便利に賢く自炊を始めよう 食材の栄養素を守る「冷凍保存術」
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「期限が切れそうだからパックごと冷凍しよう」「ラップで包んで冷凍すれば大丈夫でしょう」と、間違った方法で食材を冷凍している人は意外と多いのではないでしょうか。正しい冷凍保存方法を覚えれば、栄養価や風味をキープしながら、食材を長持ちさせることができます。冷凍保存の基礎知識を身につけて、便利に賢く自炊を楽しみましょう。
食材を冷凍するメリットとは
冷凍保存のコツを押さえれば、食材を長持ちさせるだけではなく、調理を楽にすることもできます。まずは、冷凍保存のメリットについて紹介します。
1.冷凍保存はいいことたくさん!
冷凍保存の利点は、大きく4つあります。
1つめは、食材を長持ちさせられる点です。冷凍することで、加工品などの賞味期限を先延ばしすることができます。また、野菜類の栄養をキープできるほか、食材によっては栄養価を高めることができます。
2つめは、食費の節約になる点です。特売など食材を安く購入できるときにまとめ買いし、冷凍保存しておけば、食事にかかる費用を抑えることができます。また、保管をすることで廃棄食材が出にくくなるため、フードロスを防ぐ効果も期待できます。
3つめは、調理の時間を短くできる点です。あらかじめ使いやすい大きさにカットして冷凍しておけば、実際に調理するときの時間を短縮できます。また、凍らせることで手で割って細かくできる食材もあり、包丁を使わずに調理できるようになります。
4つめは、火の通りが早くなる点です。野菜は冷凍すると熱が入りやすくなり、炒め物や煮物の調理時間を大幅にスピードアップできます。また、味が染みこみやすくなるので、調味料を控えてヘルシーな料理を作ることができます。
2.冷凍するための5つのコツとは
おいしく冷凍するためには、5つのコツがあります。
1つめは、新鮮なまま冷凍することです。食材のおいしさと栄養を保つカギは、新鮮なうちに冷凍することにあります。傷みはじめてからではなく、購入したらすぐに冷凍保存するのが基本です。
2つめは、野菜は洗って水気をふき取ることです。水分がついたまま冷凍をすると、霜がついて傷んでしまうことがあります。キッチンペーパーなどで水気をふき取り、ビニール製で密封できる市販の冷凍用保存用袋に入れて冷凍しましょう。
3つめは、冷凍用保存用袋に入れたら空気を抜くことです。食材は、空気に触れていると酸化して、傷みやすくなります。冷凍用保存袋に入れるときは、なるべく隙間ができないようにし、空気を抜くように心がけましょう。
4つめは、素早く冷凍することです。冷凍する前に、熱伝導率の高い金属トレーに乗せたり、食材を平らに薄くまとめたりして、冷凍までにかかる時間を短くしましょう。そうすることで、食材のおいしさを閉じ込めたまま保存できます。
5つめは、小分けすることです。解凍した食材を再び冷凍するのは間違いです。一度に使える分量に小分けして冷凍し、調理に必要な分を取り出しましょう。
3.解凍の基本と活用法
冷凍保存した食材は、冷蔵庫の冷蔵室でゆっくり時間をかけて解凍するのがおすすめです。ただし、7〜8時間はかかるので、翌日の料理に使う食材の解凍など、調理を急いでいない場合に適しています。
急いでいる場合は、氷水を入れたボールで冷凍用保存袋ごと解凍したり、室温で自然解凍したりする方法があります。電子レンジを使用する際は、解凍モードを使用し、加熱ムラが起きないように注意しましょう。肉類はラップをはずしてから解凍するのが基本です。
冷凍に適した野菜や果物とは
冷凍することで、おいしさはもちろん、栄養もキープできる野菜や果物があります。保存方法やメリットについて具体的に紹介します。
1.トマトはグルタミン酸がアップ
トマトを冷凍すると、旨味成分のグルタミン酸が約3割アップするという研究結果があります。つまり、酸味のあるトマトでも、冷凍をすることで甘みや旨味が増すのです。時間が経つと、水分と同時に水溶性のビタミンも失われてしまうので、完熟の状態で冷凍するように心がけましょう。
トマトを冷凍保存する際は、洗ってから水気をふき取り、冷凍用保存袋に入れましょう。丸ごと冷凍すれば、凍ったまますりおろしたり、少し解凍して好きな大きさに切ったりして使えます。また、ざく切りにして袋の中で平らに伸ばしておけば、調理するときに手で折って使うことができます。
2.しいたけは栄養価が約3倍に
きのこ類を冷凍すると、水分が膨張して細胞壁を壊し、RNA分解酵素という酵素が働きます。すると、グアニル酸やグルタミン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸が、約3倍にも増えて旨味や栄養価がアップします。ただし、解凍すると旨味や水溶性ビタミンが流れ出してしまうので、調理する際は凍ったまま使うことを基本にしましょう。
