子育て

【医師監修】赤ちゃんの体重増加の目安は?増えない・増えすぎについても詳しく解説

赤ちゃんの体重は生後1カ月までに約1kg増加し、1歳を迎えると出生時の約3倍まで増えるのが一般的です。ただし、すべての赤ちゃんが等しく成長していくわけではなく、あくまで目安です。なかには思うように体重が増えなかったり、むしろ減ってきたりして不安に感じているご家庭もあるでしょう。

この記事では、赤ちゃんの体重の増え方について解説していきますので、健やかな成長の目安として、参考にしてみてください。

監修者

井上 信明(いのうえ のぶあき)
日本小児科学会専門医・同指導医/米国小児科専門医/米国小児救急専門医

日本の医学部を卒業後、日本、アメリカ、オーストラリアにて小児科および小児救急の研修を行う。

ママの母乳の出方には個人差があり、産後すぐに母乳がたくさん出るとはかぎりません。また、産まれたばかりの赤ちゃんはうまく乳首を吸えなかったり、ミルクを飲ませても上手に飲めなかったりすることがあります。

そんなときに本当に飲めているのか判断するために役立つのが体重の増え方です。定期的に行う健康診査が近づいてくると、「赤ちゃんの体重が思うように増えていない」と心配に思う方もおられるでしょう。そんな不安が解消できるように、この記事では赤ちゃんの月齢ごとの体重の目安や体重の量り方、母乳/ミルク育児のことまで詳しく解説していきます。

新生児の体重は成長のバロメーター

新生児とは、産まれてから生後4週(28日)未満の赤ちゃんのこと。新生児の体重の変化は、成長のバロメーターのひとつとして考えられています。体重が毎日少しずつ増えていれば、順調に成長していると思ってよいでしょう。

ただし、赤ちゃんの成長には個人差があります。産まれてすぐの赤ちゃんの胃はとても小さいので一度にたくさんの量は飲めませんし、母乳やミルクをあまり飲んでくれない子もいるものです。さらに、最初のうちは母乳の出もよくなく、ミルクのように飲んだ量が目に見えないので、ちゃんと飲んでいるのか不安に思うことでしょう。

赤ちゃんの足

「体重が増えない」「母乳の飲みが悪い」「ミルクを飲む量が減った」など、気になることがあれば、赤ちゃんを出産した医療機関や各自治体の育児相談窓口などを活用して、不安を解消しましょう。

生後12カ月までの赤ちゃんの平均体重・身長

産まれたばかりの赤ちゃんが1歳になるまでに、体重は出生時の約3倍まで増えるといわれています。その後、だんだんと緩やかな増加に変わります。

また、新生児から12カ月までの体重の目安は、男の子と女の子でも若干異なり、一般的に女の子よりも男の子の方が身長と体重がともに増加しやすい傾向があります。

ここでは、男女別の生後12カ月までの赤ちゃんの平均体重・身長をご紹介します。値より少なくても(または多くても)、各月・年齢における子どもたちの身長や体重のデータを利用して作成した「発育曲線(いわゆる成長曲線)」のカーブに沿った成長をし続ける限り、大きな問題はありません。数値そのものではなく、毎月どのくらいずつ増えているかを参考にしてください。

男の子の平均体重・身長

まずは、男の子の出生時から12カ月までの身長・体重の平均値についてご紹介します。あくまでも目安ですが、男の子はおおむね12カ月で6kg程度体重が増え、約25cm身長が伸びています。

男の子の体重と身長の平均値(平成22年調査)[1]

月齢 体重 身長
出生時 2.98kg 48.7cm
生後1ヶ月〜2ヶ月未満 4.78kg 55.5cm
生後2ヶ月〜3ヶ月 5.83kg 59.0cm
生後3ヶ月〜4ヶ月 6.63kg 61.9cm
生後4ヶ月〜5ヶ月 7.22kg 64.3cm
生後5ヶ月〜6ヶ月 7.67kg 66.2cm
生後6ヶ月〜7ヶ月 8.01kg 67.9cm
生後7ヶ月〜8ヶ月 8.30kg 69.3cm
生後8ヶ月〜9ヶ月 8.53kg 70.6cm
生後9ヶ月〜10ヶ月 8.73kg 71.8cm
生後10ヶ月〜11ヶ月 8.91kg 72.9cm
生後11ヶ月〜12ヶ月 9.09kg 73.9cm

