ち込む
  • 育児に対して、強い不安を抱く
  • イライラする
  • 泣きたくなる、涙もろくなる
  • 自己肯定感が低下する
  • 無気力
  • 集中力が低下する

身体面の症状

マタニティブルーのときに、身体に起こる症状は以下のとおりです。

  • 眠れなくなる、あるいは眠り過ぎてしまう
  • 食欲が低下する
  • 体の倦怠感
  • 動悸・息切れ
  • 頭痛
  • 過食や拒食

マタニティブルーの対処法

マタニティブルーは一過性のものとわかっていても、育児をしながらマタニティブルーの症状と向き合うのは精神的にも体力的にも大変です。

ここでは、マタニティブルーの症状を落ち着かせる方法を紹介します。

できる範囲で睡眠と休息をとる

まずは睡眠と休息をとることが大切です。産後は慣れない育児や家事に追われ、睡眠不足になったり自分の時間がとれなかったりするケースがほとんどです。

可能な限り自分の時間を作り、休息や睡眠をとることが、ママの気持ちに余裕を持たせてくれます。パートナーや両親、ベビーシッターなど、安心して赤ちゃんのお世話を任せられる人に頼んで、できる範囲でゆっくり寝たり、気分転換に友だちと電話をしたりして、自分の時間を作る工夫をしてみてください。

周りの人に感情を素直に伝える

自分の気持ちを抑えこみすぎず、不安な気持ちや育児で辛いことなどを周囲に相談することも重要です。ひとりで抱え込まず、素直に感情を言葉に出してみましょう。

安心して話せる人が周りにいない場合は、出産した病院が提供している産後ケアや自治体の相談窓口を利用する方法もあります。みんなで子育てをしているという気持ちを忘れずに、周りの人をどんどん頼ってください。

体に負担のない体操をする

産後の経過にもよりますが、順調であればストレッチなど軽い体操を取り入れるのもおすすめです。体に負担がかからないように、産後すぐは寝たままできる腹式呼吸や足首回しなど、軽い体操を取り入れてみてください

自律神経が整い、ストレスが軽減したり、気持ちがリフレッシュしたりする効果が期待できます。

マタニティブルーを経験することは特別なことではないと理解する

マタニティブルーになることは珍しいことではなく、多くの人が経験するものだということを理解しましょう。

すでにご説明したように、出産後は生活スタイルが大きく変わり、女性ホルモンのバランスが乱れやすくなります。体がその変化にうまく適応できないと、自律神経が乱れ、不安やストレスにつながるのです。これは、すべてのママが経験することであり、そのうち約半数のママがマタニティブルーを経験すると言われています。

ひとりで完璧な育児を目指そうと無理をせず、気軽に周りの人に頼ったり協力をお願いしたりしながら、赤ちゃんを育てていくことが大切です。

マタニティブルーを経験することは特別なことではないと理解する

まとめ

マタニティブルーは、ホルモンバランスの乱れや身体的疲労が重なる時期に起こりやすい、生理現象のようなものです。産後は誰でもマタニティブルーになる可能性があるため、自分を責めたり追い詰めたりする必要はありません。

ママは、何かと自分のことを後回しにしがちです。しかし、赤ちゃんに良いケアをするためには、ママが健康であることが大切です。辛いときは周囲にサポートを求め、ストレスを上手に発散しながら育児に取り組みましょう。

マタニティブルーの状態が長く続くことは、産後うつのリスクにもなるため、不安や食欲不振などの状態が長引くときには、早めに医師に相談してください。

  1. 公益社団法人 日本産婦人科医会:
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