しいたけを冷凍保存する際は、水洗いはせずに、軽く汚れをふき取りってから冷凍用保存袋に入れましょう。石づきを切り落として「軸」と「かさ」の部分に分けたら、「かさ」はそのままでも、薄切りにしても構いません。まいたけやえのき、しめじ、エリンギなども冷凍保存できます。
3.バナナはポリフェノールが増加
バナナは完熟すると、シュガースポットと呼ばれる黒い斑点が現れ、糖度とポリフェノールが増します。ただし、ポリフェノールの働きはバナナの酸化とともに弱まるので、シュガースポットが出始めたら、すぐに冷凍保存するのがおすすめです。ポリフェノールには活性酸素を取り除く抗酸化作用があり、アンチエイジングや生活習慣病の予防に役立つといわれています。
バナナを冷凍保存する際は、房から分けて冷凍用保存袋に入れます。丸ごと冷凍してもカチコチには凍らないので、凍ったままアイスキャンディのように食べることができます。また、輪切りにして袋の中で重ならないように並べておけば、ミキサーで牛乳と混ぜてバナナシェイクにするなど、調理に使いやすい状態で保存できます。
4.冷凍レモンを皮ごと食べよう
レモン100gには100mgのビタミンCが含まれていて、その内訳は果皮に50mgと、果汁に50mgといわれています。つまり、丸ごと皮まで食べれば、より多くのビタミンCを摂取できるのです。さらに、皮に含まれるヘスペリジンやビタミンE、リモネン、シトラールといった成分とビタミンCを一緒にとることで、ビタミンCの働きが5倍になるともいわれています。
レモンを冷凍保存する際は、洗ってから水気をふきとり、香りが飛ばないようにラップに包んでから冷凍用保存袋に入れます。丸ごとなら1個ずつ、カットしたものなら重ならないように並べて包みましょう。調理する際は、皮ごとすりおろせば、多くの栄養をとることができます。ただし、皮を使うのであれば、国産の無農薬レモンを選ぶことが大切です。
肉や魚の冷蔵法とは
肉や魚を冷凍保存する際は、購入時のパックやトレーから取り出し、冷凍用保存袋に入れるのが基本です。また、調理しやすい大きさに切り分けておくと便利です。
1.鶏もも肉はカットしてから
鶏もも肉は、用途に合わせた大きさにカットしてから冷凍します。キッチンペーパーで水気をよくふき取り、ラップで包んでから冷凍用保存袋に入れます。
調理する際は、グリルチキンや照り焼き、唐揚げなどは解凍してから。茹で鶏や煮込み、シチューなどは冷凍のままで使うことができます。
2.豚薄切り肉は料理に合わせて
豚薄切り肉は、水気を拭き取り、使いやすい分量をラップで包んでから、冷凍用保存袋に入れます。しょうが焼きなどの炒め物はこの方法がおすすめですが、豚しゃぶなどにする際は、塩と酒を加えた湯で茹でておき、水気を拭き取ってからラップに包み、冷凍用保存袋に入れる方法もあります。
ちなみに、豚肉も鶏肉も、冷凍する前に塩と酒を軽くふっておくことで、傷みを防ぐことができます。また、冷凍すると肉の繊維が壊れるため、味が染み込みやすくなり、旨味が増して柔らかくなるという効果が期待できます。
3.魚の切り身は酒をふって
魚の切り身は、さっと水洗いをして水気をふき取り、酒を軽くふってから一切れずつラップで包み、冷凍用保存袋に入れます。グリルで焼魚にしたり、鍋で煮魚にしたりする際などは、冷凍したままで調理ができます。
小さな魚の場合は、ちりめんじゃこは、そのまま冷凍用保存袋に入れます。しらす干しなら、ラップに包んでから冷凍用保存袋に入れます。どちらも、パスタやチャーハンなら凍ったまま調理できるほか、室温ですぐに解凍できるので便利です。
まとめ
冷凍保存のメリットには、「食材を長持ちさせられる」「食費の節約になる」「調理の時間を短くできる」「火の通りが早くなる」などがあります。新鮮なうちに冷凍用保存袋に入れてから冷凍するなど、いくつかのコツを意識して保存しましょう。
また、冷凍保存することで、グルタミン酸が増すトマトや、各種アミノ酸が増すきのこ類のように、栄養価がアップする食材もあります。冷凍保存を効果的に取り入れて、自炊で健康的な生活を目指しましょう。冷凍保存をする際には、食材を調理しやすい大きさに切り分けたり取り分けたりし、場合によっては塩や酒で下味をつけておくこともポイントです。
書籍紹介:『栄養素も鮮度も100%キープ! おいしい冷凍保存術』(島本美由紀著/宝島社)2021年6月出版
出版社書籍紹介:『栄養素も鮮度も100%キープ! おいしい冷凍保存術』(島本美由紀著/宝島社)2021年6月出版
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