女の子の平均体重・身長

続いては、女の子の新生児から12カ月までの体重の目安をご紹介します。男の子に比べて、女の子のほうが体重の増加は緩やかな傾向がみられます。もちろん個人差はありますが、1歳になる頃には5.6kg程度体重が増え、約24cm身長が伸びています。

女の子の体重と身長の平均値(平成22年調査)[2]

月齢 体重 身長
出生時 2.91kg 48.3cm
生後1ヶ月〜2ヶ月未満 4.46kg 54.5cm
生後2ヶ月〜3ヶ月 5.42kg 57.8cm
生後3ヶ月〜4ヶ月 6.16kg 60.6cm
生後4ヶ月〜5ヶ月 6.73kg 62.9cm
生後5ヶ月〜6ヶ月 7.17kg 64.8cm
生後6ヶ月〜7ヶ月 7.52kg 66.4cm
生後7ヶ月〜8ヶ月 7.79kg 67.9cm
生後8ヶ月〜9ヶ月 8.01kg 69.1cm
生後9ヶ月〜10ヶ月 8.20kg 70.3cm
生後10ヶ月〜11ヶ月 8.37kg 71.3cm
生後11ヶ月〜12ヶ月 8.54kg 72.3cm

体重増加はあくまで「目安」です。

赤ちゃんの体重についていろいろご紹介してきましたが、上記はあくまでも平均値です。赤ちゃんには個人差があり、成長スピードはそれぞれ。出生体重が違うように、成長が遅めの赤ちゃんもいれば、どんどんと大きく育っていく赤ちゃんもいます。なお、成長のタイプは、以下のように大まかに分類されます。

一般型
生後半年まで急激な体重増加がありますが、その後は緩やかに発育していく一般的なタイプ。
立ち上がり型
序盤は一般型よりも急速に発育が進むものの、その後は横ばいの体重増加となるタイプ。
追いつき型
序盤は緩やかな体重増加となるものの、途中から急激に発育が進み一般型などに追いつくタイプ。

基本的には、ミルクや母乳をよく飲み、機嫌がよく、排せつ物がしっかり出ているようであればまず問題ないでしょう。気になることがあれば産院、小児科、自治体の子育て相談窓口に連絡することをお勧めします。

赤ちゃんの体重増加のペース

ここからは赤ちゃんの体重増加のペースについてご紹介します。

生後1カ月は1kg増が目安

出生時から生後1カ月までに1kg体重が増えていれば、成長に問題はないと言ってよいでしょう。1日で約30g体重が増えていく計算です。

もちろん赤ちゃんの成長スピードには個人差があるため、体重増加が900gの子もいれば、1kg以上体重が増えていく子もいます。1日に約30g増加という数字を目安にして、定期的に体重を確認してあげましょう。

「発育曲線」に沿って成長していればOK

乳幼児の適切な体重増加をチェックするには、厚生労働省が10年ごとに調査・作成している「発育曲線」[3]と呼ばれる帯グラフが役立ちます。これは、各月・年齢における子どもたちの身長や体重を計測したデータをプロットしたもの。子どもの発育状況の目安が確認できます。

発育曲線は母子健康手帳に記載されています。一生のうちで最も身体が成長する時期である生後0~12カ月は、体重計測後にグラフへ記入するのがおすすめです。

なお、発育曲線は子どもの身長や体重の異常を確認するためだけではなく、その増加傾向の確認にも用いるものです。乳幼児の発育は個人差が大きいので、ある程度帯に沿って順調に育っていれば問題ありません。

一方、数カ月単位のデータをまとめて見たとき、以下のような異常があるなら、かかりつけ医に相談してみましょう。

  • 発育曲線の帯より大きくはずれていく(太りすぎ、やせすぎ)
  • 成長が止まってグラフが横ばいになった
  • 体重だけ増えて急に傾きが大きくなっている

赤ちゃんの体重の量り方

体重計に乗る赤ちゃん

新生児の体重を量る際は、タイミングと体重計に注目しましょう。特に量るタイミングによって、体重は大きく増えたり減ったりすることもあるので、正しい測定を心がけましょう。

量るタイミングは?

赤ちゃんの体重を量るときは、毎回できる限り同じ条件にすることが望ましいです。たとえば、着ている服によっても体重は変わります。食後や排泄後など、できる限り決まった時間に量る習慣をつけましょう。

なお、そもそも体重はずっと右肩上がりでなく、増えたり減ったりを繰り返しながら成長していきます。神経質に、毎日量る必要はありません。

赤ちゃんの体重を量る工夫

通常赤ちゃんの体重を毎日計測する必要はありません。4〜5日、あるいは1週間単位で計測するだけでも十分でしょう。この場合、赤ちゃんを抱っこした状態と抱っこしていない状態でパパやママの体重を計測し、その違いを引き算することで、赤ちゃんの体重がわかります。新生児であれば、7日間で200g前後増えますので、最低200gの違いがわかる体重計であれば、ある程度の役割は果たすことができます。

また必要に応じてベビースケールを利用することも有用です。ベビースケールはクリニックや保健センターに置いてあるほか、商業施設やベビー用品店の授乳室でも見かけます。お出かけの際、おむつ替えで立ち寄ったときに体重計測しておくのもいいでしょう。

母乳かミルクかで、体重の増え方は変わる?

赤ちゃんの体重増加で、切っても切れないのが栄養方法の話。母乳かミルクかによって、体重の増え方が変わってくることがあるからです。

母乳育児

母乳育児とは母乳で赤ちゃんを育てることで、母乳のみのことを「完全母乳」、足りない分をミルクで補う場合を「混合」と言います。一般的に完全母乳で育てている赤ちゃんは、体重の増加が緩やかな傾向があります。

母乳はあげた量が目に見えないため不安に感じると思いますが、授乳のリズムが整うまでは、母乳は赤ちゃんが欲しがった分だけ与えてよいと言われています。また、初めは母乳の出がよくなくても、赤ちゃんに吸わせるうちに母乳が出てくるようになるので、焦らずあげていきましょう。

ミルク育児

ミルク育児とは、粉ミルクや液体ミルクなど、人工乳で赤ちゃんを育てることを言います。哺乳瓶を使うので、どのくらいミルクを飲んだか量がわかりやすく、体重の管理がしやすいことがメリットです。ただし、母乳よりもミルクはゆっくり消化されるため、1回の目安量が大幅に超えないことと、間隔をあけることが大切。欲しがるだけあげてしまうと、逆に体重が増え過ぎてしまうので注意が必要です。

赤ちゃんの体重が増えない場合

赤ちゃんの成長は一定ではないとわかっていても、体重が増えていかないと不安に感じる方もいるのではないでしょうか。新生児の体重が増えない場合、いくつかの原因が考えられます。以下では、赤ちゃんの体重が増えない原因と対処法について解説していきますので、悩んでいる方はぜひチェックしてみてください。

増えない場合に考えられる原因

母乳が足りていない(栄養不足)

哺乳量が足りないと、栄養が不足して赤ちゃんの成長を遅くしてしまいます。では、なぜ哺乳量が足りなくなるのでしょうか?

原因としては、新生児でおっぱいを吸うことに慣れていなく、一度にたくさん飲めないといったケースが考えられます。そのほかにも、母乳の出が悪く、必要な量を飲めていないという場合もあるでしょう。赤ちゃんは言葉で意思を伝えられませんから、以下のような態度や行動から、“飲み足りない”のサインに気付いてあげてください。

  • おっぱいから離れたがらない
  • 授乳する間隔が1時間程度
  • 授乳後でも機嫌が直らない
  • 排尿の回数が1日5回以下と少ない
  • 便が2~3日に1回程度と少ない

カロリー消費量が多い

元気な赤ちゃんはその分、消費するカロリーも多くなります。消費カロリーと摂取カロリーが同じくらいなら、体重は増えません。ただし、活動的で排泄物もしっかり毎日しているような赤ちゃんであれば、そこまで心配はいりません。より多くの母乳やミルクを飲むことで、自然に成長していきます。

体重が増えづらい病気をかかえている

例えば何らかの原因で強度の貧血になっている、心臓や腎臓の病気をかかえている、特定の染色体異常がある、などの場合、しっかりと授乳していても体重の増加が望めないことがあります。診断するために医療機関を受診する必要がありますが、健診の際に気づかれることが一般的です。

増えない場合の対処法

哺乳量のチェック

体重がなかなか増えないと感じたら、まずは哺乳量を正しく把握するよう努めましょう。まずは授乳前に赤ちゃんの体重を量ります。授乳後、再度体重を量れば、その差が哺乳量です。適切な哺乳量については、赤ちゃんの哺乳量・哺乳間隔の目安で解説します。

足りない場合はミルクで補う

哺乳量が足りないと分かったら、その原因を考えます。単に哺乳の回数が少ないだけなら、時間を決めて定期的に授乳を行いましょう。

一方、母乳量が足りないのなら、ミルクで補ってください。ただし、はじめから完全にミルクへは置き換えず、母乳+ミルクの混合で様子を見ましょう。母乳がしっかり出るようになったら、完全母乳に戻してみましょう。

哺乳瓶を咥える赤ちゃん

なお、補うミルクの量や完全母乳へ戻すタイミングなど、わからないことは産院や自治体の新生児訪問時に相談を。また、乳房マッサージや母乳育児相談を行っている助産院もありますので、頼ってみてもいいでしょう。

赤ちゃんの体重が増えすぎた場合

体重が思ったように増えていかない赤ちゃんがいる一方で、体重が増え過ぎる赤ちゃんもいます。体重が増える原因は、だいたいが母乳やミルクの飲み過ぎです。ただし、授乳回数を増やすことは避けたいので、あまりに頻繁に欲しがる場合は、おしゃぶりをくわえさせるなどの工夫をしてみましょう。

また、起きる時間が長くなり活動量が増えてくれば、消費エネルギーが自然と増えます。体重の増加も緩やかになっていくので、焦らずしばらくは様子を見ましょう。

発育曲線からあまりにも離れ過ぎてしまったら、かかりつけ医に一度相談することをおすすめします。勝手な判断で授乳回数やミルクの量を減らすのは、かえってよくありません。

赤ちゃんの哺乳量・哺乳間隔の目安

赤ちゃんが痩せすぎず、太りすぎず、すくすくと成長するためには、適切な哺乳量と哺乳間隔に気をつけてみましょう。

赤ちゃんが一日に必要とする哺乳量は、体重1kg当たり約150mlです。たとえば、現在の体重が8kgだとしたら、哺乳量は1,200mlになります。一度にこの量を飲んでもらうのは難しいため、何回かに分けて哺乳を行います。1回当たりの哺乳量は赤ちゃんの体重1kgあたり約20mlが目安です。体重が8kgであれば、160mlとなるため、1日8回程度の哺乳を行う計算になります。

なお、適切な哺乳間隔は、基本的に赤ちゃんが欲しがっているときです。ただし、飲む回数が少なく、体重がなかなか増えないという場合は、哺乳時間を決めて定期的に飲んでもらうのもおすすめです。

哺乳量が足りているかは、赤ちゃんの様子を観察するのが目安となります。以下を参考にしてください。

  • 元気に行動していて、手足がよく動く
  • お肌に張りがある
  • 交換時、おむつがおしっこやうんちでしっかり濡れている

また、すでにご紹介した発育曲線と照らし合わせて、きちんと体重が増えているかなども確認してみましょう。不安なときは、かかりつけ医に相談してみてください。

まとめ

ここまで赤ちゃんの体重の増え方や量り方、増え過ぎたときの原因と対処法などについてご紹介してきました。赤ちゃんの体重が思うように増えていかないと、心配になってしまいますよね。でも、神経質になりすぎないのが一番。赤ちゃんが元気にしていれば、気にしすぎることはありません。

心配ごとがあれば、産院やかかりつけの小児科、子育て相談窓口等に頼るのがおすすめ。一人で抱え込まず、悩みを解決していきましょう。

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